ある宇和島市議会議員のトレーニング

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【欠陥製本】難波先生より

2014-02-27 08:33:00 | 難波紘二先生
【欠陥製本】黒野伸一「限界集落株式会社」(小学館文庫)という小説を読んでいる。
 大手銀行の融資部にいた40歳前の主人公が会社を辞め、死んだ祖父の故郷である過疎の村(今は「限界集落」になっている)に住みつき、村人を説得して土地を集約して「農業株式会社」を立ち上げる話を軸にした娯楽小説だ。

 小説の出来も悪いが、本の出来はもっと悪い。真ん中で開いたら4葉8頁分が背表紙からはずれた。背表紙は例の白いプラスティック糊でゴテゴテに固めてある。
 とれたページの背表紙側をよく見ると、綴じ糸が引きちぎれた跡がなく、三角形の切れ込みが入れてある。(図1)背表紙側を見ると、この切れ込みに相当する部分に白い糸のような盛り上がりが見える。
(図1)


 ルーペで見ながら、ピンセットでいろいろつついてみてやっとわかった。綴じ糸は使用されていない。この三角形の切れ込みは、ページ裁断側の表面積を増大させ、糊をここに浸透させてページを背表紙に固着させるためにある。道理で最初、軽く開いた時、「この本の綴じ糸位置はずいぶん奥にあるな…」と思われたはずだ。
 こんなふざけた粗悪製本はどこがやっているのか、と奥付を見たら製本所の名前がなく、「印刷=大日本印刷」とだけあった。恐らく印刷所で製本しているのだろう。手元の中村隆英「昭和史」(東洋経済文庫)を調べると、これは「印刷・製本=東港出版印刷」とあった。これは上下2冊で1冊1000ページ近い厚い本だが、完全に開いてもページが取れない。製本方式はやはりプラスティック糊を使用した「無線綴じ」だ。
 どこが違うのかよく見たら、切れ込みの数が違う。大日本印刷は12個の切れ込みなのに対して、東港出版印刷は21個の切れ込みを使用している。使用している紙が薄く、切れ込みが多いので糊から紙が剥がれないのである。(図2)
(図2)
 書庫に小学館文庫は他に2冊ある。(蔵書目録の入力が4500冊を突破して、すこし利用しやすくなった。)うち1冊を手にしてみると、やはり「印刷=大日本印刷」とあるが、なんとこちらは切れ込みが14個あった。つまり「限界集落株式会社」は、機械の不調かなにかで切れ込み数が2個不足しているのだ。
 大日本印刷はこういう手抜き本を作って利益をあげ、丸善やジュンク堂を買収し子会社にしたのかと思うとあきれる。http://ja.wikipedia.org/wiki/大日本印刷#.E7.A4.BE.E5.A4.96.E3.81.8B.E3.82.89.E3.81.AE.E8.A9.95.E4.BE.A1
 それにしても、同じ無線綴じなのに、これはペンギン・ブックのH.G.ウェールズ「A Short History of The World」(全371ページ)だが、ペタッと開けて、ページ端に切れ込みがまったく見えないのはどうしてであろうか。(図3)使用している糊が違うのであろうか?
(図3)
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