【縮む世界】
世界が本当に小さくなってきたと思う。物理的世界ではない。時間距離の上での世界だ。
「STAP細胞の入れ替わり」について、3/25(火)19:00のNHKニュースは見損ねたが、3/26(水)朝になって例のUCデーヴィス校ノフラー博士のブログを訪れたら、NHKニュースからの画像が引用され、「STAP細胞」騒動が要領よく総括してあった。
(Dr. Knoeplerのブログから:NHKの画面)
若山照彦氏は理研にいた当時、小保方の方法では何度やっても「STAP細胞」ができず、山梨に転勤する直前に「129系統マウス」を小保方に渡し、「STAP細胞作ってくれるように」依頼した。その時に「できました」と小保方晴子から2株の「STAP幹細胞」を渡された。それを用いて若山氏がキメラマウスを作ったら、どちらも美事にできたので、彼はすっかり「STAP細胞」の存在を信じた。
疑惑が浮上して、山梨大に持ってきていた「STAP幹細胞」2株の凍結保存材料を調べたら、129系とは異なるB6、F1(これは129/B6の雑種一代の意)という遺伝子系統のマウス遺伝子が検出された。
B6、F1由来のES細胞株はすでに理研のどこかに維持されていたはずで、それを入手した小保方が、「できました」と言って若山氏に渡したというわけだ。129系のSTAP細胞が存在しないということは、STAP細胞そのものが存在しないことを意味しているだろう。
そういう情報が即座にUCSFデーヴィス校に伝わり、12時間もしないうちに、ノフラー博士がブログに事件の総括記事を掲載する。今回、ネットでの協力に基づく「集合知」が形成される過程について驚いたが、言葉の壁を超えた海外との提携にも驚嘆する。
以下、「STAP細胞騒動の真実:バイオの3つの罠」と題する彼のコメント要約。
http://www.ipscell.com/
STAP細胞騒動の真実:バイオの3つの罠
<STAP細胞の実在を信じるという意見はとんと聞かぬようになった。信じぬ人の多くは「本当は何があったんだ?」と問うてくる。
STAP細胞が本物である可能性はないとはいえないが、それはケンタッキー・ダービーで3本脚の馬が優勝する確率に、有り金全部を賭けるようなものだろう。STAP細胞の実在性云々よりも、これを報じた論文とそれが含むデータは、比較的容易に避けることができるバイオサイエンス上の、悪魔的な問題に由来するという事実を、私は信じる。
STAP細胞の最初の問題は、「自家蛍光」だ。
細胞に「ストレスを与える」ということは、細胞の多くを殺すということだ。死にゆく細胞は自家蛍光を発するものだが、未熟な研究者がこれを幹細胞遺伝子の発現による特異蛍光と誤認することはありえる。
第二の問題は、細胞の取り違え/汚染だ。私が研究者としてスタートした1990年頃も今も、細胞培養に際しては、病原菌や他の細胞による汚染に極度に注意する必要がある。特にマウスES細胞、iPS細胞、がん細胞のような増殖能力が高い細胞は、培地さえ適当なら簡単に感染して培養中の細胞を置き換えてしまう
若山博士はこれがSTAP細胞の場合に起こったのではないかと懸念していたが、(日本のNHK報道によると)彼が129系細胞として小保方から渡された細胞は、実際には「F1(129/B6)株とB6株が混合されたもの」だったという。
事実なら、STAP細胞論文にとって「極度に激しい」打撃となろう。
第三の問題は、論文査読者と編集者に予断があった可能性だ。STAP細胞論文は、ネイチャー誌を含め何人かの査読者に読まれ、一度は不採用になっている。著者らはデータを追加し、共著者もより有名な人を集めた。
再投稿された論文は、非常に有名で高く評価されている研究者の名前を共著者に含んでおり、査読者や編集者がこの名前に影響された可能性がある。理想的にいうなら、査読者や編集者は著者が誰かということによってではなく、科学そのものを査読すべきだ。だが、今日の査読方法ではこれが著しく困難であることも現実だ。
要約するなら、これら三つの要因が重なって、「STAP細胞ネイチャー論文」騒動が生じたと考えられる。>
*********************************************************************
私も第二、第三の問題は指摘してきた。死にかけた細胞の自家蛍光は自分で観察した経験がないが、老化した細胞にリポフスチンという色素が溜まることからみると、そうだろうと思う。基本的に3点に同感する。査読員は原稿の1頁(投稿者の名前と所属)を隠して論文を査読しないといけない。(私が査読委員をしていた頃のある日本の専門誌はそうなっていた。)
