ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【玉音放送2】難波先生より

2016-08-16 11:04:58 | 難波紘二先生
【玉音放送2】
 8/8(月)、中国電力の下請け業者が約束どおり、「電源車」を持ってきて、トランスの交換工事を始めたので、14:30から16:30までのNHK「天皇会見」番組が支障なく録画できた。
 工事そのものは1時間では終わらず、17:00頃にやっと終了した。あらかじめ「停電させないこと」という強い要求をしておいてよかったと思った。

 夜になって録画を再生し、問題の天皇スピーチを聴き「きわめて妥当な内容」と思った。
 そもそも「万世一系の天皇」などというのは生物学的・人類学的に見れば「神話」なのである。
 ヒトの遺伝子は核内遺伝子とミトコンドリア遺伝子の2種類からなる。このうち精子が持つミトコンドリアは授精の際に卵子内に入れないので、すべての人類は母親由来のミトコンドリアDNAを持つことになる。この単純な事実を発見したカリフォルニア大のレベッカ・キャンが、ミトコンドリア遺伝子の変位速度に基づいて、「現生全人類共通の祖先の祖地」を計算したところ、「15万年前の東アフリカ」という結論になったわけである。
 つまり人類の母系はDNAで辿れるが、核内遺伝子がからむ父系については、生物学的・人類学的に追跡困難または不可能なのである。
 もう一つ父系家系は必ず消滅するという根拠に、「女はXXというペアーの性染色体を持つが、男はXYという特殊な性染色体をもつ」という事実を挙げておきたい。XXはそれぞれ父親と母親の染色体に由来するもので、多数の重要な遺伝子をもつ。ところがY染色体は父親遺伝子に由来するもので、この染色体の機能は、基本的にオスとして働きに必要なもの、つまり睾丸、ペニス、精子形成能力などでしかない。
 Y染色体は、X染色体と異なり、機能的にはかなり劣化したもので、もし母親由来のX染色体の遺伝子異常があった場合、それをバックアップする機能がない。このため色盲にしろ、血友病にしろ、「伴性優性遺伝」をするのである。
 男子出生率は女子出生率に対して1.3程度と男の子が多く生まれるが、乳幼児死亡率が高く、生殖可能年齢になると男女比の差がなくなる。これは男子にはX染色体が1個しかなく、もしそれに異常があった場合、別のX染色体のバックアップを受けられないためである。
 女性の平均寿命が男に比べて10歳程度長いのは、X染色体が2個あり、これが片方のX染色体の欠陥をバックアップしているためだ。

 従ってY染色体の持続を前提とする「男系相続」を行うと、必ず数代で血統が断絶してしまう。こんなことは医学・生物学的には常識だと思うが、「文藝春秋」9月号の「天皇退位」問題に関する記事を読んでも、ちっと常識になっていないことに気づき、あえて一言する。

 まず歴史的事実から述べる。
 「神話時代の天皇」(第一代神武から第十四代仲哀)を別として、実在が証明されている天皇のうち、以下は女性である。
 第33代:推古天皇、
 第35代:皇極天皇(=第37代斉明天皇)
 第41代:持統天皇
 第43代:元明天皇
 第44代:元正天皇
 第46代:孝謙天皇(=第48代称徳天皇)
 第109代:明正天皇
 第117代:後桜町天皇

 つまり8人、10代の天皇は「男系」ではなく、ここで「男系による万世一系」という言説は事実により破綻している。(後桜町以後は、男系であることも事実である。それもたった8代目だ。)
 「万世一系」は天皇にかかる枕詞のようなものだが、字義としては「永遠に同一の家系が続くこと」を意味している。
 途中に女帝が入った段階で生物学的には、1)Y遺伝子が失われる、2)父系のミトコンドリア遺伝子が失われるので、「万世一系」は中断する。これは生物学・遺伝学では常識である。

 もう一つの問題は第26代、継体天皇の即位である。
 第25代、武烈天皇は日本史上もっとも残虐な天皇で、妊婦の腹を割いて胎児を見た、罪人の生爪を剥いでヤマイモを掘らせた、人の髪を抜いて高い木に登らせ、木を切り倒させて墜落死するのを楽しんだ、人を池の樋に入れ、苦しくなって出てくるところを矛で突き刺して楽しんだなどの悪行があり、ローマのネロ皇帝に匹敵する人物である。
 そのせいか8年間の在位中に子供が生まれず、「応神・仁徳」系の王朝はこれで断絶した。
 こういう天皇だったために後継者選びは相当難航した。

 最終的に選ばれたのは、越前坂井の三国にひっそりと住んでいた「男大迹尊(おおどのみこと)」で、丹波の国桑田郡の「倭彦王」が即位を辞退したため、最終的に「男大迹尊」が第26代、継体天皇として即位した。俗に「応神天皇5世の孫」といわれるが、これはまやかしで「孫」とは応神から3親等でなければならないが、継体天皇に続く応神からの系統は、系図が正しいとして、1.稚渟毛二岐(皇子), 2.意富富杼(王), 3.平非(王)、4.彦主人(王)、5. 男大迹尊となる。各世代で親から受け継ぐ遺伝子は半分になるから、男大迹尊(継体天皇)が受け継いだ応神の遺伝子は3.1%にしかすぎない。

