【書き込みを読んで4/9】
武田ブログの【一億総白痴化】という記事への書き込みが50件近くに達している。
<Unknown (Unknown)=2016-04-08 20:22
お遊びはこれくらいにして、難波先生にクローンについてのお考えを聞きましょう。>
「クローン」について、私の意見を求めるなど「権威主義」の一種だと思う。私は別に専門家ではなく、「常識」を述べているにすぎない。
「クローン」という言葉が「植物の株分け」を意味すること、世界で最初に「クローン・カエル」を作成したのは、広島大学両生類研究施設の川村智次郎教授であることなどは、拙著「覚悟としての死生学」(文春新書,2004)のpp.42-73、「クローン人間を認めるべきか」に詳しく解説・議論してある。
http://www.amazon.co.jp/%E8%A6%9A%E6%82%9F%E3%81%A8%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%AE%E6%AD%BB%E7%94%9F%E5%AD%A6-%E6%96%87%E6%98%A5%E6%96%B0%E6%9B%B8-%E9%9B%A3%E6%B3%A2-%E7%B4%98%E4%BA%8C/dp/4166603809/ref=asap_bc?ie=UTF8
川村名誉教授(元広島大学長)は、もし生きていたら英国のガードン、日本の山中伸弥と並んでノーベル賞を共同受賞したはずだ。まずこの本を読んでほしい。
現在のバイオ技術の基本的な問題は、実は19世紀末から20世紀前半にすでに提起されている。誰でも読め、読んでおくべき古典2冊を紹介する
①H.G.ウェルズ(橋本槇矩・鈴木万里訳)「モロー博士の島・他九篇」(岩波文庫,1993/11, \600, 365頁)=原作は1896年の刊行(英語) (写真1参照)
②A. ハックスリー(松村達雄訳)「すばらしい新世界」(講談社文庫, 1974/11, \619 ,315頁)=原作は1932年刊(英語)
「モロー博士」は明らかにロンドンの解剖学者・外科医ジョン・ハンターをモデルとしており、ウェルズはダーウィンの進化論や人類起源論を読み込んで、これを書いた。南海の孤島に移住して、手術によって動物から人間を創出する実験に取り組むマッド・サイエンティストの悲劇を描いている。映画「ジュラシック・パーク」も発想をこの作品から得ている。ウェルズの小説では、ダーウィンの友人T.H.ハックスリーの指導下に、ロンドンで生物学の研究をしたブレンディックが、物語の語り手になっている。ウェルズがシェリーの「フランケンシュタイン」を意識してこの作品を書いたことは間違いないだろう。
「すばらしい新世界」は、そのハックスレーの孫オルダスが書いたSF小説で、人工的にクローン人間の作製により、「性と生殖」が完全に分離された未来社会を描いている。従来方式の「妊娠・分娩」で生まれる人間は「野蛮人(サベッジ)」と呼ばれ、北アメリカ大陸の未開地帯にしか生存していない。この本では「ボカノフスキー法」という「少子化対策」の究極の方法が述べられている。1個の受精卵から96人の一卵性クローン人間を人工的に作製する方法だ。
オルダスの兄ジュリアンも著名な生物学者で、
③ジュリアン・ハクスリー(長野敬・鈴木善次訳)「進化とはなにか:20億年の謎を探る」(講談社ブルーバックス, 1968/5, \280, 273頁)などの著書がある。
なかでも「ジュリアン・ハックスリー自伝(上・下)」(みすず書房, 1973/11、原著1970年刊、英語)を読めば、綺羅星のごとき人物交遊があったことがわかる。初代UNESCO事務局長に選出された人物だ(1946/12)。もちろんH.G.ウェルズとの交流も書かれている。
A.ウェゲナーの「大陸移動説」も正当に評価されている。1982年に広島大学の教授に転じた私は、地理学の教授が「プレート移動説」を知らないのに仰天した。当時の日本の地球物理学はその程度のレベルだった。東日本大震災が起き、福島原発事故が発生するのは当たり前だ。プレート・テクトニクスに無知な学者たちが「安全」というお墨付きを与えたからだ。
(小松左京のベストセラー「日本沈没」光文社、1973/3、はアメリカの雑誌「サイエンティフック・アメリカン」の記事を参照にして書かれた。よって日本では、地震学者より先に一般市民がウェゲナーの大陸移動説を理解するという珍現象が起こった。福島第一原発の1号機の設置許可申請は1966/7、営業開始は1971/3である。)(「完全読本・さよなら小松左京」, 徳間書店, 2011/11)。
惜しむらくはこの本は、訳者の力量が著者のそれにマッチしていないので、誤訳だらけであることだ。みすずには文庫がないので、「講談社学術文庫」あたりが、改訳再版してくれることを期待したい。
生物学の本なんて読んでも面白くもないから、まず天才文学者による上記2書をお読みになり、「クローン」の概念を理解されることをお奨めする。
情報は溢れかえっている。重要なのは取捨選択し、おのれのものとする「思考力」だ。
武田ブログの【一億総白痴化】という記事への書き込みが50件近くに達している。
