【一件落着】
中村葉子(東洋経済 編集局)記者による<世界の潮流「修復腎移植」を阻む移植学会の闇、裏には「透析医療の利権問題」も>という問題の「東洋経済オンライン」記事は、すぐにMixiの「みんなの日記」に転載された。テキストがここで読める。
http://open.mixi.jp/user/28433789/diary/1945345090
中村記者は修復腎移植について、『誰が修復腎移植をつぶすのか』の著者、高橋幸春氏へのインタビュー基づいてこの記事を書いた。この記事に対して「安部光洋」と名乗る泌尿器科医が「東洋経済オンライン」のコメント欄に「修復腎移植はありえなえい」、「記事は完全なミスリード」、「腎がんの患者は、私のところにくれば、部分摘出で治る」という誹謗と自己宣伝のコメントを書き込んだ。この人物が「NTT東日本関東病院(旧関東逓信病院)」泌尿器科医医長(東大医2001卒)と確定した。安部医師が高橋氏の本を読んだ上で発言したかは疑わしい。
この画像はどこかの民放TV番組に出た時のものを、ご本人がFB(フェイスブック)にアップしたもので、<次は「仕事の流儀」か「情熱大陸」に出れるようにがんばります!>というコメントが付いている。TV出演が目的であり、「患者のQOLアップ」がどこにも書いてない!
「美容健康.INFO」という、いかがわしい商業サイトにも顔を出している。
http://beautyhealthy.info/healthy/1306
どこか若き日の橋下徹に似たところがあり、「自己顕示欲の強い人物」という印象を受けた。
この「安部光洋」には大した医学的実績がない。虎の門病院時代に14回日本泌尿器科学会で発表をしているだけで、うち筆頭発表はわずか2回だ。学術誌に発表された論文は1本もない。
虎の門病院では有名な小松秀樹泌尿器科部長の指導を受けている。小松先生は、
『慈恵医大青戸病院事件:医療の構造と実践的倫理』(日本経済評論社, 2004/9)
『医療崩壊:「立ち去り型サボタージュ」とは何か』( 朝日新聞社, 2006/5)
を刊行し、現代医療の構造的問題や先端医療技術と医療ミスにおける医師責任の問題を世に問い、東京地検からも一目をおかれた人だ。
虎の門病院では腎移植は外科が行っており、泌尿器科はタッチしていないそうだ。小松先生は「修復腎移植」について、こう述べたことがある。
<「虎の門病院泌尿器科の小松秀樹部長は……病気腎移植については「医学的には大きな実験部分はない。これまでの結果を検討すれば、がんは大きな問題にならないことが分かるのではないか」とした上で、「家族間の生体腎移植にも倫理的問題がある。病気腎移植についても社会で議論すべきだ」と話す。>(東京新聞 2008/12/11記事)
http://sokonisonnzaisuru.blog23.fc2.com/?mode=m&no=1606
当時、小松部長の部下だった安部医師はこれを承知しているはずだ。小松先生は2010年に虎の門病院を定年退職し、千葉県の亀田総合病院の副院長になったらしい。安部医師は2011年頃、虎の門から現在の病院に移っている。
さて、安部医師が勤務する「NTT東日本関東病院」の泌尿器科では、
①2012年をピークとして、腎臓の手術件数が減少している。<>は内数で内視鏡手術件数。
2012=51件(全摘15<1>、腎部分切除31、腎尿管全摘5<2>) 全摘率=39.2%
2013=49件(全摘10<4>、腎部分切除20、腎尿管全摘19<10>) 全摘率=59.2%
2014=44件(全摘13<4>、腎部分切除25、腎尿管全摘6<5>) 全摘率=43.2%
https://www.ntt-east.co.jp/kmc/guide/urology/result.html
上記は表からの数値で、棒グラフ化された「腎腫瘍手術件数の推移」では、
2012=46件(全摘15、部分切除31) 全摘率=30.6%
2013=29件(全摘9、部分切除29) 全摘率=31.0%
2014=37件(全摘12、部分切除25) 全摘率=32.4%
となっている。数値の「内的整合性」は保たれており、数字に捏造はないと思われる。
この数値は、
1999〜08年の10年間に、5大学(名古屋、京都、大阪、東京女子医、東邦大)7病院で行なわれた小径腎がんの手術は994件、全摘591件(59%)、部分切除403件(41%)にくらべて、安部医師の病院では10ポイントほど全摘率が低い。
2011年に、厚生労働省が全国228の医療機関に対して行なった調査では、全摘(46.7%)、部分切除(53.3%)だったから、これにくらべると約15ポイント低いといえる。
NTT関東病院泌尿器科で「腎がんの部分切除率」が高いのは事実だが、肝心の術後成績(予後データ)が公表されていない。病院はまずそれをきちんと発表すべきだろう。