世界が本当に小さくなってきたと思う。物理的世界ではない。時間距離の上での世界だ。
「STAP細胞の入れ替わり」について、3/25(火)19:00のNHKニュースは見損ねたが、3/26(水)朝になって例のUCデーヴィス校ノフラー博士のブログを訪れたら、NHKニュースからの画像が引用され、「STAP細胞」騒動が要領よく総括してあった。
(Dr. Knoeplerのブログから:NHKの画面)
若山照彦氏は理研にいた当時、小保方の方法では何度やっても「STAP細胞」ができず、山梨に転勤する直前に「129系統マウス」を小保方に渡し、「STAP細胞作ってくれるように」依頼した。その時に「できました」と小保方晴子から2株の「STAP幹細胞」を渡された。それを用いて若山氏がキメラマウスを作ったら、どちらも美事にできたので、彼はすっかり「STAP細胞」の存在を信じた。
疑惑が浮上して、山梨大に持ってきていた「STAP幹細胞」2株の凍結保存材料を調べたら、129系とは異なるB6、F1(これは129/B6の雑種一代の意)という遺伝子系統のマウス遺伝子が検出された。
B6、F1由来のES細胞株はすでに理研のどこかに維持されていたはずで、それを入手した小保方が、「できました」と言って若山氏に渡したというわけだ。129系のSTAP細胞が存在しないということは、STAP細胞そのものが存在しないことを意味しているだろう。
そういう情報が即座にUCSFデーヴィス校に伝わり、12時間もしないうちに、ノフラー博士がブログに事件の総括記事を掲載する。今回、ネットでの協力に基づく「集合知」が形成される過程について驚いたが、言葉の壁を超えた海外との提携にも驚嘆する。
以下、「STAP細胞騒動の真実:バイオの3つの罠」と題する彼のコメント要約。
http://www.ipscell.com/
STAP細胞騒動の真実:バイオの3つの罠
<STAP細胞の実在を信じるという意見はとんと聞かぬようになった。信じぬ人の多くは「本当は何があったんだ?」と問うてくる。
STAP細胞が本物である可能性はないとはいえないが、それはケンタッキー・ダービーで3本脚の馬が優勝する確率に、有り金全部を賭けるようなものだろう。STAP細胞の実在性云々よりも、これを報じた論文とそれが含むデータは、比較的容易に避けることができるバイオサイエンス上の、悪魔的な問題に由来するという事実を、私は信じる。
STAP細胞の最初の問題は、「自家蛍光」だ。
細胞に「ストレスを与える」ということは、細胞の多くを殺すということだ。死にゆく細胞は自家蛍光を発するものだが、未熟な研究者がこれを幹細胞遺伝子の発現による特異蛍光と誤認することはありえる。
第二の問題は、細胞の取り違え/汚染だ。私が研究者としてスタートした1990年頃も今も、細胞培養に際しては、病原菌や他の細胞による汚染に極度に注意する必要がある。特にマウスES細胞、iPS細胞、がん細胞のような増殖能力が高い細胞は、培地さえ適当なら簡単に感染して培養中の細胞を置き換えてしまう
若山博士はこれがSTAP細胞の場合に起こったのではないかと懸念していたが、(日本のNHK報道によると)彼が129系細胞として小保方から渡された細胞は、実際には「F1(129/B6)株とB6株が混合されたもの」だったという。
事実なら、STAP細胞論文にとって「極度に激しい」打撃となろう。
第三の問題は、論文査読者と編集者に予断があった可能性だ。STAP細胞論文は、ネイチャー誌を含め何人かの査読者に読まれ、一度は不採用になっている。著者らはデータを追加し、共著者もより有名な人を集めた。
再投稿された論文は、非常に有名で高く評価されている研究者の名前を共著者に含んでおり、査読者や編集者がこの名前に影響された可能性がある。理想的にいうなら、査読者や編集者は著者が誰かということによってではなく、科学そのものを査読すべきだ。だが、今日の査読方法ではこれが著しく困難であることも現実だ。
要約するなら、これら三つの要因が重なって、「STAP細胞ネイチャー論文」騒動が生じたと考えられる。>
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私も第二、第三の問題は指摘してきた。死にかけた細胞の自家蛍光は自分で観察した経験がないが、老化した細胞にリポフスチンという色素が溜まることからみると、そうだろうと思う。基本的に3点に同感する。査読員は原稿の1頁(投稿者の名前と所属)を隠して論文を査読しないといけない。(私が査読委員をしていた頃のある日本の専門誌はそうなっていた。)