ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【移植ネットワーク】難波先生より

2015-07-20 12:30:05 | 修復腎移植
【移植ネットワーク】
 GOOGLE Newsで7/14「毎日」が「患者選定ミス」で移植ネットワークの常勤理事3名が辞表を提出したという報道を見かけたが、「関西版」では紙面報道されなかった。
 あらためてネットでその記事を探した。

 7/15ハフィントンポストで実父河野洋平に肝臓の一部を提供した河野太郎議員が、内幕を告発しているのを見つけた。以下は7/12のブログ記事の転載だ。
<…この二年間に、あっせんの間違いが三回起きている。
臓器移植の信頼にもかかわる重要な事件なので、厚労省が立ち入りを行ったりして、再発防止のための処置を取らせることになった。
ネットワークは、東京大学医学教育国際研究センターの北村聖教授を座長とする第三者委員会を立ち上げた。限られた時間の中でこの第三者委員会はかなりきちんと問題を追究し、報告書を6月9日に出した。
(この報告書では、)
 コンピュータがロジックに基づいて解を出すべきところに、不必要に人間が判断する部分が残されていて、それがミスにつながった。
 ネットワークの組織内で、地域ごとに違ったやり方が残されており、統一した手順が定められていない。
 現場とトップの間の意思疎通が上手くできていない。等々の問題点が指摘されている。

 ところが、ネットワークの執行部は、この報告書を公表していない。
厚労省によれば「同法人において現在まとめている改革方針のとりまとめ公表の際においてあわせて公表」しようとしているそうだ。ネットワークの理事ですら、理事会でこの第三者委員会のオブザーバーであった監事から説明を受けたあと、報告書そのものは回収され、手元にない状態だ。
社団法人を構成する会員には、まったく報告書の内容が知らされていない。
ちなみに、第三者委員会の指摘には、オープンな組織であることと透明性を確保することが゙含まれている。

 厚労省の説明では、ミスの責任を取ってネットワークの執行部は退任したのだが、後任は既にやめたはずの理事長に一任されたという。そんな人事の決め方は、ネットワークの組織のルールから逸脱している。
 そもそも理事会が機能していないということは、第三者委員会の報告書にも明記されており、厚労省もはっきりと理事会が機能してこなかったと明言している。

(河野氏が部長の)行革本部では、まず、第三者委員会の報告書を世の中に公表し、第三者委員会から公益社団法人日本臓器移植ネットワークの正会員に対して報告書 の内容を説明し、正会員によって理事を選ぶための手続きがきちんと進められるように求めた。
 ガバナンスがおかしな組織は必ず間違いを起こす。
 日本臓器移植ネットワークへの信頼性は、日本の臓器移植への信頼性でもある。(以下略)

追伸:昨日の指摘を受けて、ネットワークは報告書をホームページ上に掲載した。しかし、それについてメディアに対して、ネットワークからも厚労省からも何のアナウンスも行われていない。(2015年07月12日「河野太郎公式ブログ ごまめの歯ぎしり」より転載) >

 移植ネットワークのHPに報告書を読みに行くと、6月9日付の「あっせん誤りの再発防止等に関する第三者委員会・報告書」が7月9日付で公表されていた。全19頁もあるが、3件の「あっせんミス」のうち、2件では臓器提供施設名が黒塗りになっている。
 「報告書」を読んだ印象では、
 1.レシピエント選定に3回のミスがあった。
 ①2012/8=兵庫県内で発生した脳死者からの臓器提供で、「移植ネットワーク」職員が組織適合性の検査結果の判読を誤り、優先順位の高い希望者に移植が行われなかった。

 ②2014/11/15=に発生した脳死下臓器提供で、「膵腎同時移植」と「腎移植のみ」の両方に登録していた患者に、移植希望の意思確認がなされなかった。これは臓器提供が当初の「膵臓提供」が腎臓のみに変わったのに、「腎移植のみ」での意思確認がなされなかったためという。

 ③2015/3/2=に発生した脳死下での臓器提供で、ネットワーク担当者によるコンピュータ操作ミスで、腎移植優先順位が誤って出力され、ミスに気づかないままより下位の順位にある患者に腎移植が行われた。
 理由は優先順位をプリントアウトする際に、HLA情報を反映しなかったためという。

 「報告書」は上記①と③は基本的には同じミスであり、特に③では<出力された間違った優先順位のリストを見ると、HLAがドナーと全く適合していない移植希望者が上位になっており、またドナーのHLA情報が記載されているはずの部分がブランクになっているなど、明らかに通常とは異なる部分があった。>と述べ、<それを見なかったのであればプロ意識の欠如であり、見た上で気づかなかったのであれば知識の欠如といえる。>と断定している。

 その上で、「5. 再発防止に向けた提言」では、
① 新たなコンピュータシステムの構築と既存システムの不備の掘り起こし
 <JOT(臓器移植ネットワーク)のコンピュータシステムは、既に20年以上前に作られた旧いものを抜本的に改修できていないまま使用を継続している状況である。>と指摘しているのに驚いた。
② 最終確認・途中確認を目視で行う手順の導入(「業務基準書」の整備)等
ではあらゆる場合を想定した「業務マニュアル」がないことが指摘され、改善を求められている。
③ 管理運営対策面での対策
では、「人員体制が100名に満たないような法人規模の団体において、常勤理事が3名も必要なのか?」と問題を提起し、「臓器移植に関する専門的な知識があり、かつ一定規模の組織運営の経験があるなど、組織マネジメントについて十分な知見があるものが常勤理事となり、日々の法人運営に当たる形とすべき。その他の第三者的な視点は、非常勤理事の立場で理事会に反映させればよい」
「そもそも理事会にほとんど出席していない理事もおり、理事会が有効に機能していたとは言いがたい。理事会の構成についても検討して、真に機能するものに変えていくべき」としている。

