【霜と霜柱】
「霜と霜柱」のことは、中谷宇吉郎『雪』(岩波文庫)の「雪の結晶雑話14」(p.77-78)に少しだけ書いてあった。それによると、
「霜と霜柱は別もので、霜は夜間の気温低下により、空気中の水分が凝縮してできる<無定形の霜>と雪の結晶と同じメカニズムで起こる<結晶性の霜>とがある。
屋根の霜は無定形の霜で、結晶性の霜は地物から成長し、地面や高山で山小屋の壁などに零下10度くらいで形成される。
他方、霜柱は霜と成因が異なり、土の性質により(関東の赤土など)、土中の水分が例外的に結晶として凍る。」
とのこと。
私の観察は霜柱に関しては、彼と異なるが、現段階ではコメントを控えたい。
『雪』は1938年、「岩波新書」の最初の20冊の一つとして出版され、その後もロングセラーとなり、1994年に「岩波文庫」版が出ている。
自由学園の女学生による「霜柱の研究」についての中谷のコメントは1940刊の「随筆集」に載っているので、『雪』を読んだ女学生たちが、霜柱と土の関係に興味を持ってグループ研究した可能性が考えられるだろう。
12/24:朝8時過ぎに裏庭に行くと花壇の草の葉に前回と同じような霜が降りていた。今年の2月に霜柱を認めた仕事場西の真土地面にも霜柱ができていた。生ゴミ捨て場の腐葉土は凍みてはいるが、霜柱を形成していなかった。大きな落ち葉の上に載った残雪が、溶けかかったところでまた凍って、面白い模様を作っていた。
外気温は4度、湿度は80%である。
マクロズームで撮影しようと考えたが、前回以上の倍率にしないと、疑問点が解けない。そこで2〜3倍の読書用ルーペを補助レンズとして使うことにした。汚れが目立つので、レンズクリーナーを滴下し、レンズペーパーで清掃した。これをカメラレンズの前に置くと、自動焦点式なので拡大撮影ができる。ただ安いプラスチックレンズのため球面収差がつよく、周辺にボケが出るので、狙った被写体を画面中心に置かないといけない。
まず葉の霜を拡大撮影した。(写真3)
葉縁にも葉の表面にも細い霜の柱ができているが、よく見ると葉の上に柱になっていない小さな氷塊が認められる。横倒しになった霜柱を見ると、このサブユニットが4〜7個、連結している。つまり肉眼では細い針のように見えるが、拡大して見ると小さな氷塊が連結した構造をしている。
(写真3)
別の生きた葉では葉縁に針状の霜柱がよく発達しているが、枯れた芝の葉(右下隅)ではサブユニット氷塊が1〜2個しか付着していない。(写真4)
(写真4)
写真は仕事場西の真土があるところで、葉には針状の霜柱が生じているが、地面にはより太い霜柱ができていて、写真中央の上側では小さな石を持ち上げている。(写真5)
(写真5)
太い霜柱は細い柱状の霜柱が集合したものである。
霜柱の中には、写真のようにほぼ45度の角度で折れ曲がったものもある(写真6)。柱は下側の細い草の幅が2mm弱だったので、直径が2mm強あり、円柱ではなく六角柱だと思われる。長さは15mmくらいある。
左手の丸い草の葉にも葉縁を主体に、霜の小塊が付着している。
(写真6)![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/02/2c/f1d371992c14c965753a142fd3824ba9.jpg)
生ゴミ捨て場の周りの土では、元は真土だが有機物が多くなりやや灰色ないし灰黒色になっており、かつよく人が歩くので、地面が締まっている。この部位では霜柱が形成されておらず、地面が凍みた状態になっていた。(写真7)
(写真7)
画面右下にある根が露出した小さな植物は、凍結による地面のせり上がりと溶融による沈下の繰り返しにより、地表に取り残されたものと思われる。
中谷宇吉郎は、「霜と霜柱は別もので、霜は夜間の気温低下により、空気中の水分が凝縮してできる<無定形の霜>と雪の結晶と同じメカニズムで起こる<結晶性の霜>とがある。」
と述べている。
彼の説によると、直径が2mmくらいある霜柱と葉に認められた細い霜柱は直径が5倍くらい異なり、後者は「結晶性の霜」に分類されるだろう。ただ葉に降りた「無定形の霜」の粒子は、針状の霜のサブユニットをなしており、「無定形の霜」と「結晶性の霜」をそのように峻別できるかどうか…。それにこの辺の夜間気温はマイナス10度までは下がらない。
科学は観察から始まり、仮説を形成してそれを実験的に証明することで進むのだが、とても仮説形成まで私の能力では進みそうもない。誰かの知恵を借りたいものだ…。
12/28朝、車の屋根に霜が降りているのを認めた。家内の軽自動車の屋根のアンテナ取付部が黒で、そこに白く霜が降りている。よく見ると、そこに宇吉郎のいう「無定形の霜」と「結晶性の霜」の両方があった。(写真8)