<Unknown (Unknown)=2016-04-08 20:22
お遊びはこれくらいにして、難波先生にクローンについてのお考えを聞きましょう。>
「クローン」について、私の意見を求めるなど「権威主義」の一種だと思う。私は別に専門家ではなく、「常識」を述べているにすぎない。
「クローン」という言葉が「植物の株分け」を意味すること、世界で最初に「クローン・カエル」を作成したのは、広島大学両生類研究施設の川村智次郎教授であることなどは、拙著「覚悟としての死生学」(文春新書,2004)のpp.42-73、「クローン人間を認めるべきか」に詳しく解説・議論してある。
http://www.amazon.co.jp/%E8%A6%9A%E6%82%9F%E3%81%A8%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%AE%E6%AD%BB%E7%94%9F%E5%AD%A6-%E6%96%87%E6%98%A5%E6%96%B0%E6%9B%B8-%E9%9B%A3%E6%B3%A2-%E7%B4%98%E4%BA%8C/dp/4166603809/ref=asap_bc?ie=UTF8
川村名誉教授(元広島大学長)は、もし生きていたら英国のガードン、日本の山中伸弥と並んでノーベル賞を共同受賞したはずだ。まずこの本を読んでほしい。
現在のバイオ技術の基本的な問題は、実は19世紀末から20世紀前半にすでに提起されている。誰でも読め、読んでおくべき古典2冊を紹介する
①H.G.ウェルズ(橋本槇矩・鈴木万里訳)「モロー博士の島・他九篇」(岩波文庫,1993/11, \600, 365頁)=原作は1896年の刊行(英語) (写真1参照)
②A. ハックスリー(松村達雄訳)「すばらしい新世界」(講談社文庫, 1974/11, \619 ,315頁)=原作は1932年刊(英語)
「モロー博士」は明らかにロンドンの解剖学者・外科医ジョン・ハンターをモデルとしており、ウェルズはダーウィンの進化論や人類起源論を読み込んで、これを書いた。南海の孤島に移住して、手術によって動物から人間を創出する実験に取り組むマッド・サイエンティストの悲劇を描いている。映画「ジュラシック・パーク」も発想をこの作品から得ている。ウェルズの小説では、ダーウィンの友人T.H.ハックスリーの指導下に、ロンドンで生物学の研究をしたブレンディックが、物語の語り手になっている。ウェルズがシェリーの「フランケンシュタイン」を意識してこの作品を書いたことは間違いないだろう。
「すばらしい新世界」は、そのハックスレーの孫オルダスが書いたSF小説で、人工的にクローン人間の作製により、「性と生殖」が完全に分離された未来社会を描いている。従来方式の「妊娠・分娩」で生まれる人間は「野蛮人(サベッジ)」と呼ばれ、北アメリカ大陸の未開地帯にしか生存していない。この本では「ボカノフスキー法」という「少子化対策」の究極の方法が述べられている。1個の受精卵から96人の一卵性クローン人間を人工的に作製する方法だ。
オルダスの兄ジュリアンも著名な生物学者で、
③ジュリアン・ハクスリー(長野敬・鈴木善次訳)「進化とはなにか:20億年の謎を探る」(講談社ブルーバックス, 1968/5, \280, 273頁)などの著書がある。
なかでも「ジュリアン・ハックスリー自伝(上・下)」(みすず書房, 1973/11、原著1970年刊、英語)を読めば、綺羅星のごとき人物交遊があったことがわかる。初代UNESCO事務局長に選出された人物だ(1946/12)。もちろんH.G.ウェルズとの交流も書かれている。
A.ウェゲナーの「大陸移動説」も正当に評価されている。1982年に広島大学の教授に転じた私は、地理学の教授が「プレート移動説」を知らないのに仰天した。当時の日本の地球物理学はその程度のレベルだった。東日本大震災が起き、福島原発事故が発生するのは当たり前だ。プレート・テクトニクスに無知な学者たちが「安全」というお墨付きを与えたからだ。
(小松左京のベストセラー「日本沈没」光文社、1973/3、はアメリカの雑誌「サイエンティフック・アメリカン」の記事を参照にして書かれた。よって日本では、地震学者より先に一般市民がウェゲナーの大陸移動説を理解するという珍現象が起こった。福島第一原発の1号機の設置許可申請は1966/7、営業開始は1971/3である。)(「完全読本・さよなら小松左京」, 徳間書店, 2011/11)。
惜しむらくはこの本は、訳者の力量が著者のそれにマッチしていないので、誤訳だらけであることだ。みすずには文庫がないので、「講談社学術文庫」あたりが、改訳再版してくれることを期待したい。
生物学の本なんて読んでも面白くもないから、まず天才文学者による上記2書をお読みになり、「クローン」の概念を理解されることをお奨めする。
情報は溢れかえっている。重要なのは取捨選択し、おのれのものとする「思考力」だ。
「クローン」 という言葉の意味を再考いたします。
しかし、「プレート・テクトニクスに無知な学者たちが「安全」というお墨付きを与えたからだ。」は間違いだろう。普通の学者はウェゲナーは常識として知っている。