【書評など】エフロブ「買いたい新書」の書評に、No. 194:本川達雄「生物学的文明論」, 新潮新書をとりあげました。
http://www.frob.co.jp/kaitaishinsho/book_review.php?id=1385615148
1992年に出た『ゾウの時間 ネズミの時間』(中公新書)は、ポピュラー・サイエンス本としては記録的大ベストセラーになり、今も69版というロングセラーになっています。
ユニークな現代文明論だ。著者は1948年生まれの「団塊の世代」で東大理学部動物学科を卒業した後, 長らく東工大で一般教養としての生物学を教えてきた。専門は動物の生理学だが, 教養的教育は総論的知識がないとできない。
日本人でユニークな時間論を提唱した人物が二人いる。ひとりは理論物理学者の渡辺慧(わたなべさとし)で, 戦後アメリカに渡り活躍した。名著『時』(河出書房新社,1974)で知られる。渡辺の時間論は「エントロピーの増大」, つまり熱力学第二法則の解釈を基盤としている。
もう一人が「生物学的時間論」を唱えた本書の本川達雄(もとかわたつお)だ。同じ哺乳類でも, 体重1.5グラムで世界最小のトガリネズミと体重12トンで世界最大の陸生哺乳類アフリカゾウでは, 重さに1,000万倍の差があるが 「心臓が15億回拍動すると死ぬ」という共通性があり, ネズミの短命は心拍数が多いこと, ゾウの長寿は心拍数が少ないことと関係している。しかし, これらの動物が主体的に経験する「時間」の長さは同じである, と『ゾウの時間…』で主張した。
本書は一種の「文明論」でもある。恒温動物の人間は周囲の環境を操作して, 夜と昼の差をなくし, 気温を一定に保つ「恒環境動物」になるとともに, エネルギーを大量消費して高速に空間移動する「超高速時間」動物に変化したと指摘する。この両方を合わせた「時間環境」問題を考える必要があると問題提起する。一神教の時間は直線的だが生物の時間は「回る」とか, 生物としてのヒトの寿命はほぼ40歳で, 縄文時代からあまり変わらないが, 今は医学を含め科学技術の進歩により, ヒトが「人工生命体」になっていて, それが高齢化社会の人間であるとか, 生物の利己主義の中には「子孫と彼らのための環境保持」が含まれるのに, 自己保存に関心が薄れたのが「少子化」の原因だとか, 卓抜な文明批評が散りばめられている。
2)岩国市にお住まいの内科医渡辺晋(筆名=天瀬裕幸)先生から雑誌「イマジニア」復刊第8号のご恵送をいただきました。ありがとうございました。
かつて「瀬戸内SF同好会」という倶楽部があり、その会誌が7号で休刊になっていたのが、この度、新たに発行されたようです。奥さまの渡辺玲子さん(広島ペンクラブ会員)が、編集協力に加わっておられます。
中国新聞編集委員の冨沢佐一さん(広島ペンクラブ会員)が「哲学・宗教・科学・そして、SF」という壮大な評論を載せておられ、興味深く拝見しました。奇しくも、今回 3.で取り上げた「般若心経」中の、「色即是空 空即是色」の科学的意味と「私とは何か」が論じられています。
渡辺先生は、天瀬裕幸・渡辺玲子:『カラスなぜ啼く、なぜ集う:探偵作家俱楽部 渡辺啓助会長のSF的生涯』(文芸社) を上梓されました。渡辺啓助というSF作家を私は知らなかったのですが、WIKIには載っています。http://ja.wikipedia.org/wiki/渡辺啓助
佐藤一斎「言志四録」にいう「老いてますます盛ん、死すとも朽ちず」というのは、天瀬裕幸のような人をいうのでしょうね。感服です。
PRを兼ねて紹介しました。
http://www.frob.co.jp/kaitaishinsho/book_review.php?id=1385615148
1992年に出た『ゾウの時間 ネズミの時間』(中公新書)は、ポピュラー・サイエンス本としては記録的大ベストセラーになり、今も69版というロングセラーになっています。
ユニークな現代文明論だ。著者は1948年生まれの「団塊の世代」で東大理学部動物学科を卒業した後, 長らく東工大で一般教養としての生物学を教えてきた。専門は動物の生理学だが, 教養的教育は総論的知識がないとできない。
日本人でユニークな時間論を提唱した人物が二人いる。ひとりは理論物理学者の渡辺慧(わたなべさとし)で, 戦後アメリカに渡り活躍した。名著『時』(河出書房新社,1974)で知られる。渡辺の時間論は「エントロピーの増大」, つまり熱力学第二法則の解釈を基盤としている。
もう一人が「生物学的時間論」を唱えた本書の本川達雄(もとかわたつお)だ。同じ哺乳類でも, 体重1.5グラムで世界最小のトガリネズミと体重12トンで世界最大の陸生哺乳類アフリカゾウでは, 重さに1,000万倍の差があるが 「心臓が15億回拍動すると死ぬ」という共通性があり, ネズミの短命は心拍数が多いこと, ゾウの長寿は心拍数が少ないことと関係している。しかし, これらの動物が主体的に経験する「時間」の長さは同じである, と『ゾウの時間…』で主張した。
本書は一種の「文明論」でもある。恒温動物の人間は周囲の環境を操作して, 夜と昼の差をなくし, 気温を一定に保つ「恒環境動物」になるとともに, エネルギーを大量消費して高速に空間移動する「超高速時間」動物に変化したと指摘する。この両方を合わせた「時間環境」問題を考える必要があると問題提起する。一神教の時間は直線的だが生物の時間は「回る」とか, 生物としてのヒトの寿命はほぼ40歳で, 縄文時代からあまり変わらないが, 今は医学を含め科学技術の進歩により, ヒトが「人工生命体」になっていて, それが高齢化社会の人間であるとか, 生物の利己主義の中には「子孫と彼らのための環境保持」が含まれるのに, 自己保存に関心が薄れたのが「少子化」の原因だとか, 卓抜な文明批評が散りばめられている。
2)岩国市にお住まいの内科医渡辺晋(筆名=天瀬裕幸)先生から雑誌「イマジニア」復刊第8号のご恵送をいただきました。ありがとうございました。
かつて「瀬戸内SF同好会」という倶楽部があり、その会誌が7号で休刊になっていたのが、この度、新たに発行されたようです。奥さまの渡辺玲子さん(広島ペンクラブ会員)が、編集協力に加わっておられます。
中国新聞編集委員の冨沢佐一さん(広島ペンクラブ会員)が「哲学・宗教・科学・そして、SF」という壮大な評論を載せておられ、興味深く拝見しました。奇しくも、今回 3.で取り上げた「般若心経」中の、「色即是空 空即是色」の科学的意味と「私とは何か」が論じられています。
渡辺先生は、天瀬裕幸・渡辺玲子:『カラスなぜ啼く、なぜ集う:探偵作家俱楽部 渡辺啓助会長のSF的生涯』(文芸社) を上梓されました。渡辺啓助というSF作家を私は知らなかったのですが、WIKIには載っています。http://ja.wikipedia.org/wiki/渡辺啓助
佐藤一斎「言志四録」にいう「老いてますます盛ん、死すとも朽ちず」というのは、天瀬裕幸のような人をいうのでしょうね。感服です。
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