【日韓の紛争】
「一つの嘘をつく者は、自分がどんな重荷を背負い込むのかめったに気がつかない。つまり、一つの嘘をとおすために別の嘘を二十発明せねばならない。」
スウィフト 「断片」(http://www.oyobi.com/maxim01/08_11.html)
「人は一つの嘘を本当にするためには、さらに30の嘘をつかなければならない」というのはナポレオン・ボナパルトの言葉だと記憶していたが、昨年12月20日の韓国駆逐艦の自衛隊哨戒機へのレーダー照射事件発生以来、『ナポレオン言行録』など、手持ちの参考書をいろいろ調べたが、彼の言葉が見つからなかった。一番信頼のおける「オックスフォード・引用句辞典」にも載っていない。
ネットで調べると、ジョナサン・スウィフトによく似た上記のアフォリズムがあることがわかった。
<日本の哨戒機が韓国海軍のレーダー電波を探知した後にも「広開土大王」の周囲を低空飛行し、回避もしなかったという点で、「広開土大王」が哨戒機に火器管制(射撃統制)レーダーを照射したという日本側の主張には説得力がないという立場も国防部は表した。>(中央日報日本語版)
https://japanese.joins.com/article/783/248783.html?servcode=A00§code=A10&cloc=jp|main|top_news
やっと1/4になって韓国国防部がこの事件に関する韓国側の「証拠資料」映像を公開したが、原文がハングルなので、和訳が下手なのか中央日報の記事は意味があいまいだ。
日本の防衛省公開の映像を見れば、日本のP-1哨戒機は韓国駆逐艦「広開土王」の右舷斜め上からまず偵察を開始し、艦尾のヘリポート格納庫にヘリがいないことを確認した際に、強力なレーダーのロックオンを受けている。機内に大音響の警告音が鳴り響き、通信員が「強烈な音です。この音憶えておいて下さい」と機長に伝える音声が録音されている。
この後、機長は「離隔する」(偵察中の艦船から離れる)と指示し、哨戒機は駆逐艦から離れ、高度も上昇させた。トム・クルーズ主演の米映画「トップガン」(1986)に戦闘機の模擬空中戦が何度も出て来るが、自機の後に回り込まれミサイル発射用のレーダーにロックオンされたら、勝負は終りである。後は発射ボタンを押せば、熱線追尾ミサイルが飛び出し、自機を確実に撃墜するからだ。
哨戒機を一旦「離隔」させた機長は、インシデンス(事変)を司令部に報告させるとともに、三つの緊急周波数を用いて、韓国駆逐艦に「照準用レーダー照射の目的は何か?」とコンタクトしている。これに対してまったく応答がなかったので、日本の哨戒機は現場海域から離脱している。
さて「中央日報」が伝える韓国の主張は「日本の哨戒機が韓国海軍のレーダー電波を探知した後にも『広開土大王』の周囲を低空飛行し、回避もしなかった」とし、これを論拠として「哨戒機に火器管制(射撃統制)レーダーを照射したという日本側の主張には説得力がない」、としている。
韓国海軍は「火器管制レーダーは放射しなかった」と12/20以来主張しているのだから、この命題は仮定法過去の主張で、言い換えると、「もし日本哨戒機が韓国の火器管制レーダー電波を探知しなかったのであれば、そのまま哨戒飛行を続けたはずだ。」となる。日本の哨戒機がそのまま哨戒飛行を続けた場合にのみ、韓国の主張は論理的に正しいものとなる。
だが実際にはP1哨戒機は2度目のレーダー照射を受け、韓国海軍から緊急無線への応答がないことを確認すると、高度を上げ日本本土に向かう飛行に移っている。それは韓国駆逐艦の火器レーダー照射を「脅威」と受け取ったからだろう。
なお1/5「時事」は<P1が収集した韓国駆逐艦の火器管制レーダーの電磁波情報(周波数)は、横須賀基地(神奈川県)の情報業務群の電子情報支援隊で分析され、「動かぬ証拠」として、官邸にも報告された。>と報じている。日本側はやるべき作業はもう終えている。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190105-00000006-jij-soci
同記事によれば<韓国側が公表した動画(約4分)のうち、韓国側が撮影した部分は11秒で、残りは防衛省がホームページで公開したP1(日本哨戒機)が撮影した映像を引用したものだった。>という。それも韓国海洋警察が撮影した映像で、韓国軍撮影の映像はない。警察の映像はボートからのもので、揺れが激しいが、すぐ目の前に甲板にテントが掛けられるようになった木枠のある小型木造船が写っており、画面左上を豆粒のように小さい日本哨戒機が飛翔している。この小型船が北朝鮮の「漁船だ」という韓国の主張もおかしいし、「哨戒機が超低空飛行により威嚇した」というのもおかしい。
(1/18付記:この不審船と乗組員について韓国政府は「北朝鮮漁船で乗組員は北朝鮮に帰国させた」と発表していたが、1/18ZAKZAKは「日米情報筋」の話をこう報じている。
<「北朝鮮の通常漁船より、サイズが4倍ほど大きい。『漁船団の母船では』と報じられたが、専門家が形状などを分析したところ、これまで確認された『北朝鮮工作船』とよく似ていることが分かった」>
https://www.zakzak.co.jp/soc/news/190118/soc1901180008-n2.html
禁輸物資を瀬取りする工作船だったとすると、話の筋が通る。韓国の軍事白書から「北朝鮮は敵国」という条項を削除した大統領だから、問題の漁船を一般公開せず、乗組員を秘密裏に帰国させたのもよくわかるが、国連の「北朝鮮への経済制裁」が生きているから、国際社会を納得させるのは無理だろう。
問題の海域は日本のEEZ(排他的経済水域)にあり、いわば日本の「准領海」である。ここに事前通告もなく勝手に入りこみ、呼びかけ無線にも応じず、火砲用レーダー照射をしてくる韓国軍艦艇に、自衛隊員はさぞかし憤慨したことだろうと思う。しかし機長以下搭乗員が冷静着実に対応し、予期せぬ軍事衝突を回避したことを喜ばしく思う。
韓国軍が1/4に初めて公開した日本政府への反論映像は、約4分のうちたった10秒が、韓国海洋警察が撮影したもので、残りは日本哨戒機が撮影した公開映像を再編集しただけのものだった。2〜3キロしか離れていない日本哨戒機からの緊急通信が、韓国駆逐艦の通信室ではノイズが大きく、聴き取れないという音声画像を見て、「何と劣悪な通信装備なことか!」と驚いてしまった。韓国海軍は「日本側の英語が悪くて聴き取れなかった」と日本側の呼びかけに答えなかった理由を説明しているが、これも嘘だと思う。
ともあれ、12/20に最初の嘘をついた韓国は、嘘の上塗りにもう10以上の嘘をついている。だがこれを「本当」に仕上げるにはもう20の嘘を、論理的に矛盾なくつかねばならないだろう。それは不可能だと私は思う。さっさと日本に謝るのが正解だろう。
(1/15追記:NHKによると、1/14にシンガポールで開かれた日韓実務者協議で日本側が浴びせられたレーダーの周波数記録を提示することを提案したところ、韓国が受け入れを拒否したという。日本側が照射された時間帯のデータを出すというのに、「照射していない」と主張しながらデータを公表できないのだから、また嘘をついている。この問題では韓国は絶対に謝罪せず、国際司法裁判所への提訴にも応じないことがまず確定した。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190115/k10011777931000.html?utm_int=word_contents_list-items_001&word_result=%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%80%E3%83%BC%E7%85%A7%E5%B0%84