二次的に同病院HPで公開されている、科別手術件数と科別の院内死亡数、剖検率を比較すると、
泌尿器科の入院手術件数、院内死亡と剖検数・剖検率:
(下欄は病院全体の数値:資料同病院HP)
2011=入院手術数361
死亡 15、剖検数 0、剖検率=0%
死亡553、剖検数27、剖検率4.9%
2012=入院手術数399
死亡 10、剖検数 0、剖検率=0%
死亡 503、剖検数10、剖検率2.0%
2013=入院手術数399
死亡 15、剖検数 0、剖検率=0%
死亡 502、剖検数37、剖検率7.4%
2014=入院手術数398
死亡 19、剖検数 0、剖検率 0%
死亡 515、剖検数26、剖検率5.0%
となっている。
つまり同科の年間平均の入院手術数は389件であり、これに対して年平均約15人の死亡退院が生じている。約4%である。これを高いと見るか、低いと見るか、医師でも意見が分かれるであろう。
問題は、4年間に泌尿器科で発生した59人の死亡患者に対して、剖検(病理解剖)がまったく行われておらず、直接死因やその病因が不明なことにある。
「NTT関東病院」全体の剖検率は5.0%であり、今日、日本の多くの病院の剖検率が5%をはるかに下まわっていることを考えると、病理解剖を実施することで臨床医による医療行為のピア・レビュー(同僚審査)を実施している、この病院の姿勢は立派である。
失敗の経験から学ばない医療に進歩はありえない。問題は第三者のチェックを受けていない泌尿器科のシステムにあるような気がする。
さらに不思議なのは「腎臓疾患と前立腺を専門に活躍する若きセンター長」が着任したら、前立腺がんの手術も、
2012年=101件、2013年=89件、2014年=59件
と急激に減少しているのはどうしてだろう?
まあ、普通に考えれば患者数が減少したことにあせりがあって、「東洋経済オンライン」に挑発的な書き込みをして「私のところに来れば、全摘せずに腎がんを治せます!」とPRしたのであろう。
患者は口コミで動く。万波誠の宇和島徳洲会病院には、東北や北海道から患者がやってくる。東京の田中弘道さんも安部光洋医師を受診せずに、宇和島へ行った。ネットの書き込みごときで患者が来ると思ったら大きな誤算だろう。
問題の「東洋経済オンライン」
http://toyokeizai.net/articles/-/80469
の書き込み欄は、『だれが修復腎移植をつぶすのか』の著者、高橋幸春さんの発言に続いて、8/24メルマガでの私の意見を武田元介さんが2本も書き込んでくれたので、これで不勉強な安部光洋医師の「軽挙妄動」も収まるだろう。
「愛媛新聞社」の野依伸彦氏も8/29に書き込んだ。
http://toyokeizai.net/articles/-/80469
2008/5/28の「愛媛」に愛媛支局から「言葉とイメージ」という評論を載せた人物だ。
http://www.ehime-np.co.jp/rensai/zokibaibai/ren101200805285578.html
安部医師は、タレント性はある人だろうと思うが、医師は命にかかわる重要な職業だ。安易に出演させたメデイアにも自重自戒を求めたい。昔「ドクター」こと「ケーシー高峰」という白衣を着たタレントがいた。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B1%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%BC%E9%AB%98%E5%B3%B0
テレビに出たいなら「東大卒の現役医師」を売り物に、お笑いタレントになったらどうだ。
その後、安部医師の反論がアップされた。
http://toyokeizai.net/articles/-/80469
<まず前提になる知識として「小径腎癌に対して部分切除術を施行した場合と全摘除術を施行した場合、癌特異的生存率は変わらないが、全生存率は長期で全摘除術が劣る可能性がある」という論文があります。平たく言えば、癌で死ぬ確率は変わらないけれども、腎臓を1つ取ると将来他の病気で早死にするかも知れませんよ、ということです。> と述べている。
これは以下の論文のことだろう。(文献は常に明記すべきだ。)
Scosyrev E(1), Messing EM(2), Sylvester R(3), Campbell S(4), Van Poppel H(5):
Renal function after nephronsparing surgery versus radical nephrectomy: results from EORTC randomized trial 30904.