 これでどうして「万世一系」などと言えるのか、私には疑問である。
 笠原英彦「歴代天皇総覧」(中公史書)にはこの「武烈=継体」の皇位継承には異説があり、武烈の悪政の後、越前・近江地方の豪族が反乱を起こし、約20年間の内乱の後、越前の勢力が皇位を簒奪して、その時点で歴史と系図を書き換えたという説があるという。
 継体の治世には九州で「磐井の乱」も発生しており、継体天皇は即位後20年してやっと大和の都入りしている。それまで宮廷は騎馬民族のように各地を転々としていた。

 ヒトとチンパンジーで、遺伝子の違いはたった3%だという。逆に言うと97%は共通の遺伝子を持つと言うことだ。それなのに、応神天皇の遺伝子をたった3%しか受け継いでいない継体天皇がなんで「万世一系の皇祖皇統」のひとりになりえるのか?

 これは皇室学者、日本史学者が遺伝学の法則にも生物学の法則にも無知である由縁の所産であるとしか思えない。文系の皇室学者や日本史学者は、科学や生物学の常識を踏まえて、「科学的にありえない」日本書紀や古事記、続日本紀、続日本後記の記述の再検討に取り組むべきだと思う。重要なのは「科学的真実」であり、定説とか学者の面目ではない。
 帰国した娘が、米第3代大統領トマス・ジェファソンの箴言「I Cannot Live Without Books」が書かれたショッピングバッグを「お父さんにぴったりだ」とプレゼントしてくれた。
 ジェファソンに黒人の女性奴隷がいて、二人の間に子どもができ、その子孫が今でも生きていることは、ちゃんとDNA検査され確定している。そのことはアメリカ史の常識になっている。

 71年前の今日、8月15日、天皇の「ポツダム宣言受諾による無条件降伏」の表明により、ヒロシマ・ナガサキの犠牲の上ではありますが、東京に原爆投下が避けられたのは事実だと私は確信します。天皇の英断を私は評価しますが、皇統の「万世一系」というのは、あくまで「神話とフィクション」だと考えるので、その旨、見解を表明しました。
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4 コメント

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Unknown (Unknown)
2016-08-18 05:46:19
男女の出生率比は1.05程度.
1.3もあれば, 成人までに23%も死んじゃうじゃないか.
難波クンは、グーグルも使えないのか?
返信する
Unknown (Unknown)
2016-08-18 05:49:21
ついでにぐぐっておいた.
後桜町天皇の次の代は桃園天皇.
後桜町天皇の異母弟.

>女帝が入った段階で生物学的には、1)Y遺伝子が失われる、2)父系のミトコンドリア遺伝子
とか議論するなら, 系図くらい確認してからになさい.
返信する
Unknown (Unknown)
2016-08-18 06:01:20
ついでだ.
第110代:後光明天皇は明正天皇の異母弟. 皇統は異母弟の第112代霊元天皇に引き継がれる.

第46代:孝謙天皇(=第48代称徳天皇)
は天武天皇の子孫だが, 次の第49代は, 天智天皇の孫に引き継がれている.

他も調べてみたが, 女帝の子孫に皇統が引き継がれた例はない. であるからして, 宮内庁のいうとおりであるならば, 今上陛下のY染色体は神武帝のものと同じということだ.

あと,
>ヒトとチンパンジーで、遺伝子の違いはたった3%だという。逆に言うと97%は共通の遺伝子を持つと言うことだ。それなのに、応神天皇の遺伝子をたった3%しか受け継いでいない継体天皇がなんで「万世一系の皇祖皇統」のひとりになりえるのか?
この文章はバカの極みね. もう少し「科学や生物学の常識を踏まえて」書け.
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Unknown (Unknown)
2016-08-18 06:12:14
>ジェファソンに黒人の女性奴隷がいて、二人の間に子どもができ、その子孫が今でも生きていることは、ちゃんとDNA検査され確定している。

これについても書いておこう.
科学者たるもの, 100%ではない限り, 「確定している」と書いてはいけない.
DNA鑑定で父親が特定の人であることは「確定」できない.
事実, 元の論文を読んでみると,
The simplest and most probable explanations for our molecular findings are that Thomas Jefferson, rather than one of the Carr brothers, was the father of Eston Hemings Jefferson
と書いてあるが,
We cannot completely rule out other explanations of our findings based on illegitimacy in various lines of descent.
と但し書きがある.

元文献 (Nature 396, 27-28, 5 Nov 1998) にあたるのは当然の姿勢だと思うのだが, 最近の難波クンは横着が過ぎんかね?
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