この事件を伝える日本メディアでは、先に『北朝鮮核危機!・全内幕』(朝日選書2018/1:この本については「買いたい新書」で紹介した。)
http://frob.co.jp/kaitaishinsho/book_review.php?id=1528414094
の著者「朝日」ソウル支局長牧野愛博の記事に期待と信頼をおいていたが、辛うじて本人の原文が読めるのは「デジタル朝日」のみ。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190110-00000031-asahi-int
配達される紙版では東京本社の無名記者との共著記事になっているのには失望した。「朝日」は慰安婦問題と福島原発の吉田調書での誤報を取り消し、社長も辞任したので、少しは良くなるかと期待したが裏切られたようだ。
今年1/10、韓国文在寅大統領が初の記者会見を行った。私は韓国の嘘はもうばれているし、韓国の主張の論理矛盾も指摘しておいたので、何の期待もなかった。それに文在寅(1953〜)の両親は北朝鮮の出身で、朝鮮戦争最中の1950年12月、北朝鮮咸鏡南道・咸興市の興南市から避難民救出の米国貨物船に乗り脱北した。1953年に南鮮の巨済島に両親が定住した。姉が1人、妹が2人、弟が1人いる。両親(父・1920年生まれ、母・1928年生まれ[11])と姉は避難民[12]。祖父母は北に残したままだった。父は巨済島捕虜収容所で労働者として働き、母は鶏卵売りの行商をしたそうだ(WIKI「文在寅」による)。
上記牧野記者の記事によると、<日本企業が元徴用工らに損害賠償するよう命じた韓国大法院(最高裁)判決について「三権分立で政府は介入できない。日本は判決に不満を表明できるが、仕方がないという認識を持つべきだ」と指摘>したという。
「三権分立」などとよく言えたものだ。前の韓国最高裁長官を「徴用工裁判を遅らせた」として、検察が取り調べているではないか。これは韓国司法史上はじめてのことだ。
https://www.sankei.com/world/news/190111/wor1901110013-n1.html
今の最高裁長官は、去年8月に文在寅大統領に指名された、前春川地裁院長の金命洙(キム・ミョンス)だ。韓国メディアによると、「最高裁判事の経験もない大抜擢人事」だったという。ただの地方裁判所長を最高裁裁判長に任命したのは文在寅だ。コネと上下関係が重要な韓国で、これでは「徴用工」訴訟について大統領の意向に反する判決を最高裁が出せるはずがない。
それなのに文在寅大統領は年頭の記者会見で、NHKソウル支局長の質問に対して、いけシャーシャーとこう述べている。
<文大統領は「まず、基本的な話からすれば過去に韓国と日本の間に不幸な歴史があった。35年ほど続いた歴史だ」とし「その歴史のために韓日基本協定を締結したが、まだ少しずつ問題が続いている」と話した。>
続いて文大統領は「これは韓国政府が作り出した問題ではない。過去の不幸だった歴史のために生じた問題」とし「これを政治争点化して問題を拡散するのは賢明な態度ではない」と説明した。
さらに「韓国最高裁の判決に対し、世界のすべての先進国と同じように政府は司法府の判決に関与することはできない。日本も同じだ」と述べた。この後「日本が不満を表示するかもしれないが、韓国の司法府を尊重しなければいけない。不満があってもその部分はやむを得ないという認識を持たなければいけない」とし「韓日両国がこれを政治的な攻防の素材として未来志向的な関係まで毀損するのは望ましくない」と答えた。(「中央日報」)
(1/12付記:韓国の新聞はこの問題に及び腰だが、1/11付「中央日報」は社外論説委員のコラムで【再び「ロウソク集会広場」への非常口=韓国】と題して文在寅政権が内政外交の失敗により、「(政権が)土砂のように崩れる形勢があっという間に台頭し」、「再びロウソク集会広場への非常口が開かれる」だろうと、きわめて辛辣な時評を載せている。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190111-00000039-cnippou-kr
遅まきながら韓国メディアにも外交事態の深刻さが分かり始めたようだ。)
戦前の民法学者(東大教授)末弘厳太郎『嘘の効用』(冨山房百科文庫)は「大岡裁き」が名裁判とされる理由を説明しているが、あれは「法的事実」の証拠認定が裁判長に任せられているから可能になる。恣意的な事実認定をすれば法治主義でなく、今の韓国のように「情治主義」に転落する。
1/12の「朝鮮日報」社説【韓国司法史に汚点を残す前最高裁長官への取り調べ】は韓国における「三権分立」の現状を以下のように論じている。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190112-00080003-chosun-kr
「梁承泰(ヤン・スンテ)前大法院長(最高裁長官)が司法行政権乱用の容疑で被疑者として検察の取り調べを受けた。大法院長経験者が検察の取り調べを受けるのはこれが憲政史上はじめてのことで、韓国司法の歴史に大きな汚点として残るだろう。」、
「今度は文在寅(ムン・ジェイン)大統領自ら動き出し、検察に対して事実上の捜査指示を行った。現大法院長も自分がとりまとめた調査結果を覆し、大統領の指示に従った。その影響で前職と現職の判事100人以上が検察に出頭させられ取り調べを受けた。梁氏が大法院長だった当時、裁判取引きが疑われるような文書を作成したのは不適切だったが、確定判決が先に出たことで裁判への介入は最初から成り立たなくなった。」
要するに文在寅は国内では「司法を壟断」しておきながら、対外的には「裁判所の判断だから三権分立を重んじなければ」と主張しているにすぎない。
日本には1891年、ロシア皇太子の暗殺未遂事件(大津事件)で、政府からの圧力に抗して、犯人に対して皇室のみに適用される大逆罪(死刑)の適用を否定し、無期徒刑の判決を下した児島惟謙(1837〜1907:宇和島出身)という「罪刑法定主義と司法の独立」を貫いた裁判官がいる。
「大岡裁き」の名奉行大岡忠相なら、今の日韓紛争をどう裁くだろうか。法治主義の立場を採る限り、1965年の日韓基本条約と同請求権協定は さすがに無視できまい。日韓基本条約の第二条は以下のとおりだ。(【WIKI:日韓基本条約】)
なお以下に、基本条約と請求権協定の日本語・英語の正文が載っている。
http://www7a.biglobe.ne.jp/~mhvpip/0817NikkanKihonJooyaku.html
日韓基本条約:
<第二条:千九百十年八月二十二日以前に大日本帝国と大韓帝国との間で締結されたすべての条約及び協定は、もはや無効であることが確認される。>
これは1910年に締結された「日韓併合条約」等の条約・協約をもはや無効と認めたものだ。この条約の正文は日本語・韓国語・英語の3正文があり、「解釈に相違がある場合は、英語の本文による」と末尾に記されている。
日韓請求権協定:第二条にはこうある。(WIKI:日韓請求権協定)
<第二条
1 両締約国は、両締約国及びその国民(法人を含む。)の財産、権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が、千九百五十一年九月八日にサンフランシスコ市で署名された日本国との平和条約第四条(a)に規定されたものを含めて、完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する。