Eur Urol. 2014 Feb;65(2):3727. doi: 10.1016/j.eururo.2013.06.044. (Epub 2013 Jul 2).
これは部分切除派の米クリーブランド・クリニックのキャンベル組と全摘派のベルギーのファン・ポッペル派が国際的に共同研究した「無作為前向き」臨床試験の結果だ。
結果は、< CONCLUSIONS: Compared with RN, NSS substantially reduced the incidence of at least moderate renal dysfunction (eGFR <60), although with available followup the incidence of advanced kidney disease (eGFR <30) was relatively similar in the two treatment arms, and the incidence of kidney failure (eGFR <15) was nearly identical. The beneficial impact of NSS on eGFR did not result in improved survival in this study population.>
1. 腎全摘群(273例)と2.部分切除群(268例)の長期成績を比べたら、2群で糸球体沪過率がややよかったが、両群の全生存率には差がなかったと結論づけている。
キャンベルは英語の分厚い「Urology」という泌尿器科の教科書を書いている大ボスだ。ところが彼の部下で、部分切除の唱道者であるRH Thompsonという男がこの論文共著者から落ちている。日本移植学会などが2012/2に厚労省に提出した「修復腎移植を先進医療として認めないように」という要望書には、トンプソンの論文本訳が資料として付けられていた。
この「EORTC 30904」ランダム化比較試験の出現は、キャンベルがトンプソンの主張を否定したこと、さらにキャンベルの権威を利用して厚労省に「先進医療」つぶしを要望した日本移植学会の主張になにら根拠がなかったことを示している。
こういう背景事情にも世界の流れにも疎い、安部医師の不勉強ぶりにはあきれた。
この問題は、これで一件落着にしたいものだ。私はもう相手にしない。
中村葉子(東洋経済 編集局)記者による<世界の潮流「修復腎移植」を阻む移植学会の闇、裏には「透析医療の利権問題」も>という問題の「東洋経済オンライン」記事は、すぐにMixiの「みんなの日記」に転載された。テキストがここで読める。
http://open.mixi.jp/user/28433789/diary/1945345090
中村記者は修復腎移植について、『誰が修復腎移植をつぶすのか』の著者、高橋幸春氏へのインタビュー基づいてこの記事を書いた。この記事に対して「安部光洋」と名乗る泌尿器科医が「東洋経済オンライン」のコメント欄に「修復腎移植はありえなえい」、「記事は完全なミスリード」、「腎がんの患者は、私のところにくれば、部分摘出で治る」という誹謗と自己宣伝のコメントを書き込んだ。この人物が「NTT東日本関東病院(旧関東逓信病院)」泌尿器科医医長(東大医2001卒)と確定した。安部医師が高橋氏の本を読んだ上で発言したかは疑わしい。
この画像はどこかの民放TV番組に出た時のものを、ご本人がFB(フェイスブック)にアップしたもので、<次は「仕事の流儀」か「情熱大陸」に出れるようにがんばります!>というコメントが付いている。TV出演が目的であり、「患者のQOLアップ」がどこにも書いてない!
