【訃報】先月に西部邁の死が、今月になって作家石牟礼道子の死が報じられた。
前者の死については「文藝春秋」3月号で、保坂正康と浜崎洋介が「自裁死・西部邁は精神の自立を貫いた」というタイトルで対談をしていて、記事を興味深く読んだ。
保阪は座談中で、西部邁:「友情:ある半チョッパリとの四十五年」(ちくま文庫、2011/5)に触れているが、言及内容から見て、彼が本書をまともに読んだとは思えない。(同書P.33に保坂正康の名前が出てくる。)
保阪と西部が一緒だったのは、「札幌柏中学」の時代で、西部が一級上だった。西部は、高校は「札幌南高校」に進んだので、保阪とは2年しか同じ学校にいなかった。
西部の「友情:ある半チョッパリとの四十五年」(ちくま文庫 、2011/5)を読めば、同じ札幌柏中学(旧制札幌一中)から札幌南高校に進んだ「海野治夫」という、父親が朝鮮人(戦後、戦犯として処刑された)で、日本人の母親が売春婦だった男との、45年にわたる交友体験が仔細に書き込まれていることに、保阪は気づいていたはずだ。
海野は高卒後、八九三になり、覚醒剤中毒をへて「組の事務所」にピストルを撃つという行為をやったあげく「入水自殺」している。本書の後半部は、西部が、海野の死は焼身自殺だったか入水自殺だったかを、執拗に関係者に尋ね廻ることに当てられている。
ここを読めば「咽頭がん」を宣告された西部邁が、当初から「自死」を考えていたのは明瞭だろう。
西部の根底には「俠気(おとこぎ)」があった。「中沢新一助教授採用」問題で、東大教授を辞任したのはその典型だろう。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A5%BF%E9%83%A8%E9%82%81#%E6%9D%B1%E5%A4%A7%E8%BE%9E%E8%81%B7
石牟礼道子については、すでに90歳を超えていると知り、「買いたい新書」書評で代表作「苦海浄土」を取り上げた。生きているうちに間に合ってよかった。
http://www.frob.co.jp/kaitaishinsho/new2.php
小学5年までの学歴と、20歳までに読んだまともな本は1冊だけ(2/12「産経抄」)というから、代表作「苦海浄土」には、谷川雁が主催した「サークル村」の影響が多分にあると見るべきだろう。通りで地の文と水俣病患者の「病理解剖報告書」が、ちぐはぐになっているのが納得できた。
九州では石牟礼の他に、渡辺京二(「逝きし世の面影」、平凡社ライブラリー、2005、「無名の人生」文春新書、2014)が郷土作家として知られている。山口には童門冬二がいる。広島には梶山季之以後に、全国的知名度をもつ作家が出ていないのは残念だ。松本清張のように学歴コンプレックスに悩まされたあげく、小倉から東京に移住した作家など論外だ。
「記事転載は事前に著者の許可が必要です。必ずご連絡いただきますようお願いいたします」
前者の死については「文藝春秋」3月号で、保坂正康と浜崎洋介が「自裁死・西部邁は精神の自立を貫いた」というタイトルで対談をしていて、記事を興味深く読んだ。
保阪は座談中で、西部邁:「友情:ある半チョッパリとの四十五年」(ちくま文庫、2011/5)に触れているが、言及内容から見て、彼が本書をまともに読んだとは思えない。(同書P.33に保坂正康の名前が出てくる。)
保阪と西部が一緒だったのは、「札幌柏中学」の時代で、西部が一級上だった。西部は、高校は「札幌南高校」に進んだので、保阪とは2年しか同じ学校にいなかった。
西部の「友情:ある半チョッパリとの四十五年」(ちくま文庫 、2011/5)を読めば、同じ札幌柏中学(旧制札幌一中)から札幌南高校に進んだ「海野治夫」という、父親が朝鮮人(戦後、戦犯として処刑された)で、日本人の母親が売春婦だった男との、45年にわたる交友体験が仔細に書き込まれていることに、保阪は気づいていたはずだ。
海野は高卒後、八九三になり、覚醒剤中毒をへて「組の事務所」にピストルを撃つという行為をやったあげく「入水自殺」している。本書の後半部は、西部が、海野の死は焼身自殺だったか入水自殺だったかを、執拗に関係者に尋ね廻ることに当てられている。
ここを読めば「咽頭がん」を宣告された西部邁が、当初から「自死」を考えていたのは明瞭だろう。
西部の根底には「俠気(おとこぎ)」があった。「中沢新一助教授採用」問題で、東大教授を辞任したのはその典型だろう。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A5%BF%E9%83%A8%E9%82%81#%E6%9D%B1%E5%A4%A7%E8%BE%9E%E8%81%B7
石牟礼道子については、すでに90歳を超えていると知り、「買いたい新書」書評で代表作「苦海浄土」を取り上げた。生きているうちに間に合ってよかった。
http://www.frob.co.jp/kaitaishinsho/new2.php
小学5年までの学歴と、20歳までに読んだまともな本は1冊だけ(2/12「産経抄」)というから、代表作「苦海浄土」には、谷川雁が主催した「サークル村」の影響が多分にあると見るべきだろう。通りで地の文と水俣病患者の「病理解剖報告書」が、ちぐはぐになっているのが納得できた。
九州では石牟礼の他に、渡辺京二(「逝きし世の面影」、平凡社ライブラリー、2005、「無名の人生」文春新書、2014)が郷土作家として知られている。山口には童門冬二がいる。広島には梶山季之以後に、全国的知名度をもつ作家が出ていないのは残念だ。松本清張のように学歴コンプレックスに悩まされたあげく、小倉から東京に移住した作家など論外だ。
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