2 この条の規定は、次のもの(この協定の署名の日までにそれぞれの締約国が執った特別の措置の対象となったものを除く。)に影響を及ぼすものではない。
(a) 一方の締約国の国民で千九百四十七年八月十五日からこの協定の署名の日までの間に他方の締約国に居住したことがあるものの財産、権利及び利益
(b) 一方の締約国及びその国民の財産、権利及び利益であって千九百四十五年八月十五日以後における通常の接触の過程において取得され又は他方の締約国の管轄の下にはいったもの。
3 2.の規定に従うことを条件として、一方の締約国及びその国民の財産、権利及び利益であってこの協定の署名の日(注:1965/6/22を指す)に他方の締約国の管轄の下にあるものに対する措置並びに一方の締約国及びその国民の他方の締約国及びその国民に対するすべての請求権であって同日以前に生じた事由に基づくものに関しては、いかなる主張もすることができないものとする。>
私見では、この協約の第二条第2項の( )内の例外規定(「この協定の署名の日までにそれぞれの締約国が執った特別の措置の対象となったものを除く」)は 期日の起算日を明記しておらず、ここに不備があるようだ。
「特別措置」が私には不明だが、第1項で「1951年9月8日、サンフランシスコで日本と韓国が締結した平和条約」を強調しているから、起点はこの日とするのが妥当な解釈だろう。
第二条第3項で「2.の規定に従うことを条件として」、「協約署名日以前に生じた事由を基に、(今後は)いかなる請求権の主張もできない」という条文構造になっている。素直に条約と協約の条文を読めば、「日韓の過去はこれで清算しよう」という法の精神は明白だが、何しろ50年以上前に締結された条約だから、生き証人がいなくなっており、韓国の裁判官は条文の「字面解釈」をやり、手前勝手な理屈をこねる余地がある。
吉田清治の「慰安婦強制連行」「労働者強制徴用」、植村隆の「従軍慰安婦」などの虚説が日本からまき散らされた後だから、韓国最高裁の判事(裁判長)が政権におもねって、「協約」第二条第2項(「この協定の署名の日までにそれぞれの締約国が執った特別の措置の対象となったものを除く」)年月の起始点を1945/8/15以前に遡らせることはありえると思う。
協定の解釈をめぐる日韓の紛争について、同協定はこう規定している。
<第三条
1 この協定の解釈及び実施に関する両締約国の紛争は、まず、外交上の経路を通じて解決するものとする。
2 1.の規定により解決することができなかつた紛争は、いずれか一方の締約国の政府が他方の締約国の政府から紛争の仲裁を要請する公文を受領した日から三十日の期間内に各締約国政府が任命する各一人の仲裁委員と、こうして選定された二人の仲裁委員が当該期間の後の三十日の期間内に合意する第三の仲裁委員又は当該期間内にその二人の仲裁委員が合意する第三国の政府が指名する第三の仲裁委員との三人の仲裁委員からなる仲裁委員会に決定のため付託するものとする。ただし、第三の仲裁委員は、両締約国のうちいずれかの国民であってはならない。
3 いずれか一方の締約国の政府が当該期間内に仲裁委員を任命しなかつたとき、又は第三の仲裁委員若しくは第三国について当該期間内に合意されなかつたときは、仲裁委員会は、両締約国政府のそれぞれが三十日の期間内に選定する国の政府が指名する各一人の仲裁委員とそれらの政府が協議により決定する第三国の政府が指名する第三の仲裁委員をもつて構成されるものとする。
4 両締約国政府は、この条の規定に基づく仲裁委員会の決定に服するものとする。>
この「仲裁方法」の難点は韓国が仲裁委員を出さず、「第三国仲裁委員」の指命にも応じなかった場合が想定されていないことだ。竹島問題を国際司法裁判所に提訴することすら、韓国は応じていないのだから、仲裁委員会にも反対するだろう。どうも韓国大統領は「無理が通れば 道理が引っ込む」と考えているようだ。
1/11「産経」は<11日午前の管官房長官の記者会見で、<徴用工訴訟をめぐり、日本政府は9日、1965(昭和40)年の日韓請求権協定に基づく初の政府間協議を韓国に要請しており、菅氏は「韓国側が誠意を持って応じるものと考えている」と牽制した。>と報じている。以下はこの申し入れに対する韓国の反応だ。
1/14の「中央日報」は<日本、強制徴用協議を要請して「30日以内に答えよ」要求…「外交欠礼」の指摘も>という見出しの記事を載せている。日本政府が徴用工問題に対する2件の韓国最高裁判決の実施に異議を唱え、「日韓請求権協定」第三条に基づいて1/9に「紛争の解決」を申し入れたところ、<韓日請求権協定第3条第1項には「協定の解釈および実施に関する両締約国間紛争はまず外交上のルートを通じて解決する」と記されているだけで回答の期間が明示されているわけではない。>というのが「外交的欠礼」に当たるというのだ。
これは先に指摘した「日韓請求権協定」第二条第3項について、現韓国政府の無理解があるところから生じている。さらに「協定の解釈をめぐる日韓の紛争」について規定した第三条(3項まである)の第1項「この協定の解釈及び実施に関する両締約国の紛争は、まず、外交上の経路を通じて解決するものとする。」のみを単独で「字面(じづら)解釈」している点にある。第1項を補う第2、第3項では両国の仲裁委員の選出を30日以内に、二人の仲裁委員の合議により第三国の仲裁委員を30日以内に選び、「仲裁委員会」に問題を付託するとなっている。第二条2項と3項がいずれも仲裁委員の選出を「30日以内」と定めているのだから、日本外務省が公文で申し入れた「外交的協議」への回答期限が「30日以内」であることは法の精神に照らして明白だ。
特に重要なのは第二条第4項で、<両締約国政府は、この条の規定に基づく仲裁委員会の決定に服するものとする。>となっており、第三国委員を加えた仲裁委員会ができたり、国際司法裁判所の判断を仰ぐことになったら、韓国が負ける公算が高い。
左派の文在寅政権になってから、外務省でも「日韓外交」に詳しい「親日派」が追放されているというから、「日韓請求権協定」の全文を読み、その精神を理解できる人材がいなくなっているのではないか。少なくとも「中央日報」の記者が読んでいないことは記事から明白だろう。
「文藝春秋」新年号で元駐日韓国大使の柳 興洙(ゆ・ふんす)と産経の黒田勝弘が対談を行っているが、文在寅の「慰安婦財団の解散」について、こう発言している(要旨)。
黒田:日本が韓国に渡した「10億円の資金」については当事者の慰安婦の70%以上はすでに支援金の支給を受け、(慰安婦)合意を了解しています。
柳:そうです。韓国人としては言いにくいが、(慰安婦)支援の市民団体と一緒に行動して日本を延々と非難しているハルモニ(元慰安婦と称するおばあさん)は今や少数派だ。大多数は(日韓・慰安婦)合意にOKしていた。
黒田:現在、存命のハルモニは27人。市民団体の運動に加わっている人は10名足らずと思いますが、市民団体や政府が、少数の意見を元慰安婦の総意であるかのように主張しているという構図は、韓国でも意外に知らされていません。
柳・元駐日大使はジャレド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄』(草思社文庫)から、韓国と日本の関係についての箇所を引用してみせるほどの知識人である。(もっとも引用している「韓国人と日本人は成長期を共にすごした双子の兄弟も同然だ」という一節は上記文庫本にも、索引が整った英語原本にもない。韓国語訳にはあるのかも知れないが。)
