ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【5/8/2017鹿鳴荘便り 序】難波先生より

2017-05-08 11:40:31 | 難波紘二先生
 5/1のメルマガで紹介した呉のNさんの親友が5/1に亡くなられたと予後を知らせるメールを頂いた。

<浮腫がひどくなった為、4/24に体液(浸出液)を抜く為再入院し、
2日間で2000CCを抜いたそうです。
その後、急速に全身衰弱状態になり、家で死ぬ事は出来ませんでした。
痛みはほとんど訴えなかったそうですが、呼吸困難を訴えた為、
モルヒネ系の薬を投与して、呼吸困難感(?)の緩和をしたそうです。
モルヒネは痛み止めだけではないのですね。
ともあれ、4/24に病室で携帯TELで話した時のが最後の会話になりました。>

 当初「心タンポナーデ」と聞いていたので、「心囊にそれだけ大量の浸出液が溜まるだろうか?」と面食らった。
 成人男子の心重量は約250gm、1回の心拍出量は約60mlである。とても心囊腔に1000mlの浸出液を溜めるスペースはない。
よってこれはがん性胸膜炎による胸水貯留であろうと思う。

 胸水を抜いたのが左肺側か両側かが書いてないが、60歳の男性では肺活量は2000mlt程度だから、仮に左胸腔だけに1Lの胸水が出たとすれば、それだけで左肺機能は消失する。片肺だけになると呼吸困難が生じるだろう。
 すると血液の酸素飽和度が減少し、呼吸困難を訴えるようになる。
 <浮腫がひどくなった>の「浮腫」という言葉がよくわからないが、恐らくこれはがん性胸膜炎に伴う「胸水症」の意味で医師が使ったものであろう。
 昔は皮下組織などの結合組織内に水が溜まる状態を「浮腫(エデーマ)」、体腔に水が貯留する状態を「水腫(ヒドロプス)」と呼び区別していたが、最近の医学用語では区別があいまいになっているようだ。

 モルヒネは呼吸中枢のセンサーを鈍くする働きがあるので、こういう場合に投与される。もちろん痛みをやわらげる効果もある。
 モルヒネは経口投与の場合は中毒にならないが、注射では中毒が生じる。しかしこの場合はターミナルな症状なので、中毒うんぬんは論外だろう。モルヒネ投与により嗜眠状態となり、あまり苦しむことなく最期を迎えられたのだと思う。

 この人の場合は肺腺がんが「転移性心囊炎」として発見されており、肺病変の方は小さくて発見されなかったのであろう。
「夏まで」という医師の予後宣告は「転移性心囊炎」という状態が持続するという見通しの上になされたものであろう。
 再入院後は1週間程度で親友の死を迎えることになり、誠に残念なことでした。


今回のメルマガでは
1.献本お礼など
2.ヤモリの卵 
3.反日と嫌韓
4.朝鮮地図・再び
5.ないものを知る
6.聖職の碑
7.廃用性萎縮
という7つの話題を取り上げました。

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3 コメント

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Unknown (Unknown)
2017-05-09 00:21:40
>モルヒネは経口投与の場合は中毒にならないが、注射では中毒が生じる。

こういう書き方は誤解を生みそう。
返信する
Unknown (Unknown)
2017-05-09 07:54:56
では、どういった書き方が正しいか、教えて下さい。
返信する
Unknown (Unknown)
2017-05-14 16:54:39
経口投与の場合は、医師により、適量を与えられている分には、ということだろうと推察します。
勿論多量に与えられれば、危険であることは当然です。
返信する

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