ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【10/2/2017鹿鳴荘便り 序】難波先生より

2017-10-02 12:33:22 | 難波紘二先生
10/1夜7時のNHKニュースを見ていたら、「飛行機の中で泣く赤児が増えている」というトピックが出てきて「何じゃこれは!?」と思った。「耳管咽頭管」という中耳と咽をつなぐ、重要な気圧調整装置の管の説明がまったくない。(図1)


(図1)

鼓膜は3つの耳小骨を介して音を聞くのだが、音が正常に聞こえるためには鼓膜の外(外耳)と鼓膜の内側(中耳)の気圧が等しくなければいけない。このため中耳から咽頭に抜ける「耳管」という特別の管があり、外耳と中耳の気圧差をゼロにしている。

「目から鼻に抜ける」というのは、頭の良い人物の形容に用いられるが、涙管はまさにそうで目尻から鼻腔に涙を流している。
天才歌手美空ひばりは、涙管の入り口の筋肉を閉鎖することができ、「悲しい酒」を唄うと、1分たたないうちに目から涙をこぼすことができた。八代亜紀が「普通の歌手なら泣いたら涙声になるが、ひばりさんは泣いても唄が鼻声にならなかった」と感心していたが、解剖学を知れば原理は簡単だ。

成人なら高度変化による鼓膜内外の圧力変化(耳がツーンとする)は、唾を飲み込めば解消するのを知っている。呑みこむ時に、耳管の咽頭への開口部(耳管咽頭口)が開き、口腔内圧と中耳内圧が等しくなるからだ。
 この理屈を知らない乳児には、おっぱいを飲ませるのが一番だ。離乳後の幼児なら、飲み物を少量飲ませればよい。それも用意がなければ、泣くがままに放置すればよい。泣くことによっても耳管の咽頭口は開く。不快感が消失すれば、幼児は自然に泣きやむ。

1980年、カナダのモントリオールで開かれた「国際血液学会」に出席した後、恩師に招かれて米テネシー州メンフィス市に行った。機はシカゴ空港で乗り換えの必要があった。機体が着陸のため高度を下げ始めた時、前の席で突然赤ん坊が激しく泣き始めた。黒人の母娘が並んで座っていて、娘が乳児を抱いていた。

内心「端迷惑だな…」と思っていると、全席の母が振り向いて「すみません」と詫びた。それに対する恩師の応対をみて、私は大いに恥じた。恩師はこういったのだ。
「なに、泣くことは赤児にとって必要なことなのです。泣けば耳から咽に通じる管が開いて、不快感が消失します。そしたらすぐに泣き止むでしょう」。
 果たして赤児は間もなく泣きやみ、機はシカゴのオヘア空港に着陸した。さすが、ハーバードの医学部を首席で卒業した人だ。血液病理学者なのに、口腔の解剖学も耳鼻科学もちゃんと理解していて、それを素人に分かりやすく説明できる能力を備えている。これが「達人」というものか、と思った。

あれから37年経つ。今夜のNHKニュースはまだあのレベルに達していないな、とがっかりした。

今回は9つの話題を取り上げました。
1.秋の風景=身辺雑記
2.訂正など=1)「ひのえうま」の出生減, 2)福山附属東大進学数トップ
 についての、補足など
3.糖質ゼロの酒=自製のお勧めの宿酔しないお酒について
4.ガダルカナル戦=1943年公開の米映画です
5.タトゥー=入れ墨は縄文時代から日本の文化です
6.地上最大の作戦=1945年公開の米映画で「史上最大の作戦」より面白いと思いました。
7.返してから反対しろ=「慰安婦合意」で韓国政府に渡した10億円の話
8.チビチリガマ事件=沖縄読谷村で発生した事件について、
9.アルビノ狩り=モザンビークで起きた「白子(アルビーノ)」の殺しと遺体を解体し脳を含め臓器を奪った事件について、

と話題が少し多くなりました。

エフロブの「買いたい新書」書評には、
No.393: 上野正彦「監察医の祈り」,ポプラ文庫
http://www.frob.co.jp/kaitaishinsho/book_review.php?id=1505806450

を取り上げました。サイコパスによる凶悪犯罪が多発しているのに(犯罪件数総数は減少している)日本の監察医制度、監察医務院の不備には背筋が寒くなります。法医専門医の大ベテラン上野先生のこの本をぜひお読み下さい。司法解剖数5000件という人は日本では他にいないと思います。

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