誇張した虚言とはいえ、韓国は「20万人*の朝鮮人従軍慰安婦」と主張してきたのが、たった27人になり、挺対協を支持しているのがわずか10人というのだから、文在寅にとって「もはや政治的利用価値がない」のが、突然の慰安婦合意破棄の本音であろう。
*吉見義明「従軍慰安婦」、岩波新書、1995が上げた最大推計値
韓国が一方的に「慰安婦財団の解散」を発表したのが、昨年11/21日。その時は<日本政府の拠出金について、現在残る5億8000万円を返還するのか、慰安婦問題に関する別の事業に使うのかなど、その扱いについて、日本政府と協議したい。>と女性家族相が表明した。https://www.nhk.or.jp/politics/articles/statement/11289.html
しかし日本との協議はいっこうに始まらず、残金をネコババした状態だ。
本屋に行くと雑誌の棚に総合月刊誌が並んでいるが、売れているのは「正論」「WiLL」「Hanada」などの対韓強硬論を満載した右派雑誌だけだ。「文藝春秋」は12月号と1月号が並んで平積みになっている。「新潮45」はLGBT問題で昨年休刊になった。岩波の「世界」や朝日の「AERA」など、最近はさっぱり見かけない。
今年になって発行された総合雑誌は「日韓問題」を大きく扱っている。1/4付「産経抄」が鈴置貴史(元日経・経済解説部長)『米韓同盟消滅』(新潮新書)から「中二病」という用語を取り上げ、今の韓国がそれだと論じていた。
https://special.sankei.com/f/sankeisyo/article/20190104/0001.html
「買って読もうかな…」と思ったが、雑誌「Will」2月号に同著者の「<ろうそく革命>で融けていく韓国」という、同書の要約と思われる長文の論文が載っていたので、買うのはよしてこれを味読した。
【WIKI:中二病】によると1999年、伊集院光がラジオ・パーソナリティ番組で初使用し、後に韓国にも輸入された言葉だという。中央日報は親米と親中の間を右顧左眄している韓国を「中二病を彷彿とさせる」と報じたそうだ。
鈴置論文によると、韓国が「恐中病」に陥ったのは2000年の「ニンニク事件」以降だという。自国産生ニンニクを保護するため、中国産ニンニクには30%の関税しかかけなかったところ、中国製「冷凍 or 漬け物」ニンニクが怒濤のように輸入された。そこで韓国政府が後者に315%の関税を課すようにしたところ、1ヶ月後、中国政府が報復措置として、「韓国製の携帯電話とポリエチレンの輸入禁止」を通告してきた。これに恐怖して、韓国は即座に中国産ニンニクの輸入関税率を30〜50%に引き下げた。(韓国経済新聞)
https://japanese.joins.com/article/j_article.php?aid=205579
鈴置氏は韓国の未来として以下の二つのコースを挙げている。
① 朝鮮半島全体の非核化・中立化を達成し、それを国連や周辺国が保証する。
② 北朝鮮が核を保持したまま、韓国が北朝鮮の核の傘に入る。
ところがアメリカは「もう世界の警察官の役割は果たせない」と主張し、「朝鮮半島防衛はコストパフォーマンスが悪い」とまで大統領が述べている。金正恩は国連による核施設・核ミサイル貯蔵庫の査察を認めていない。それどころか文在寅がもみ手で平壌を表敬訪問したのに、ソウルへの答礼訪問さえしていない。今の国連安保理では、中国とロシアが拒否権を持っているから、国連軍として半島有事に対応することはできない。
よって①は空論だと思われる。
②は韓国の文在寅が金日成の社会主義思想(主体思想)の影響を受けていることから考えて、可能性の高いシナリオだと考える。当初「一国二制度」を採用し、徐々に休戦ラインを越えての人的交流あるいは経済活動を盛んにして、ドイツのように究極的には統一国家を目指す。
それ自体はよいが、東ドイツが自壊して統合が達成されたドイツの場合と異なり、朝鮮半島でこれを目指すには、中国共産党や北朝鮮労働党のような強力な秘密政党が必要になるだろう。
その場合、結果としてユーラシア大陸の東端に「ロシア・中国・朝鮮」という左派全体主義国家が実現する。新朝鮮国は明治初期のように、北はロシアと中国、南は対馬を挟んで日本と国境を接することになる。もしこうなれば朝鮮が中国の衛星国となることは、地政学的に十分予測される。
第③のシナリオは韓国国民がもっと冷静になって、米・日との信頼関係と同盟をきちんと維持することだ。その方策は韓国が考えることだが、今の「親北左派」政権では無理だろう。
というわけで、鈴置貴史『米韓同盟消滅』の内容エッセンスは この「Will」論文に書かれていたので、また蔵書を増やす必要がなくなった。
「ラッキョウ事件」で中国が韓国に対して採った措置は上記の通りだが、「慰安婦・徴用工・レーザー照射」事件に対する日本側の対抗措置(考慮中)について、1/2「産経」が【政府・与党が検討している対抗措置】を具体的に報じていた。次の5項目が挙がっている。
Ⅰ.長嶺駐韓大使の召還(筆者注:国交断絶の始まり)
Ⅱ.韓国人への短期滞在ビザ免除の取り消し
Ⅲ.韓国人への就労ビザの発給制限
Ⅳ.特定物資の対韓輸出制限
Ⅴ.韓国製品に対する関税引き上げ
面白いことに、これらの方策は「Will」2月号の掲載論文にほとんど書いてある。今年になっての日本政府の韓国への対応を見ると、こうした「世論」にかなり突き上げられているように思われる。
Ⅰ〜Ⅴに対応して、★〜★5の意見が述べられている。
★ 「だから韓国はつけ上がる」(阿比留瑠比):総論で対韓強硬論。就労ビザの厳格化、在日韓国人の特別永住権の撤去、韓流文化の禁止にも触れている。
★ ★「在日風俗嬢は強制送還」(室谷克実):新宿歌舞伎町などを中心に、日本には韓国人風俗嬢が約5万人いると、「韓国女性家族省」の情報をもとに、彼女らを摘発して強制出国させるべきと主張している。
「竹島侵入者は入国禁止!」(但馬オサム):韓国済州島出身で、拓殖大学教授をしている呉善花は韓国の旅券を所持していたのに、「反韓的言辞を弄した」として親族の葬式に出席するための、韓国入国が認められなかった。2度こういう経験をしたあと、今は日本に帰化している。
但馬は日本領土である「竹島に上陸したことがある韓国人は日本本土に入国次第、逮捕する」ことを主張。これには文在寅現大統領も含まれるとしている。
★★★「即刻、入国を規制しろ!」(宇山卓栄):「朝鮮属国史」の著者だけに説得力がある。本書は「買いたい新書」の書評でも取り上げた。
http://frob.co.jp/kaitaishinsho/book_review.php?id=1544052908
宇山論文によると、文在寅は両親が北朝鮮出身であるだけでなく、自身が従北派であり韓国を赤化統一させるために、「文化大革命」を今起こしているのだという。「積弊一掃」というスローガンは革命政権であることを隠すためのものだという。これらに対応する戦略として、現行の「韓国人ビザなし渡航」という特恵措置をただちに停止せよと説く。
就労・就学ビザについても規制を強化するべきだとする。
★★★★「サムスン(三星)を締め上げればイチコロ」(渡邉哲也):韓国のGDPの25%を担うサムスンの携帯電話に必要なシリコンウェハー、高純度アルゴンガスや液晶パネル製造機械の韓国への輸出を禁止する。
★★★★★「韓国製品に対する関税引き上げ」については、執筆者の誰も「ニンニク事件」を知らないのか、どこにも書いてなかった。キムチなんて今は国産の高級品があるし、韓国から輸入しないといけないものがあるのだろうか?
