ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【CMLとGIST】難波先生より

2016-12-13 16:57:25 | 難波紘二先生
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【CMLとGIST】
 慢性骨髄性白血病(CML)は白血球幹細胞の異常増殖によるもので、第9染色体にある遺伝子bcrが第22染色体にあるablの隣に転座して、bcr-ablという新遺伝子を構成し、これが新しいキメラタンパク質を合成するところに原因がある。
 CMLの発症率は人口10万人当たり年間1~2人と極小だ。もっとも罹った本人にとっては「極小」ではない。
 他方、物理学者での患者でもあるT先生から教わった「GIST(Gastro-Intestinal Stromal Tumor)」腫瘍は、消化管粘膜下にある「カハールの介在細胞」に由来する肉腫で、やはり発生率は1〜2人(対人口10万・年間)だ。

 bcr-abl遺伝子が生みだすキメラタンパクを選択的に阻害するCMLの特効薬「グリベック(イマニチブ)」は1998年に米国で臨床試験が始まり、2001/5にFDAが承認している。
 誰が遺伝子構造の類似性に着目したのかわからないが、2003/5には日本でもGISTの特効薬としてグリベックが承認されている。
 最近「Transrelational Research」ということが言われているが、血液病理を専門としてきた私も、かつては「平滑筋肉腫」と呼ばれてきた「カハールの介在細胞」腫瘍が、CMLと共通の特性を持つとは思ってもみなかった。(念のために、GISTにはCMLの特徴である「フィラデルフィア染色体」はないようで、DNAレベルだけの分子異常だと思われる。)

 「買いたい新書」の書評NO.351古川健司「ケトン食ががんを消す」
http://www.frob.co.jp/kaitaishinsho/book_review.php?id=1481264555

を書いていて、今でも「血液病理学」ががん治療を牽引していることを知り、嬉しく思った。
 京大名誉教授の本庶佑さんが、何かの雑誌対談で「要素還元型の研究はもう終りで、これからは既存のパラダイム間の共通要素を見つけ、それを元に新しいパラダイムを生みだす時代だ」と述べていた。新発見のbcr-ablキメラタンパク質の抗体を作成して、免疫組織化学的に多様な腫瘍を染めたところ、CMLだけでなくGIST腫瘍でも陽性反応が認められ、両者に著功する単一の特効薬が見つかったということだろう。
 物事は根源的なところでつながっている、という感を強くしたところだ。面白い時代が始まったと思う。

 もともと爬虫類以下の脊椎動物では、造血の主座は腸管粘膜下組織で、胃粘膜下の造血巣が後に独立して脾臓となる。もしこの「間葉系幹細胞」がCMLとGISTの共通起源細胞だとすれば、GISTの部位別発生率もCMLと共通のキメラタンパク質の存在も、統一的に説明できるだろう。
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2 コメント

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Unknown (Unknown)
2016-12-23 04:54:29
細かい事だが、bcrが22番、ablが9番だよ。

それと、
「新発見のbcr-ablキメラタンパク質の抗体を作成して、免疫組織化学的に多様な腫瘍を染めたところ、CMLだけでなくGIST腫瘍でも陽性反応が認められ、両者に著功する単一の特効薬が見つかったということだろう。」
これは大間違い。チロシンキナーゼの阻害剤だから、GISTの原因となる活性化したチロシンキナーゼであるkitも阻害できるのだ。ablは関係ないよ。もっとよく調べてから書いて下さい。

チロシンキナーゼが細胞内の機能の調整に非常に重要な役割を果たしていることは、70年代の終わり頃から認識され始め、発がんにおいても重要であることが分かってきた。この分野で著名な業績をあげたトニー・ハンターも長年、常にノーベル賞候補にあげられている。昨今の分子標的薬の進歩を見るに、来年あたり受賞があるかも知れない。
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Unknown (Unknown)
2017-05-07 15:33:52
本庶先生のお薬が、もっと安価ならば。
悩ましいお薬ですね。

本庶先生といえばSTAP騒動の時に、「キメラの遺伝子型を調べればいい」とおっしゃっていました。
しかし何故かキメラには触れないようにお達しでもあったのでしょうか?
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