(写真8)
屋根には細かい霜の粒子が一面びっしり降りて、左下のように真っ白くなっているが、アンテナ取付部の黒いプラスチックには霜柱が立っている。霜柱まで発展していない結晶性の粒子もある。左下の白い部分は本来の屋根の部分である。
花壇の方にも、同様の現象が認められた。(写真9)昨夜、夜露が降りたらしく、葉に溜まった水滴がそのまま氷の玉になり、葉の上に載っていた。
(写真9)
葉縁には霜柱が立っており、葉上には小さな霜の粒子がある。ただし枯葉や別の種類の生きた葉では、これほど顕著な霜柱形成は見られない。
時刻は午前8:30で外気温は2℃、湿度は78%だった。冬至直後で、日昇が遅いからこの時刻でも霜柱が残っていたので、日昇後はすぐに消えた。
アンテナ基部にできた霜柱と葉に形成される霜柱は、基本的に同じものだと思われる。しかし、前者は小さな霜の結晶が付加的に長く延びたものとしか考えようがない。そうなると、葉の霜柱も基部の結晶が付加的に延長したと考えるのが妥当だろう。
これは頂部に粗大な砂利を載せた霜柱が、下からせり上がっていくのと全く逆の形成様式になる。従って、葉や車の屋根にできる霜柱と土中から生じる霜柱は、成因論的には宇吉郎のいうように別ものである。この点は今までの考えを訂正したい。
これからどうするかを考えているが、室内に霜柱を持ち込むのは寒剤の作製が面倒なので、ノートパソコンとUSB顕微鏡を戸外に持ち出して、葉の霜柱と霜の粒子を顕微鏡撮影することを試みて見たい。キャンプ用の折り畳み小テーブルがあるので、それを使えば何とかなるだろう。
「霜と霜柱」のことは、中谷宇吉郎『雪』(岩波文庫)の「雪の結晶雑話14」(p.77-78)に少しだけ書いてあった。それによると、
「霜と霜柱は別もので、霜は夜間の気温低下により、空気中の水分が凝縮してできる<無定形の霜>と雪の結晶と同じメカニズムで起こる<結晶性の霜>とがある。
屋根の霜は無定形の霜で、結晶性の霜は地物から成長し、地面や高山で山小屋の壁などに零下10度くらいで形成される。
他方、霜柱は霜と成因が異なり、土の性質により(関東の赤土など)、土中の水分が例外的に結晶として凍る。」
とのこと。
私の観察は霜柱に関しては、彼と異なるが、現段階ではコメントを控えたい。
『雪』は1938年、「岩波新書」の最初の20冊の一つとして出版され、その後もロングセラーとなり、1994年に「岩波文庫」版が出ている。
自由学園の女学生による「霜柱の研究」についての中谷のコメントは1940刊の「随筆集」に載っているので、『雪』を読んだ女学生たちが、霜柱と土の関係に興味を持ってグループ研究した可能性が考えられるだろう。
12/24:朝8時過ぎに裏庭に行くと花壇の草の葉に前回と同じような霜が降りていた。今年の2月に霜柱を認めた仕事場西の真土地面にも霜柱ができていた。生ゴミ捨て場の腐葉土は凍みてはいるが、霜柱を形成していなかった。大きな落ち葉の上に載った残雪が、溶けかかったところでまた凍って、面白い模様を作っていた。
外気温は4度、湿度は80%である。
マクロズームで撮影しようと考えたが、前回以上の倍率にしないと、疑問点が解けない。そこで2〜3倍の読書用ルーペを補助レンズとして使うことにした。汚れが目立つので、レンズクリーナーを滴下し、レンズペーパーで清掃した。これをカメラレンズの前に置くと、自動焦点式なので拡大撮影ができる。ただ安いプラスチックレンズのため球面収差がつよく、周辺にボケが出るので、狙った被写体を画面中心に置かないといけない。
まず葉の霜を拡大撮影した。(写真3)
葉縁にも葉の表面にも細い霜の柱ができているが、よく見ると葉の上に柱になっていない小さな氷塊が認められる。横倒しになった霜柱を見ると、このサブユニットが4〜7個、連結している。つまり肉眼では細い針のように見えるが、拡大して見ると小さな氷塊が連結した構造をしている。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/13/41/7de60041211517c7734ea60ca17ca257.jpg)
別の生きた葉では葉縁に針状の霜柱がよく発達しているが、枯れた芝の葉(右下隅)ではサブユニット氷塊が1〜2個しか付着していない。(写真4)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/59/ec/08907a9a946b5f969edbe4a8c9249392.jpg)