ちなみに併載の松木国俊「韓国が<有事>でも、もう知らないよ!」によれば、日本の対韓貿易黒字はGDPの0.5%程度であり、仮に断交になっても日本の被害は軽微という。
興味深いことに1/12「朝鮮日報」が1/11の日経記事を引用して文政権の基本性格を報じている。
(朝鮮日報日本語版) 日経「文政権の対日外交軽視は運動圏出身者スタッフの影響」
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190112-00080010-chosun-kr
<文氏の周辺に対日外交を大局的、戦略的に考えるブレーンがほとんどいないため、『場当たり的な外交に陥っている』>というのがポイントだ。
「586世代」(「現在50歳代で、80年代に民主化運動に参加した、60年代生まれの元学生活動家」)を「現在65歳の文在寅は1世代上の学生運動の闘士であり、『586』の兄貴分として彼ら元活動家を重用する」などと説明している。
日本の学生運動は1940〜1950年代に生まれた世代が「60年安保」や「全共闘」運動の中心で今や70歳代になっている。韓国は「大学封鎖」(東大入試が中止になった)を経験しておらず、ほぼ30年遅れで学生運動や「ろうそくデモ」のような市民運動が起こっていると考えると、「ポピュリズムに依拠した文政権」という見方もできるだろう。
これだと「文在寅は北朝鮮のスパイ」という上記②の「陰謀史観」に依拠しないで、韓国の非常識な対日政策を説明できる利点がある。
「一つの嘘をつく者は、自分がどんな重荷を背負い込むのかめったに気がつかない。つまり、一つの嘘をとおすために別の嘘を二十発明せねばならない。」
スウィフト 「断片」(http://www.oyobi.com/maxim01/08_11.html)
「人は一つの嘘を本当にするためには、さらに30の嘘をつかなければならない」というのはナポレオン・ボナパルトの言葉だと記憶していたが、昨年12月20日の韓国駆逐艦の自衛隊哨戒機へのレーダー照射事件発生以来、『ナポレオン言行録』など、手持ちの参考書をいろいろ調べたが、彼の言葉が見つからなかった。一番信頼のおける「オックスフォード・引用句辞典」にも載っていない。
ネットで調べると、ジョナサン・スウィフトによく似た上記のアフォリズムがあることがわかった。
<日本の哨戒機が韓国海軍のレーダー電波を探知した後にも「広開土大王」の周囲を低空飛行し、回避もしなかったという点で、「広開土大王」が哨戒機に火器管制(射撃統制)レーダーを照射したという日本側の主張には説得力がないという立場も国防部は表した。>(中央日報日本語版)
https://japanese.joins.com/article/783/248783.html?servcode=A00§code=A10&cloc=jp|main|top_news
やっと1/4になって韓国国防部がこの事件に関する韓国側の「証拠資料」映像を公開したが、原文がハングルなので、和訳が下手なのか中央日報の記事は意味があいまいだ。
日本の防衛省公開の映像を見れば、日本のP-1哨戒機は韓国駆逐艦「広開土王」の右舷斜め上からまず偵察を開始し、艦尾のヘリポート格納庫にヘリがいないことを確認した際に、強力なレーダーのロックオンを受けている。機内に大音響の警告音が鳴り響き、通信員が「強烈な音です。この音憶えておいて下さい」と機長に伝える音声が録音されている。
この後、機長は「離隔する」(偵察中の艦船から離れる)と指示し、哨戒機は駆逐艦から離れ、高度も上昇させた。トム・クルーズ主演の米映画「トップガン」(1986)に戦闘機の模擬空中戦が何度も出て来るが、自機の後に回り込まれミサイル発射用のレーダーにロックオンされたら、勝負は終りである。後は発射ボタンを押せば、熱線追尾ミサイルが飛び出し、自機を確実に撃墜するからだ。
哨戒機を一旦「離隔」させた機長は、インシデンス(事変)を司令部に報告させるとともに、三つの緊急周波数を用いて、韓国駆逐艦に「照準用レーダー照射の目的は何か?」とコンタクトしている。これに対してまったく応答がなかったので、日本の哨戒機は現場海域から離脱している。
さて「中央日報」が伝える韓国の主張は「日本の哨戒機が韓国海軍のレーダー電波を探知した後にも『広開土大王』の周囲を低空飛行し、回避もしなかった」とし、これを論拠として「哨戒機に火器管制(射撃統制)レーダーを照射したという日本側の主張には説得力がない」、としている。
韓国海軍は「火器管制レーダーは放射しなかった」と12/20以来主張しているのだから、この命題は仮定法過去の主張で、言い換えると、「もし日本哨戒機が韓国の火器管制レーダー電波を探知しなかったのであれば、そのまま哨戒飛行を続けたはずだ。」となる。日本の哨戒機がそのまま哨戒飛行を続けた場合にのみ、韓国の主張は論理的に正しいものとなる。
だが実際にはP1哨戒機は2度目のレーダー照射を受け、韓国海軍から緊急無線への応答がないことを確認すると、高度を上げ日本本土に向かう飛行に移っている。それは韓国駆逐艦の火器レーダー照射を「脅威」と受け取ったからだろう。
なお1/5「時事」は<P1が収集した韓国駆逐艦の火器管制レーダーの電磁波情報(周波数)は、横須賀基地(神奈川県)の情報業務群の電子情報支援隊で分析され、「動かぬ証拠」として、官邸にも報告された。>と報じている。日本側はやるべき作業はもう終えている。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190105-00000006-jij-soci
同記事によれば<韓国側が公表した動画(約4分)のうち、韓国側が撮影した部分は11秒で、残りは防衛省がホームページで公開したP1(日本哨戒機)が撮影した映像を引用したものだった。>という。それも韓国海洋警察が撮影した映像で、韓国軍撮影の映像はない。警察の映像はボートからのもので、揺れが激しいが、すぐ目の前に甲板にテントが掛けられるようになった木枠のある小型木造船が写っており、画面左上を豆粒のように小さい日本哨戒機が飛翔している。この小型船が北朝鮮の「漁船だ」という韓国の主張もおかしいし、「哨戒機が超低空飛行により威嚇した」というのもおかしい。
(1/18付記:この不審船と乗組員について韓国政府は「北朝鮮漁船で乗組員は北朝鮮に帰国させた」と発表していたが、1/18ZAKZAKは「日米情報筋」の話をこう報じている。
<「北朝鮮の通常漁船より、サイズが4倍ほど大きい。『漁船団の母船では』と報じられたが、専門家が形状などを分析したところ、これまで確認された『北朝鮮工作船』とよく似ていることが分かった」>
https://www.zakzak.co.jp/soc/news/190118/soc1901180008-n2.html
禁輸物資を瀬取りする工作船だったとすると、話の筋が通る。韓国の軍事白書から「北朝鮮は敵国」という条項を削除した大統領だから、問題の漁船を一般公開せず、乗組員を秘密裏に帰国させたのもよくわかるが、国連の「北朝鮮への経済制裁」が生きているから、国際社会を納得させるのは無理だろう。
問題の海域は日本のEEZ(排他的経済水域)にあり、いわば日本の「准領海」である。ここに事前通告もなく勝手に入りこみ、呼びかけ無線にも応じず、火砲用レーダー照射をしてくる韓国軍艦艇に、自衛隊員はさぞかし憤慨したことだろうと思う。しかし機長以下搭乗員が冷静着実に対応し、予期せぬ軍事衝突を回避したことを喜ばしく思う。
韓国軍が1/4に初めて公開した日本政府への反論映像は、約4分のうちたった10秒が、韓国海洋警察が撮影したもので、残りは日本哨戒機が撮影した公開映像を再編集しただけのものだった。2〜3キロしか離れていない日本哨戒機からの緊急通信が、韓国駆逐艦の通信室ではノイズが大きく、聴き取れないという音声画像を見て、「何と劣悪な通信装備なことか!」と驚いてしまった。韓国海軍は「日本側の英語が悪くて聴き取れなかった」と日本側の呼びかけに答えなかった理由を説明しているが、これも嘘だと思う。
ともあれ、12/20に最初の嘘をついた韓国は、嘘の上塗りにもう10以上の嘘をついている。だがこれを「本当」に仕上げるにはもう20の嘘を、論理的に矛盾なくつかねばならないだろう。それは不可能だと私は思う。さっさと日本に謝るのが正解だろう。
