ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【阪大寄付講座】難波先生より

2013-07-11 12:08:48 | 難波紘二先生
【阪大寄付講座】2011/5現在、大阪大学には31の寄付講座があることがわかった。
 うち、25が大学院の「医学研究科」にある。私が1963年に医学部に進学したとき、医学部の講座数は基礎が11講座、臨床が11講座だった。だから教授が22名、1学年の学生数が40名だった。
 あの頃の大学医学部の講座よりも多い寄付講座が「医学研究科」にある。(大学院といっても医学部の場合、煙突形で学部の上に乗っかっている。)


 その後、厚生省の医師需要予測により、文部省は 1)各県1医大の新設医大ラッシュ、2)医学部学生定員の増により対応した。広島大の場合、学生定員は一時120名にまで増加し、今は減って100名である。
 学生数増による教育負担の増加に、講座の増設(第三外科、第三内科、麻酔科、救急部、検査部、病理部など)と教員数の増加で対応せざるをえなかった。
 ちょうどバブル期に企業が採用人数を増やしたようなもので、若いうちは助手、講師でもよいが、だんだん年とってくると、処遇が難しくなる。トップの教授にはひとりしかなれないからだ。出て行ってくれればよいが、国家公務員には身分保障があるから罪を犯さないかぎりやめさせることができない。


 こうした窮地の解決策として、大学の「独立行政法人化(独法化)」以後、大学の自由裁量権が増加したことを利用して、「寄付講座の導入」が行われているのではないか、という気がする。何しろ国立大学の時代は、給与はもちろん維持運営経費は教員の身分単価を積算したもの(文系と理系で単価が異なる)が国からの交付金(校費)として支給されていた。このうち大学本部が必要経費を天引きし、学部事務が光熱水道費、事務処理費などの共通経費を天引きしたものが、「研究費」として講座に配分される。この経費は1980年代には教授1人あたり400万円程度だったが、2004年定年退職の年には100万円を切っていた。(これはもう本代にもならない。)


 寄付講座だと、人件費、維持運営費、研究費を寄付してもらえ、「教授」が誕生するから、「教授病」にかかった万年助教授、万年講師を多く抱える大学医学部には、まことに好都合だろう。
 寄付講座の場合、建物を新築ということはまずなく、元いた講座に間借りである。教授だけでスタッフがいる例は少ない。


 大阪大学の例をみると、2002/12月に最初の寄付講座「がんワクチン療法学」がスタートしている。(添付1)
 ところが年間5000万円を寄付していた住友製薬は3年後には撤退し、別の2社が継承している。


 この間2010年に、米国では前立腺がんのがんワクチン「プロベンジ」がFDAにより新薬として承認されているが、日本では未承認だし、日本初で臨床治験中のがんワクチンは中村祐輔氏の「がんペプチドワクチン」しかない。(例の「朝日」の誤報で大騒ぎになった事件。)
 
 高原教授の「先端移植基盤医療学」というのは、何を研究する講座か分からないが、5番目の寄付講座で二期目は3社がジョイントした割には、寄付総額が2億1200万円と減少している。各社の分担金については未詳。来年の12月末が契約終了であることは間違いない。 


 眼鏡用レンズの会社、人工植毛の会社、サプリメントの会社などもあるが、さすが大阪、道修町の製薬会社がほとんどである。


 そうでない寄付講座もある。「阪大微生物研究所」はもともと「微生物病研究会」がつくったもので、ちょうど北里柴三郎の「北里研究所」が民間から東京帝大に移管され、「伝染病研究所」(今の「医科学研究所」)となったのに似ている。「微生物病研究会」の事業部門は各種ワクチンの製造販売をしており、その剰余金を使って「デング熱ワクチン」の研究部門を寄付したと思われる。デング熱は蚊が媒介する出血性の熱病で、インド、東南アジアからニューギニアにかけて分布する。(スンダ大陸の広がりと一致している。)黄熱病や西ナイル熱に似ており、マラリアとは違う病気である。
 病因はウイルスで蚊の撲滅が一番有効だが、いうべくして実行できないので、ワクチンの開発が重要なのである。


 もひとつ、岸本忠三氏は阪大内科の元教授、阪大元学長で、免疫学者である。インターロイキン6(IL-6)を発見し「サイトカイン病」という新しい概念を生みだした偉い科学者だ。http://ja.wikipedia.org/wiki/岸本忠三
 しかし5億円の個人資産があるとは思えないので、「岸本基金」に寄せられたものを代表として寄付されたものであろう。


 東大との比較はやっていないが、ひょっとすると日本で「寄付講座率」が一番高いのが阪大かもしれないと思う。       寄付講座をめぐっては、2005年に広島大学原医硏で元所長の現職教授が北海道の病院理事長から、「寄付講座」と引き換えに医師派遣を依頼され、交渉の過程で収賄を行い逮捕され、起訴後の保釈中に自殺するという事例が発生している。


 「寄付講座」というのは耳障りはよいが、日本では始まったばかりの制度であり、いろいろ問題を抱えている。
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