「美容健康.INFO」という、いかがわしい商業サイトにも顔を出している。
http://beautyhealthy.info/healthy/1306
どこか若き日の橋下徹に似たところがあり、「自己顕示欲の強い人物」という印象を受けた。
この「安部光洋」には大した医学的実績がない。虎の門病院時代に14回日本泌尿器科学会で発表をしているだけで、うち筆頭発表はわずか2回だ。学術誌に発表された論文は1本もない。
虎の門病院では有名な小松秀樹泌尿器科部長の指導を受けている。小松先生は、
『慈恵医大青戸病院事件:医療の構造と実践的倫理』(日本経済評論社, 2004/9)
『医療崩壊:「立ち去り型サボタージュ」とは何か』( 朝日新聞社, 2006/5)
を刊行し、現代医療の構造的問題や先端医療技術と医療ミスにおける医師責任の問題を世に問い、東京地検からも一目をおかれた人だ。
虎の門病院では腎移植は外科が行っており、泌尿器科はタッチしていないそうだ。小松先生は「修復腎移植」について、こう述べたことがある。
<「虎の門病院泌尿器科の小松秀樹部長は……病気腎移植については「医学的には大きな実験部分はない。これまでの結果を検討すれば、がんは大きな問題にならないことが分かるのではないか」とした上で、「家族間の生体腎移植にも倫理的問題がある。病気腎移植についても社会で議論すべきだ」と話す。>(東京新聞 2008/12/11記事)
http://sokonisonnzaisuru.blog23.fc2.com/?mode=m&no=1606
当時、小松部長の部下だった安部医師はこれを承知しているはずだ。小松先生は2010年に虎の門病院を定年退職し、千葉県の亀田総合病院の副院長になったらしい。安部医師は2011年頃、虎の門から現在の病院に移っている。
さて、安部医師が勤務する「NTT東日本関東病院」の泌尿器科では、
①2012年をピークとして、腎臓の手術件数が減少している。<>は内数で内視鏡手術件数。
2012=51件(全摘15<1>、腎部分切除31、腎尿管全摘5<2>) 全摘率=39.2%
2013=49件(全摘10<4>、腎部分切除20、腎尿管全摘19<10>) 全摘率=59.2%
2014=44件(全摘13<4>、腎部分切除25、腎尿管全摘6<5>) 全摘率=43.2%
https://www.ntt-east.co.jp/kmc/guide/urology/result.html
上記は表からの数値で、棒グラフ化された「腎腫瘍手術件数の推移」では、
2012=46件(全摘15、部分切除31) 全摘率=30.6%
2013=29件(全摘9、部分切除29) 全摘率=31.0%
2014=37件(全摘12、部分切除25) 全摘率=32.4%
となっている。数値の「内的整合性」は保たれており、数字に捏造はないと思われる。
この数値は、
1999〜08年の10年間に、5大学(名古屋、京都、大阪、東京女子医、東邦大)7病院で行なわれた小径腎がんの手術は994件、全摘591件(59%)、部分切除403件(41%)にくらべて、安部医師の病院では10ポイントほど全摘率が低い。
2011年に、厚生労働省が全国228の医療機関に対して行なった調査では、全摘(46.7%)、部分切除(53.3%)だったから、これにくらべると約15ポイント低いといえる。
NTT関東病院泌尿器科で「腎がんの部分切除率」が高いのは事実だが、肝心の術後成績(予後データ)が公表されていない。病院はまずそれをきちんと発表すべきだろう。
二次的に同病院HPで公開されている、科別手術件数と科別の院内死亡数、剖検率を比較すると、
泌尿器科の入院手術件数、院内死亡と剖検数・剖検率:
(下欄は病院全体の数値:資料同病院HP)
2011=入院手術数361
死亡 15、剖検数 0、剖検率=0%
死亡553、剖検数27、剖検率4.9%
2012=入院手術数399
死亡 10、剖検数 0、剖検率=0%
死亡 503、剖検数10、剖検率2.0%
2013=入院手術数399
死亡 15、剖検数 0、剖検率=0%
死亡 502、剖検数37、剖検率7.4%
2014=入院手術数398
死亡 19、剖検数 0、剖検率 0%
死亡 515、剖検数26、剖検率5.0%
となっている。
つまり同科の年間平均の入院手術数は389件であり、これに対して年平均約15人の死亡退院が生じている。約4%である。これを高いと見るか、低いと見るか、医師でも意見が分かれるであろう。
問題は、4年間に泌尿器科で発生した59人の死亡患者に対して、剖検(病理解剖)がまったく行われておらず、直接死因やその病因が不明なことにある。
「NTT関東病院」全体の剖検率は5.0%であり、今日、日本の多くの病院の剖検率が5%をはるかに下まわっていることを考えると、病理解剖を実施することで臨床医による医療行為のピア・レビュー(同僚審査)を実施している、この病院の姿勢は立派である。
失敗の経験から学ばない医療に進歩はありえない。問題は第三者のチェックを受けていない泌尿器科のシステムにあるような気がする。
さらに不思議なのは「腎臓疾患と前立腺を専門に活躍する若きセンター長」が着任したら、前立腺がんの手術も、
2012年=101件、2013年=89件、2014年=59件
と急激に減少しているのはどうしてだろう?