(1/15追記:NHKによると、1/14にシンガポールで開かれた日韓実務者協議で日本側が浴びせられたレーダーの周波数記録を提示することを提案したところ、韓国が受け入れを拒否したという。日本側が照射された時間帯のデータを出すというのに、「照射していない」と主張しながらデータを公表できないのだから、また嘘をついている。この問題では韓国は絶対に謝罪せず、国際司法裁判所への提訴にも応じないことがまず確定した。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190115/k10011777931000.html?utm_int=word_contents_list-items_001&word_result=%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%80%E3%83%BC%E7%85%A7%E5%B0%84
この事件を伝える日本メディアでは、先に『北朝鮮核危機!・全内幕』(朝日選書2018/1:この本については「買いたい新書」で紹介した。)
http://frob.co.jp/kaitaishinsho/book_review.php?id=1528414094
の著者「朝日」ソウル支局長牧野愛博の記事に期待と信頼をおいていたが、辛うじて本人の原文が読めるのは「デジタル朝日」のみ。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190110-00000031-asahi-int
配達される紙版では東京本社の無名記者との共著記事になっているのには失望した。「朝日」は慰安婦問題と福島原発の吉田調書での誤報を取り消し、社長も辞任したので、少しは良くなるかと期待したが裏切られたようだ。
今年1/10、韓国文在寅大統領が初の記者会見を行った。私は韓国の嘘はもうばれているし、韓国の主張の論理矛盾も指摘しておいたので、何の期待もなかった。それに文在寅(1953〜)の両親は北朝鮮の出身で、朝鮮戦争最中の1950年12月、北朝鮮咸鏡南道・咸興市の興南市から避難民救出の米国貨物船に乗り脱北した。1953年に南鮮の巨済島に両親が定住した。姉が1人、妹が2人、弟が1人いる。両親(父・1920年生まれ、母・1928年生まれ[11])と姉は避難民[12]。祖父母は北に残したままだった。父は巨済島捕虜収容所で労働者として働き、母は鶏卵売りの行商をしたそうだ(WIKI「文在寅」による)。
上記牧野記者の記事によると、<日本企業が元徴用工らに損害賠償するよう命じた韓国大法院(最高裁)判決について「三権分立で政府は介入できない。日本は判決に不満を表明できるが、仕方がないという認識を持つべきだ」と指摘>したという。
「三権分立」などとよく言えたものだ。前の韓国最高裁長官を「徴用工裁判を遅らせた」として、検察が取り調べているではないか。これは韓国司法史上はじめてのことだ。
https://www.sankei.com/world/news/190111/wor1901110013-n1.html
今の最高裁長官は、去年8月に文在寅大統領に指名された、前春川地裁院長の金命洙(キム・ミョンス)だ。韓国メディアによると、「最高裁判事の経験もない大抜擢人事」だったという。ただの地方裁判所長を最高裁裁判長に任命したのは文在寅だ。コネと上下関係が重要な韓国で、これでは「徴用工」訴訟について大統領の意向に反する判決を最高裁が出せるはずがない。
それなのに文在寅大統領は年頭の記者会見で、NHKソウル支局長の質問に対して、いけシャーシャーとこう述べている。
<文大統領は「まず、基本的な話からすれば過去に韓国と日本の間に不幸な歴史があった。35年ほど続いた歴史だ」とし「その歴史のために韓日基本協定を締結したが、まだ少しずつ問題が続いている」と話した。>
続いて文大統領は「これは韓国政府が作り出した問題ではない。過去の不幸だった歴史のために生じた問題」とし「これを政治争点化して問題を拡散するのは賢明な態度ではない」と説明した。
さらに「韓国最高裁の判決に対し、世界のすべての先進国と同じように政府は司法府の判決に関与することはできない。日本も同じだ」と述べた。この後「日本が不満を表示するかもしれないが、韓国の司法府を尊重しなければいけない。不満があってもその部分はやむを得ないという認識を持たなければいけない」とし「韓日両国がこれを政治的な攻防の素材として未来志向的な関係まで毀損するのは望ましくない」と答えた。(「中央日報」)
(1/12付記:韓国の新聞はこの問題に及び腰だが、1/11付「中央日報」は社外論説委員のコラムで【再び「ロウソク集会広場」への非常口=韓国】と題して文在寅政権が内政外交の失敗により、「(政権が)土砂のように崩れる形勢があっという間に台頭し」、「再びロウソク集会広場への非常口が開かれる」だろうと、きわめて辛辣な時評を載せている。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190111-00000039-cnippou-kr
遅まきながら韓国メディアにも外交事態の深刻さが分かり始めたようだ。)
戦前の民法学者(東大教授)末弘厳太郎『嘘の効用』(冨山房百科文庫)は「大岡裁き」が名裁判とされる理由を説明しているが、あれは「法的事実」の証拠認定が裁判長に任せられているから可能になる。恣意的な事実認定をすれば法治主義でなく、今の韓国のように「情治主義」に転落する。
1/12の「朝鮮日報」社説【韓国司法史に汚点を残す前最高裁長官への取り調べ】は韓国における「三権分立」の現状を以下のように論じている。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190112-00080003-chosun-kr
「梁承泰(ヤン・スンテ)前大法院長(最高裁長官)が司法行政権乱用の容疑で被疑者として検察の取り調べを受けた。大法院長経験者が検察の取り調べを受けるのはこれが憲政史上はじめてのことで、韓国司法の歴史に大きな汚点として残るだろう。」、
「今度は文在寅(ムン・ジェイン)大統領自ら動き出し、検察に対して事実上の捜査指示を行った。現大法院長も自分がとりまとめた調査結果を覆し、大統領の指示に従った。その影響で前職と現職の判事100人以上が検察に出頭させられ取り調べを受けた。梁氏が大法院長だった当時、裁判取引きが疑われるような文書を作成したのは不適切だったが、確定判決が先に出たことで裁判への介入は最初から成り立たなくなった。」
要するに文在寅は国内では「司法を壟断」しておきながら、対外的には「裁判所の判断だから三権分立を重んじなければ」と主張しているにすぎない。
日本には1891年、ロシア皇太子の暗殺未遂事件(大津事件)で、政府からの圧力に抗して、犯人に対して皇室のみに適用される大逆罪(死刑)の適用を否定し、無期徒刑の判決を下した児島惟謙(1837〜1907:宇和島出身)という「罪刑法定主義と司法の独立」を貫いた裁判官がいる。
「大岡裁き」の名奉行大岡忠相なら、今の日韓紛争をどう裁くだろうか。法治主義の立場を採る限り、1965年の日韓基本条約と同請求権協定は さすがに無視できまい。日韓基本条約の第二条は以下のとおりだ。(【WIKI:日韓基本条約】)
なお以下に、基本条約と請求権協定の日本語・英語の正文が載っている。
http://www7a.biglobe.ne.jp/~mhvpip/0817NikkanKihonJooyaku.html
日韓基本条約:
<第二条:千九百十年八月二十二日以前に大日本帝国と大韓帝国との間で締結されたすべての条約及び協定は、もはや無効であることが確認される。>
これは1910年に締結された「日韓併合条約」等の条約・協約をもはや無効と認めたものだ。この条約の正文は日本語・韓国語・英語の3正文があり、「解釈に相違がある場合は、英語の本文による」と末尾に記されている。
日韓請求権協定:第二条にはこうある。(WIKI:日韓請求権協定)
<第二条
1 両締約国は、両締約国及びその国民(法人を含む。)の財産、権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が、千九百五十一年九月八日にサンフランシスコ市で署名された日本国との平和条約第四条(a)に規定されたものを含めて、完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する。
