ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【書評など】中野剛志「世界を戦争に導くグローバリズム」難波先生より

2015-02-23 12:10:03 | 難波紘二先生
【書評など】
 1)エフロブ「買いたい新書」の書評No.257に中野剛志「世界を戦争に導くグローバリズム」を取りあげました。
http://www.frob.co.jp/kaitaishinsho/book_review.php?id=1423725585
 著者の前作は「TPP亡国論(集英社新書, 2011)であり、常に最先端の問題について発言する気鋭の論客だ。1971年生まれで、東大教養学部で国際関係論を専攻している。この学部の国際関係論といえば保守派論客の西部邁(すすむ)が有名だ。著者は西部の『福沢諭吉』(中公文庫, 2013)の解説を担当しており、西部ゼミの出身者でもある。これで、著者の立場や考え方におよその検討がつくであろう。
 グローバリズムはIT革命と結びつき、世界各国・各地のニュース・情報をリアルタイムで一体化し、資本移動・金融の自由化をもたらした。インドや東アジア諸国の急速な経済的台頭は、グローバリズムの産物だ。だが、政治社会組織が民主主義的でない諸国(中国・中東諸国・東欧・アフリカなど)では一部の特権階層に富が集中し、経済格差が拡大し、グローバリズムの弊害が目立ってきている。
 いま世界各地で、局地戦争ともいうべき紛争が多発している。著者は、これを冷戦終結後の唯一の世界大国アメリカの「一極支配」が失敗したためであり、思想としてのグローバリズムの核となっていた「理想主義」の失敗である、と解釈する。理想を掲げて現実世界を見るのではなく、複雑な現実状況を認識・理解してそれに対処する「リアル・ポリティクス(現実主義)」に立ち戻らないと、中国・ロシアなどの覇権国が後押しした世界戦争が起きる可能性がある。 
 従って、アメリカ=日本という同盟軸を中心に構築され、戦後70年に亘り持続した日本の安全保障政策は、もはや世界規模での動乱状態への有効性を失っており、全面的に見直す必要がある。必要なのは「戦後レジーム」の終焉ではなく、それがとっくに終わっていることの認識である、と説く立場は安倍首相よりも右寄りだが、十分な資料と論理にもとづくその意見は傾聴に値する。
2)雑誌「医歯薬経済」2/15号のご恵送を受けた。お礼申し上げます。
 本号では鍛冶孝雄「読む医療:直木賞受賞後に量産された医療小説」と題して札幌医大の整形外科医だった渡辺淳一が1970年に、寺内正毅(軍人、首相)をモデルとした「光と影」により直木賞を受賞した後、彼の医療小説が多数書かれた事実を指摘している。小説の注文が急に増えたから、よく知った世界を題材に取らざるを得なかったのかも知れない。これについては渡辺淳一を題材とした評伝の類が出ることに期待したい。
 「新生セルシードの<再生医療>戦略」はSTAP細胞事件の陰の立て役者バイオベンチャー企業「セルシード」社の財務状況をレポートしている。同社の株価は、2010年には1000円前後だったが、2013年に秋には、4,500円という高値をつけ、現在はまた1000円程度に下がっている。この動きと岡野光夫などSTAP事件の陰の黒幕の関連については、医療ジャーナリストNさんが取材中で、総合雑誌がまた詳しく報じるだろう。
 3)冨沢佐一氏(広島ペンクラブ同人、元中国新聞文化部、現客員編集委員)から、『ところで、きょう指揮したのは?:秋山和慶回想録』(アルテスパブリッシング, 2015/2)をご恵送いただいた。ありがとう存じます。
 指揮者の秋山和慶(かずよし)は、昭和16(1941)年1月2日、東京生まれだから、私より6ヶ月年上だ。早生まれなので学年は一級上になる。桐朋学園を卒業し、後に母校の教授にもなった音楽指揮者だ。広島交響楽団の常任指揮者でもあったので、「私の履歴書」のような回想記を冨沢さんが「中国」に連載するように企画し、それを元にさらに「聞き書き」を重ねてこの一書になったようだ。
 後書きを読むと原稿化と出版に際しては、著者の自宅があるバンクーバーまで出かけたりと、いろいろ苦労があったようだ。出版社「アルテス」というのは、私はあまりなじみがないが、Artesと書くようで、それならラテン語のArs(アートの単数)由来だろう。複数ならArtisとなるが、なんで形容詞化されたartesが語頭に来るのかよくわからない。
 年表・年譜、秋山のCD/DVD作品一覧、参考引用文献一覧、それに索引(事項人名)がきわめて充実している。佐村河内や新垣隆まで載っているのにびっくりした。索引が充実していることで、本の資料価値は増大する。こういう回想録は、後になるほど価値が出て来るものですので、よいお仕事をなさいました。クラシックファンには見逃せない一冊になるだろう。
 4)「週刊ポスト」の小学館から「些少ですが」といって取材協力費の振り込みがあった。お礼申し上げます。
 記者のO氏がSTAP細胞の件で来訪したいというから、「今はメールもスカイプもある。時間と旅費をムダに使うことはない」と質問事項をメールで送ってもらい、それに解答と解説・文献の紹介を行い、再質問にも同様に対処した。
 あいにく、掲載予定号には「安倍首相の主治医、がん専門医に交代」というトップ記事が入り私の解説した記事は載らなかったが、義理堅いと思う。
 これに比べると「季刊邪馬台国」の梓書院(博多市)はどうなっているのかと思う。「12月9日締め切りで900字の書評2本」を注文しておきながら、届いた2015年1月号の封筒には編集者の礼状も同封されていない。まして原稿料のことなど音沙汰もない。これは「同人誌」か?
 この前の中国経産局での講演では、末弘厳太郎『嘘の効用(上)』(冨山房百科文庫)に収められている「役人学三則」のこころを、身をもって味合わせてもらえた。これは「休まず遅れず仕事せず」の出典だ。たった90分の「職員研修講演」で演題は「上手な医者の選び方」という注文だった。これは、スーパーの買い物やレストランでのメニューの選択とは丸きり違う話だが、「まだ先のことだ…」と準備はできると思い引き受けたが、それから延々と事務連絡が来るのに嫌気がさした。1回ですむことを、担当者が「手間暇かけて仕事をつくっている」のである。おまけに講演の後で、「会場でアンケート用紙を回収しているのを見かけましたが、参加者の反応についてその要旨をお知らせくださいませんか、今後の反省材料にしたいので」というメールを送ったが、うんともすんとも返事がない。
 今はテレビ会議もテレビ講義・講演もあり、双方向の会話も可能である。たかが40人程度で、中にはいびきをかいて眠っている人も後の方にいたそうだが、タクシー代も出ないような講演に、わざわざ一日を潰して出かける必要は、私はないと思う。事実、こちらが質問してもまともな返事がなかったし、講演後の質問もでなかった。
 担当者が経理係なので不審に思って聞くと、「福利厚生の経理(共済組合関係)を経理が担当しているので」というので、あきれた。普通はもっと社会常識がある庶務係が担当する。
 役所の経理係は「六ヶ月手形」切って、出入りの業者を泣かせているそうだから、「些少の講演料」も六ヶ月手形で振り込まれるのかもしれないな… (辛辣だと思われたら、バルザック『役人の生理学』講談社学術文庫のご一読をお薦めする。ここには「役人とは生きるために給料を必要とし、自分の職場を離れる自由を持たず、書類作り以外になんの能力もない人間をいう」と定義されている。)
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