 一読して内容的にはきわめて妥当な報告書だと思った。
 それで、今回辞表を提出した3人の常勤理事は、以下の通り。
 野本亀久雄(理事長)=九州大名誉教授
 大久保通方(副理事長)=元日本移植者協議会理事長
 篠崎尚史(専務理事)=前東京医科歯科大・市川総合病院角膜センター・アイバンク長)
 このうち篠崎という人を私は知らない。残りの2人はおなじみだ。

 1997/10に「日本臓器移植ネットワーク」が創設された時の役員はこうなっていた。
<会長=小紫芳夫
 理事長=筧 榮一(中央合同事務所、弁護士)
 副理事長(2名)=井形昭弘(愛知県健康づくり振興事業団副理事長)、
 野本亀久雄(九大生体防御研究所教授、元移植学会理事長)
 専務理事=林 浩(ネットワーク職員)>

 2010年4月の役員構成はこうだ。
<理事長=筧 榮一(中央合同事務所、弁護士)、
 副理事長=野本亀久雄(ネットワーク職員、元日本移植学会理事長)、
 専務理事=尾崎鉄夫(ネットワーク職員)、
 常任理事=大久保道方(日本移植者協議会理事長)、大島伸一(国立長寿医療センター総長)、他6名。>
 
 野本亀久雄は1995年「US腎事件」で太田和夫が失脚した後、日本移植学会の理事長になり、97年の「移植ネットワーク」創設以来、同副理事長として、2000年の九大定年退官以後も副理事長をつとめ。筧理事長の退任後に理事長になった。20年間もネットワークの中枢にあった。

 「移植ネットワーク」には2001年にこういう事件があった。厚労省からの補助金と小紫芳夫が会長を務める「日本馬主協会」からネットワークへの寄付金が不正に使われているという疑惑である。
 <6月12日から、「共同通信」が「臓器ネットワーク疑惑」についての連載記事を配信し始めました。
 ここまで来ると厚労省も放置しておけません。同年6月27日、同省臓器移植対策室はネットワークの資金運用に不正がある容疑で立ち入り検査しました。この結果および調査結果に基づき厚労省は改善勧告書を出しています。
 ネットワークからどの団体にどれだけの助成金が何時支払われたかが、一覧表として載っています。さらにその多くが、「ネットワーク」役員と関係のある学会等であることが明記されています。助成額の5%をネットワークが手数料として徴収していたことも述べてあります。
 厚労省の改善勧告書は3度にわたり矢継ぎ早に出されています。>(拙著原稿より)
 この時の騒動は、小紫芳夫が会長を退くことで一応の決着がついたと記憶する。

 大久保通方は大阪の写真家で腎移植者である。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E4%B9%85%E4%BF%9D%E9%80%9A%E6%96%B9
 彼は腎移植者の代表の形で、学会にすり寄り、2006年11月の病腎移植事件では「病腎移植は悪い医療だ」とメディアに発言し、相川厚の「厚労省調査班」の委員にも、阪大の高原史とともに加わっている。(もっとも多くの移植者の抗議を受けて、2007年4月に開かれた厚労省「臓器移植委員会」では「臨床研究としての道を残すように」要請している。)
 このように「修復腎移植」の妨害者が事ある毎に、表舞台から消えて行くのは結構なことだ。

 2010年の「改正移植法」施行から5年になるということで、各紙が脳死移植の現状を報じているが、日本の臓器不足はいっこうに改善されていない。移植学会にもネットワークにもいろいろ問題があると思われるので、別の機会に論じたい。

<付記>旧い手元原稿を読んでいたら、こんな記述があった。自分の文章なのにすっかり忘れていた。
<ドイツでは「臓器移植法」が1975年の成立以来、87年、97年、07年8月と3回にわたり改正されています。06年の日本の「病腎移植」騒動の影響を受けて、07年法ではその第8条bにおいて「治療目的で患者から摘出された臓器」について、その患者に同意能力があり、移植に使用することについてインフォームド・コンセントを得ていれば、移植してよいという条項を新設しました(33)。つまり日本から教訓を得て、さっさと「修復腎移植」を法的に承認したのです。日本移植学会が禁止したまさにその行為をドイツは法条文で(省令などという姑息な方法によってではなく)、承認したのです。
 33. 齋藤純子訳: 「臓器及び組織の提供、摘出採取及び移植に関する法律(移植法)」、外国の法律、235: 115-134, 2008>

 あの時点で修復腎移植がまともに評価されていて、禁止の「局長通達」が出されていなければ、約1万人の透析患者が救われたのに…と思う。
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2 コメント

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Unknown (Unknown)
2015-07-21 02:50:26
臓器売買の報道がありました。病腎移植を推進するにしても、売買を防止する体制の確立が必要ですね。

かつての宇和島の事件も、真相が私たち一般民には曖昧なままです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/宇和島臓器売買事件
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臓器移植全般の問題と (武田)
2015-07-21 19:04:16
将来的に、移植に使う臓器を得るために金銭的な対価を支払うことを良しとするかどうかもちろん議論が必要です。
また、現在禁止されているところのいわゆる臓器売買を防止するための手続や手順の拡充・徹底も必要です。
しかし、修復腎移植では、売買を経ずしてドナー不足を一部であっても解決する可能性は多大でしょう。
そして、宇和島臓器売買事件の真相を一般市民に知らせる務めは誰が負うべきかという点は充分に考えていかなければならないと思います。少なくとも、事件の関係者の如く(売買に関与したり、その移植によって金銭的利益を得ていたとして)報じられ、名誉を傷つけられ、報道被害者というべき立場に陥れられた者が負うべきこととは思いません。
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