2 この条の規定は、次のもの(この協定の署名の日までにそれぞれの締約国が執った特別の措置の対象となったものを除く。)に影響を及ぼすものではない。
(a) 一方の締約国の国民で千九百四十七年八月十五日からこの協定の署名の日までの間に他方の締約国に居住したことがあるものの財産、権利及び利益
(b) 一方の締約国及びその国民の財産、権利及び利益であって千九百四十五年八月十五日以後における通常の接触の過程において取得され又は他方の締約国の管轄の下にはいったもの。
3 2.の規定に従うことを条件として、一方の締約国及びその国民の財産、権利及び利益であってこの協定の署名の日(注:1965/6/22を指す)に他方の締約国の管轄の下にあるものに対する措置並びに一方の締約国及びその国民の他方の締約国及びその国民に対するすべての請求権であって同日以前に生じた事由に基づくものに関しては、いかなる主張もすることができないものとする。>
私見では、この協約の第二条第2項の( )内の例外規定(「この協定の署名の日までにそれぞれの締約国が執った特別の措置の対象となったものを除く」)は 期日の起算日を明記しておらず、ここに不備があるようだ。
「特別措置」が私には不明だが、第1項で「1951年9月8日、サンフランシスコで日本と韓国が締結した平和条約」を強調しているから、起点はこの日とするのが妥当な解釈だろう。
第二条第3項で「2.の規定に従うことを条件として」、「協約署名日以前に生じた事由を基に、(今後は)いかなる請求権の主張もできない」という条文構造になっている。素直に条約と協約の条文を読めば、「日韓の過去はこれで清算しよう」という法の精神は明白だが、何しろ50年以上前に締結された条約だから、生き証人がいなくなっており、韓国の裁判官は条文の「字面解釈」をやり、手前勝手な理屈をこねる余地がある。
吉田清治の「慰安婦強制連行」「労働者強制徴用」、植村隆の「従軍慰安婦」などの虚説が日本からまき散らされた後だから、韓国最高裁の判事(裁判長)が政権におもねって、「協約」第二条第2項(「この協定の署名の日までにそれぞれの締約国が執った特別の措置の対象となったものを除く」)年月の起始点を1945/8/15以前に遡らせることはありえると思う。
協定の解釈をめぐる日韓の紛争について、同協定はこう規定している。
<第三条
1 この協定の解釈及び実施に関する両締約国の紛争は、まず、外交上の経路を通じて解決するものとする。
2 1.の規定により解決することができなかつた紛争は、いずれか一方の締約国の政府が他方の締約国の政府から紛争の仲裁を要請する公文を受領した日から三十日の期間内に各締約国政府が任命する各一人の仲裁委員と、こうして選定された二人の仲裁委員が当該期間の後の三十日の期間内に合意する第三の仲裁委員又は当該期間内にその二人の仲裁委員が合意する第三国の政府が指名する第三の仲裁委員との三人の仲裁委員からなる仲裁委員会に決定のため付託するものとする。ただし、第三の仲裁委員は、両締約国のうちいずれかの国民であってはならない。
3 いずれか一方の締約国の政府が当該期間内に仲裁委員を任命しなかつたとき、又は第三の仲裁委員若しくは第三国について当該期間内に合意されなかつたときは、仲裁委員会は、両締約国政府のそれぞれが三十日の期間内に選定する国の政府が指名する各一人の仲裁委員とそれらの政府が協議により決定する第三国の政府が指名する第三の仲裁委員をもつて構成されるものとする。
4 両締約国政府は、この条の規定に基づく仲裁委員会の決定に服するものとする。>
この「仲裁方法」の難点は韓国が仲裁委員を出さず、「第三国仲裁委員」の指命にも応じなかった場合が想定されていないことだ。竹島問題を国際司法裁判所に提訴することすら、韓国は応じていないのだから、仲裁委員会にも反対するだろう。どうも韓国大統領は「無理が通れば 道理が引っ込む」と考えているようだ。
1/11「産経」は<11日午前の管官房長官の記者会見で、<徴用工訴訟をめぐり、日本政府は9日、1965(昭和40)年の日韓請求権協定に基づく初の政府間協議を韓国に要請しており、菅氏は「韓国側が誠意を持って応じるものと考えている」と牽制した。>と報じている。以下はこの申し入れに対する韓国の反応だ。
1/14の「中央日報」は<日本、強制徴用協議を要請して「30日以内に答えよ」要求…「外交欠礼」の指摘も>という見出しの記事を載せている。日本政府が徴用工問題に対する2件の韓国最高裁判決の実施に異議を唱え、「日韓請求権協定」第三条に基づいて1/9に「紛争の解決」を申し入れたところ、<韓日請求権協定第3条第1項には「協定の解釈および実施に関する両締約国間紛争はまず外交上のルートを通じて解決する」と記されているだけで回答の期間が明示されているわけではない。>というのが「外交的欠礼」に当たるというのだ。
これは先に指摘した「日韓請求権協定」第二条第3項について、現韓国政府の無理解があるところから生じている。さらに「協定の解釈をめぐる日韓の紛争」について規定した第三条(3項まである)の第1項「この協定の解釈及び実施に関する両締約国の紛争は、まず、外交上の経路を通じて解決するものとする。」のみを単独で「字面(じづら)解釈」している点にある。第1項を補う第2、第3項では両国の仲裁委員の選出を30日以内に、二人の仲裁委員の合議により第三国の仲裁委員を30日以内に選び、「仲裁委員会」に問題を付託するとなっている。第二条2項と3項がいずれも仲裁委員の選出を「30日以内」と定めているのだから、日本外務省が公文で申し入れた「外交的協議」への回答期限が「30日以内」であることは法の精神に照らして明白だ。
特に重要なのは第二条第4項で、<両締約国政府は、この条の規定に基づく仲裁委員会の決定に服するものとする。>となっており、第三国委員を加えた仲裁委員会ができたり、国際司法裁判所の判断を仰ぐことになったら、韓国が負ける公算が高い。
左派の文在寅政権になってから、外務省でも「日韓外交」に詳しい「親日派」が追放されているというから、「日韓請求権協定」の全文を読み、その精神を理解できる人材がいなくなっているのではないか。少なくとも「中央日報」の記者が読んでいないことは記事から明白だろう。
「文藝春秋」新年号で元駐日韓国大使の柳 興洙(ゆ・ふんす)と産経の黒田勝弘が対談を行っているが、文在寅の「慰安婦財団の解散」について、こう発言している(要旨)。
黒田:日本が韓国に渡した「10億円の資金」については当事者の慰安婦の70%以上はすでに支援金の支給を受け、(慰安婦)合意を了解しています。
柳:そうです。韓国人としては言いにくいが、(慰安婦)支援の市民団体と一緒に行動して日本を延々と非難しているハルモニ(元慰安婦と称するおばあさん)は今や少数派だ。大多数は(日韓・慰安婦)合意にOKしていた。
黒田:現在、存命のハルモニは27人。市民団体の運動に加わっている人は10名足らずと思いますが、市民団体や政府が、少数の意見を元慰安婦の総意であるかのように主張しているという構図は、韓国でも意外に知らされていません。
柳・元駐日大使はジャレド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄』(草思社文庫)から、韓国と日本の関係についての箇所を引用してみせるほどの知識人である。(もっとも引用している「韓国人と日本人は成長期を共にすごした双子の兄弟も同然だ」という一節は上記文庫本にも、索引が整った英語原本にもない。韓国語訳にはあるのかも知れないが。)
誇張した虚言とはいえ、韓国は「20万人*の朝鮮人従軍慰安婦」と主張してきたのが、たった27人になり、挺対協を支持しているのがわずか10人というのだから、文在寅にとって「もはや政治的利用価値がない」のが、突然の慰安婦合意破棄の本音であろう。
*吉見義明「従軍慰安婦」、岩波新書、1995が上げた最大推計値
韓国が一方的に「慰安婦財団の解散」を発表したのが、昨年11/21日。その時は<日本政府の拠出金について、現在残る5億8000万円を返還するのか、慰安婦問題に関する別の事業に使うのかなど、その扱いについて、日本政府と協議したい。>と女性家族相が表明した。https://www.nhk.or.jp/politics/articles/statement/11289.html