まあ、普通に考えれば患者数が減少したことにあせりがあって、「東洋経済オンライン」に挑発的な書き込みをして「私のところに来れば、全摘せずに腎がんを治せます!」とPRしたのであろう。
患者は口コミで動く。万波誠の宇和島徳洲会病院には、東北や北海道から患者がやってくる。東京の田中弘道さんも安部光洋医師を受診せずに、宇和島へ行った。ネットの書き込みごときで患者が来ると思ったら大きな誤算だろう。
問題の「東洋経済オンライン」
http://toyokeizai.net/articles/-/80469
の書き込み欄は、『だれが修復腎移植をつぶすのか』の著者、高橋幸春さんの発言に続いて、8/24メルマガでの私の意見を武田元介さんが2本も書き込んでくれたので、これで不勉強な安部光洋医師の「軽挙妄動」も収まるだろう。
「愛媛新聞社」の野依伸彦氏も8/29に書き込んだ。
http://toyokeizai.net/articles/-/80469
2008/5/28の「愛媛」に愛媛支局から「言葉とイメージ」という評論を載せた人物だ。
http://www.ehime-np.co.jp/rensai/zokibaibai/ren101200805285578.html
安部医師は、タレント性はある人だろうと思うが、医師は命にかかわる重要な職業だ。安易に出演させたメデイアにも自重自戒を求めたい。昔「ドクター」こと「ケーシー高峰」という白衣を着たタレントがいた。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B1%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%BC%E9%AB%98%E5%B3%B0
テレビに出たいなら「東大卒の現役医師」を売り物に、お笑いタレントになったらどうだ。
その後、安部医師の反論がアップされた。
http://toyokeizai.net/articles/-/80469
<まず前提になる知識として「小径腎癌に対して部分切除術を施行した場合と全摘除術を施行した場合、癌特異的生存率は変わらないが、全生存率は長期で全摘除術が劣る可能性がある」という論文があります。平たく言えば、癌で死ぬ確率は変わらないけれども、腎臓を1つ取ると将来他の病気で早死にするかも知れませんよ、ということです。> と述べている。
これは以下の論文のことだろう。(文献は常に明記すべきだ。)
Scosyrev E(1), Messing EM(2), Sylvester R(3), Campbell S(4), Van Poppel H(5):
Renal function after nephronsparing surgery versus radical nephrectomy: results from EORTC randomized trial 30904.
Eur Urol. 2014 Feb;65(2):3727. doi: 10.1016/j.eururo.2013.06.044. (Epub 2013 Jul 2).
これは部分切除派の米クリーブランド・クリニックのキャンベル組と全摘派のベルギーのファン・ポッペル派が国際的に共同研究した「無作為前向き」臨床試験の結果だ。
結果は、< CONCLUSIONS: Compared with RN, NSS substantially reduced the incidence of at least moderate renal dysfunction (eGFR <60), although with available followup the incidence of advanced kidney disease (eGFR <30) was relatively similar in the two treatment arms, and the incidence of kidney failure (eGFR <15) was nearly identical. The beneficial impact of NSS on eGFR did not result in improved survival in this study population.>
1. 腎全摘群(273例)と2.部分切除群(268例)の長期成績を比べたら、2群で糸球体沪過率がややよかったが、両群の全生存率には差がなかったと結論づけている。
キャンベルは英語の分厚い「Urology」という泌尿器科の教科書を書いている大ボスだ。ところが彼の部下で、部分切除の唱道者であるRH Thompsonという男がこの論文共著者から落ちている。日本移植学会などが2012/2に厚労省に提出した「修復腎移植を先進医療として認めないように」という要望書には、トンプソンの論文本訳が資料として付けられていた。
この「EORTC 30904」ランダム化比較試験の出現は、キャンベルがトンプソンの主張を否定したこと、さらにキャンベルの権威を利用して厚労省に「先進医療」つぶしを要望した日本移植学会の主張になにら根拠がなかったことを示している。
こういう背景事情にも世界の流れにも疎い、安部医師の不勉強ぶりにはあきれた。
この問題は、これで一件落着にしたいものだ。私はもう相手にしない。
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