写真は仕事場西の真土があるところで、葉には針状の霜柱が生じているが、地面にはより太い霜柱ができていて、写真中央の上側では小さな石を持ち上げている。(写真5)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/24/6a/ca4eea859e3837cb21bc09edd311f165.jpg)
太い霜柱は細い柱状の霜柱が集合したものである。
霜柱の中には、写真のようにほぼ45度の角度で折れ曲がったものもある(写真6)。柱は下側の細い草の幅が2mm弱だったので、直径が2mm強あり、円柱ではなく六角柱だと思われる。長さは15mmくらいある。
左手の丸い草の葉にも葉縁を主体に、霜の小塊が付着している。
(写真6)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/02/2c/f1d371992c14c965753a142fd3824ba9.jpg)
生ゴミ捨て場の周りの土では、元は真土だが有機物が多くなりやや灰色ないし灰黒色になっており、かつよく人が歩くので、地面が締まっている。この部位では霜柱が形成されておらず、地面が凍みた状態になっていた。(写真7)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/18/86/7c6965f7e6b29b6957584762d031361c.jpg)
画面右下にある根が露出した小さな植物は、凍結による地面のせり上がりと溶融による沈下の繰り返しにより、地表に取り残されたものと思われる。
中谷宇吉郎は、「霜と霜柱は別もので、霜は夜間の気温低下により、空気中の水分が凝縮してできる<無定形の霜>と雪の結晶と同じメカニズムで起こる<結晶性の霜>とがある。」
と述べている。
彼の説によると、直径が2mmくらいある霜柱と葉に認められた細い霜柱は直径が5倍くらい異なり、後者は「結晶性の霜」に分類されるだろう。ただ葉に降りた「無定形の霜」の粒子は、針状の霜のサブユニットをなしており、「無定形の霜」と「結晶性の霜」をそのように峻別できるかどうか…。それにこの辺の夜間気温はマイナス10度までは下がらない。
科学は観察から始まり、仮説を形成してそれを実験的に証明することで進むのだが、とても仮説形成まで私の能力では進みそうもない。誰かの知恵を借りたいものだ…。
12/28朝、車の屋根に霜が降りているのを認めた。家内の軽自動車の屋根のアンテナ取付部が黒で、そこに白く霜が降りている。よく見ると、そこに宇吉郎のいう「無定形の霜」と「結晶性の霜」の両方があった。(写真8)
(写真8)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/30/74/28ac14c7666a21bf524d86e9d110a2d3.jpg)
屋根には細かい霜の粒子が一面びっしり降りて、左下のように真っ白くなっているが、アンテナ取付部の黒いプラスチックには霜柱が立っている。霜柱まで発展していない結晶性の粒子もある。左下の白い部分は本来の屋根の部分である。
花壇の方にも、同様の現象が認められた。(写真9)昨夜、夜露が降りたらしく、葉に溜まった水滴がそのまま氷の玉になり、葉の上に載っていた。
(写真9)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7d/04/0b3751bbf01ba2a762818f082de08ba7.jpg)
葉縁には霜柱が立っており、葉上には小さな霜の粒子がある。ただし枯葉や別の種類の生きた葉では、これほど顕著な霜柱形成は見られない。
時刻は午前8:30で外気温は2℃、湿度は78%だった。冬至直後で、日昇が遅いからこの時刻でも霜柱が残っていたので、日昇後はすぐに消えた。
アンテナ基部にできた霜柱と葉に形成される霜柱は、基本的に同じものだと思われる。しかし、前者は小さな霜の結晶が付加的に長く延びたものとしか考えようがない。そうなると、葉の霜柱も基部の結晶が付加的に延長したと考えるのが妥当だろう。
これは頂部に粗大な砂利を載せた霜柱が、下からせり上がっていくのと全く逆の形成様式になる。従って、葉や車の屋根にできる霜柱と土中から生じる霜柱は、成因論的には宇吉郎のいうように別ものである。この点は今までの考えを訂正したい。
これからどうするかを考えているが、室内に霜柱を持ち込むのは寒剤の作製が面倒なので、ノートパソコンとUSB顕微鏡を戸外に持ち出して、葉の霜柱と霜の粒子を顕微鏡撮影することを試みて見たい。キャンプ用の折り畳み小テーブルがあるので、それを使えば何とかなるだろう。
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