しかし日本との協議はいっこうに始まらず、残金をネコババした状態だ。
本屋に行くと雑誌の棚に総合月刊誌が並んでいるが、売れているのは「正論」「WiLL」「Hanada」などの対韓強硬論を満載した右派雑誌だけだ。「文藝春秋」は12月号と1月号が並んで平積みになっている。「新潮45」はLGBT問題で昨年休刊になった。岩波の「世界」や朝日の「AERA」など、最近はさっぱり見かけない。
今年になって発行された総合雑誌は「日韓問題」を大きく扱っている。1/4付「産経抄」が鈴置貴史(元日経・経済解説部長)『米韓同盟消滅』(新潮新書)から「中二病」という用語を取り上げ、今の韓国がそれだと論じていた。
https://special.sankei.com/f/sankeisyo/article/20190104/0001.html
「買って読もうかな…」と思ったが、雑誌「Will」2月号に同著者の「<ろうそく革命>で融けていく韓国」という、同書の要約と思われる長文の論文が載っていたので、買うのはよしてこれを味読した。
【WIKI:中二病】によると1999年、伊集院光がラジオ・パーソナリティ番組で初使用し、後に韓国にも輸入された言葉だという。中央日報は親米と親中の間を右顧左眄している韓国を「中二病を彷彿とさせる」と報じたそうだ。
鈴置論文によると、韓国が「恐中病」に陥ったのは2000年の「ニンニク事件」以降だという。自国産生ニンニクを保護するため、中国産ニンニクには30%の関税しかかけなかったところ、中国製「冷凍 or 漬け物」ニンニクが怒濤のように輸入された。そこで韓国政府が後者に315%の関税を課すようにしたところ、1ヶ月後、中国政府が報復措置として、「韓国製の携帯電話とポリエチレンの輸入禁止」を通告してきた。これに恐怖して、韓国は即座に中国産ニンニクの輸入関税率を30〜50%に引き下げた。(韓国経済新聞)
https://japanese.joins.com/article/j_article.php?aid=205579
鈴置氏は韓国の未来として以下の二つのコースを挙げている。
① 朝鮮半島全体の非核化・中立化を達成し、それを国連や周辺国が保証する。
② 北朝鮮が核を保持したまま、韓国が北朝鮮の核の傘に入る。
ところがアメリカは「もう世界の警察官の役割は果たせない」と主張し、「朝鮮半島防衛はコストパフォーマンスが悪い」とまで大統領が述べている。金正恩は国連による核施設・核ミサイル貯蔵庫の査察を認めていない。それどころか文在寅がもみ手で平壌を表敬訪問したのに、ソウルへの答礼訪問さえしていない。今の国連安保理では、中国とロシアが拒否権を持っているから、国連軍として半島有事に対応することはできない。
よって①は空論だと思われる。
②は韓国の文在寅が金日成の社会主義思想(主体思想)の影響を受けていることから考えて、可能性の高いシナリオだと考える。当初「一国二制度」を採用し、徐々に休戦ラインを越えての人的交流あるいは経済活動を盛んにして、ドイツのように究極的には統一国家を目指す。
それ自体はよいが、東ドイツが自壊して統合が達成されたドイツの場合と異なり、朝鮮半島でこれを目指すには、中国共産党や北朝鮮労働党のような強力な秘密政党が必要になるだろう。
その場合、結果としてユーラシア大陸の東端に「ロシア・中国・朝鮮」という左派全体主義国家が実現する。新朝鮮国は明治初期のように、北はロシアと中国、南は対馬を挟んで日本と国境を接することになる。もしこうなれば朝鮮が中国の衛星国となることは、地政学的に十分予測される。
第③のシナリオは韓国国民がもっと冷静になって、米・日との信頼関係と同盟をきちんと維持することだ。その方策は韓国が考えることだが、今の「親北左派」政権では無理だろう。
というわけで、鈴置貴史『米韓同盟消滅』の内容エッセンスは この「Will」論文に書かれていたので、また蔵書を増やす必要がなくなった。
「ラッキョウ事件」で中国が韓国に対して採った措置は上記の通りだが、「慰安婦・徴用工・レーザー照射」事件に対する日本側の対抗措置(考慮中)について、1/2「産経」が【政府・与党が検討している対抗措置】を具体的に報じていた。次の5項目が挙がっている。
Ⅰ.長嶺駐韓大使の召還(筆者注:国交断絶の始まり)
Ⅱ.韓国人への短期滞在ビザ免除の取り消し
Ⅲ.韓国人への就労ビザの発給制限
Ⅳ.特定物資の対韓輸出制限
Ⅴ.韓国製品に対する関税引き上げ
面白いことに、これらの方策は「Will」2月号の掲載論文にほとんど書いてある。今年になっての日本政府の韓国への対応を見ると、こうした「世論」にかなり突き上げられているように思われる。
Ⅰ〜Ⅴに対応して、★〜★5の意見が述べられている。
★ 「だから韓国はつけ上がる」(阿比留瑠比):総論で対韓強硬論。就労ビザの厳格化、在日韓国人の特別永住権の撤去、韓流文化の禁止にも触れている。
★ ★「在日風俗嬢は強制送還」(室谷克実):新宿歌舞伎町などを中心に、日本には韓国人風俗嬢が約5万人いると、「韓国女性家族省」の情報をもとに、彼女らを摘発して強制出国させるべきと主張している。
「竹島侵入者は入国禁止!」(但馬オサム):韓国済州島出身で、拓殖大学教授をしている呉善花は韓国の旅券を所持していたのに、「反韓的言辞を弄した」として親族の葬式に出席するための、韓国入国が認められなかった。2度こういう経験をしたあと、今は日本に帰化している。
但馬は日本領土である「竹島に上陸したことがある韓国人は日本本土に入国次第、逮捕する」ことを主張。これには文在寅現大統領も含まれるとしている。
★★★「即刻、入国を規制しろ!」(宇山卓栄):「朝鮮属国史」の著者だけに説得力がある。本書は「買いたい新書」の書評でも取り上げた。
http://frob.co.jp/kaitaishinsho/book_review.php?id=1544052908
宇山論文によると、文在寅は両親が北朝鮮出身であるだけでなく、自身が従北派であり韓国を赤化統一させるために、「文化大革命」を今起こしているのだという。「積弊一掃」というスローガンは革命政権であることを隠すためのものだという。これらに対応する戦略として、現行の「韓国人ビザなし渡航」という特恵措置をただちに停止せよと説く。
就労・就学ビザについても規制を強化するべきだとする。
★★★★「サムスン(三星)を締め上げればイチコロ」(渡邉哲也):韓国のGDPの25%を担うサムスンの携帯電話に必要なシリコンウェハー、高純度アルゴンガスや液晶パネル製造機械の韓国への輸出を禁止する。
★★★★★「韓国製品に対する関税引き上げ」については、執筆者の誰も「ニンニク事件」を知らないのか、どこにも書いてなかった。キムチなんて今は国産の高級品があるし、韓国から輸入しないといけないものがあるのだろうか?
ちなみに併載の松木国俊「韓国が<有事>でも、もう知らないよ!」によれば、日本の対韓貿易黒字はGDPの0.5%程度であり、仮に断交になっても日本の被害は軽微という。
興味深いことに1/12「朝鮮日報」が1/11の日経記事を引用して文政権の基本性格を報じている。
(朝鮮日報日本語版) 日経「文政権の対日外交軽視は運動圏出身者スタッフの影響」
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190112-00080010-chosun-kr
<文氏の周辺に対日外交を大局的、戦略的に考えるブレーンがほとんどいないため、『場当たり的な外交に陥っている』>というのがポイントだ。
「586世代」(「現在50歳代で、80年代に民主化運動に参加した、60年代生まれの元学生活動家」)を「現在65歳の文在寅は1世代上の学生運動の闘士であり、『586』の兄貴分として彼ら元活動家を重用する」などと説明している。
日本の学生運動は1940〜1950年代に生まれた世代が「60年安保」や「全共闘」運動の中心で今や70歳代になっている。韓国は「大学封鎖」(東大入試が中止になった)を経験しておらず、ほぼ30年遅れで学生運動や「ろうそくデモ」のような市民運動が起こっていると考えると、「ポピュリズムに依拠した文政権」という見方もできるだろう。
これだと「文在寅は北朝鮮のスパイ」という上記②の「陰謀史観」に依拠しないで、韓国の非常識な対日政策を説明できる利点がある。
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