goo blog サービス終了のお知らせ 

ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【書評など】「2016年の論点:文藝春秋オピニオン」/難波先生より

2016-01-04 15:03:00 | 難波紘二先生
【書評など】
1) エフロブ「買いたい新書」の書評No.302に「2016年の論点:文藝春秋オピニオン」を取り上げました。
 かつて「日本の論点」(1992創刊〜2012終刊)という文藝春秋のMOOK年鑑があった。これは普通の年鑑ではなく,日本社会が直面する大問題を分野別に列挙し,それに関する基礎データを示して著名な識者に賛否両論を書かせるという編集方針だった。「現代用語の基礎知識」(自由国民社)と異なり,総索引がなく辞書的な使い方はできなかったが,同じデータでこうも異なる意見になるものかと面白く,一般知識人だけでなく,大学入試や入社試験の小論文の参考書として,受験者や試験担当者にも利用されたようだ。
 2012/11から「2013年の論点:文藝春秋オピニオン」と改題して編集方針も変わった。「日本の論点◯◯年」にあった図表を駆使した基礎データ部分がなくなり,約800頁(2012年版,3000円)ものが約300頁(2016年版,1400円)と厚さも値段も縮小した。旧「論点」では真っ向から対立する意見が併記してあり,可否は読者の判断に委ねられていた。
 本書では,このスタイルがほぼ姿を消し「オピニオンリーダー」と見なされている人が一問題について,単独で解説と意見を担当している。わずかに「アベノミクスの功罪」で竹中平蔵が「功」論を野口悠紀雄が「罪」論を,株価予測について安部修平(投資家)は日経平均が4万円まで上がると述べ,経済作家の橘玲(たちばな・あきら)が「円安と超低金利」のため見かけで上がっただけで,基軸通貨のドルに換算すれば上がっていないと反論している。「英語公用化論」では船橋洋一(元「朝日」主筆)の推進論に対して,永井忠孝(青学大準教授)が教育資源のむだ遣いと反対論を述べている程度だ。「軟らかい全体主義」が拡がりつつある気がする。以下はこちらに、
http://www.frob.co.jp/kaitaishinsho/book_review.php?id=1450226982
2) 献本など=
★ 「医薬経済」1/1号のご恵送を受けた。お礼申し上げます。
「眺望・医薬街道」が「全国がん登録の意義」を論じている。米国ではニクソン大統領が60年代の末に「がんとの戦争」を宣言して、間もなく全国がん登録が始まり、「がん国勢調査」が行われ、このデータがあったからタイヤ工場でPCVによる肝血管肉腫発がんがすぐに解決したことは前に述べた。
 日本ではこの1月から「全国がん登録」がやっとスタートする。2019年に、やっと2016年の全国がん罹患数が都道府県別に公表されるそうだ。日本のこれまでのがん予防、がん治療はいわば「海図のない航海」を行ってきたようなものだ。
 この基本地図がないのだから、「がん検診」に効果があるのかどうか、「がんもどき」と本物のがんがちがうのかどうか、重要な問題にはまったく結論がでない。
 それだけ重要な新制度がスタートするのに、他のメディアはまったく報じない。どうなっているのかと思う。

 元朝日記者辰濃哲郎が「リベラル言論衰退の深層を探る(下)」で1992/1/11付け「朝日」1面大スクープ(宮沢首相の訪韓直前)「慰安所、軍関与示す資料」という記事を書いたのは自分だと認めている。
 このこと自体はすでに秦郁彦らの研究により、中央大吉見義明が防衛庁防衛研究所図書館で発見し、前年12月に辰濃に渡したものだ。(文書の写真は、吉見「従軍慰安婦」,岩波新書,1995/4, P.13に載っている。)
 その吉見は、もと「朝日」の長谷川熙が「崩壊・朝日新聞」(ワック出版,2015/12)執筆のために取材を申し込んだら、「その取材を受けても、私のメリットにならない」と拒否したそうだ。(「WILL」2月号, P.53長谷川談話)とんでもない野郎だ。
 辰濃は「記事自体は正しいが、別の記者が書いた<メモ>に問題があった」と書いている。それならその記者の名前を書け、さもないと植村隆と同様の遁辞としか思えない。
 「朝日」誤報道を検証した本を5冊くらい読んだが、これは単に朝日に留まらず、すべてのメディアに内在するシステム上の問題だと思う。
 上記書で長谷川熙が「人文・社会科学は往々にして、言葉のあやを巡る言い合い、つまり神学論争に陥る危険がある。ここが自然科学以外は科学ではないといわれる由縁の一つだ」と書いている。それは違う。事実をまず確定することから始めれば、挺身隊と慰安婦の混同や慰安婦の大半が朝鮮人性奴隷だったいう誤解は避けられた。部分データから「全体を憶測する」から大誤報が起こった。
 同じことは、軍人と市民が同じところにいた「広島」でも「南京」でもいえる。軍人+市民を一緒くたにすれば「被爆犠牲者」は多くなる。「南京」でも、一般市民と投降を拒否して市民にまぎれこんだ支那兵を合わせれば、非虐殺者の数は多くなる。
 自然科学ではどちらにも同じ計算法を用いる。いわゆる「人文社会科学」は出したい結論にあわせて計算法を変える。(これについては4.【何が必要か?】であらためてふれる。)
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 1-4-2016鹿鳴荘便り/難波先... | トップ | 【キング・コング】難波先生より »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

難波紘二先生」カテゴリの最新記事