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ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【うつからの脱出】難波先生より

2019-03-26 07:57:10 | 難波紘二先生
【うつからの脱出】作家以外にうつ病になった著名人に俳優の竹脇無我、将棋のプロ先崎学がいる(竹脇無我,上島国利・監:「凄絶な生還:うつ病になってよかった 」(マキノ出版)、先崎学「うつ病九段:プロ棋士が将棋を失くした一年間」, 文藝春秋)。
 先崎棋士の場合、発症日と回復日を、ちゃんと憶えているのに驚いた記憶がある。

 今回の私の「うつ」は昨年7月、修復腎移植が「42例の臨床研究と最後の例から9年間の経過追跡」という条件を日本移植学会が付けたと知り、落ち込みが始まった。6月の下旬に娘婿のエドが1ヶ月の休暇をとって、家族4人で帰ってきたのに、私の乗用車を貸し与えたくらいで、孫にも「ジージ」と呼ばれるほどのことは、何もやってやれなかった。
 離人症みたいになって、予約のドタキャンとか無断欠席が続いた。

 快方に向かったのは、1/31付「官報号外19号」とこれを報じた愛媛新聞の記事により、修復腎移植の臨床試験が認められたことを、知ったからである。

 その後は、薄紙を剥ぐように容態が改善し、今年2月初めにはジョークや笑い声も出せるようになった。集中力が回復したのは3月になってからだ。
 今、3月24日の夜は、昭和の歌謡曲や映画音楽の名曲を聴きながら、これを書いている。 
 「音楽が楽しめる」という幸福感にひたっている。配線は自分でやり、PC内臓のスピーカーとソニーの小型ステレオ・スピーカーを接続している。曲により音量を調節する。

 私の場合、不眠症がひどくて持続睡眠剤ベンザリンを2錠では足りず3錠飲み、入眠薬マイスリーを2錠では足りず、3錠飲むこともあった。
 これらの薬理作用と有効血中濃度の持続時間は「向精神薬マニュアル 第2判」(医学書院)で、ちゃんと調べて理解しているが、いずれも「就床前に飲む」と指定してある。だがベンザリン2錠の作用時間は7時間以上あり、眠くて朝起きられない。

 睡眠実験で「入眠時幻覚」が出るとすぐ眠れることは、前に書いた。
そこで入浴中に身体が温まった時点で、裸のまま洗面所に出て、ベンザリン2錠を飲むことにした。作用開始までに1時間はかかるので、それまでは眠くならない。それに自宅の風呂は手すりと背もたれがあるので、浴槽内で溺れる心配はない。
 風呂から出て、入眠薬マイスリー(これは効果が出るまで30分かかる)を飲み、下着をパジャマに着かえる。入れ歯を歯ブラシでこすり洗浄液にいれたあと、主寝室に戻りベッドに横たわり、いま読んでいる馮 驥才(ふう・きさい)「三寸金蓮」(亜紀書房)という、中国天津を舞台にした伝奇小説の挿絵にある中国語の説明文を読んでいると、すぐに眠くなる。
 三寸金蓮とは「纏足(てんそく)」の雅語である。作者の馮 驥才は1942年生まれで、私より一歳若い。作風は日本の荒俣宏に似たところがある。小島勝君が生きていたら喜びそうな本だ。

 読書灯を消し、瞼を閉じると果たして入眠時幻覚が出ている。私の場合、入眠時幻覚は星座のような輝点とか、天井の格子縞として出現する。
 これは網膜が見ているのではなく、大脳の「前頭前野」と呼ばれる部分が活動していて、それを網膜が見ているように感じるだけである。だから「幻覚」と呼ばれる。一種のまぼろしだ。

 高校時代は寮にいたので、5組のYH君(2人部屋だったが、同室したことはない。)から「なんば君は目を開けて眠る」と指摘されたことがある。あれは朝寝坊の私が日光で目を覚ますための癖だったのだ。眼の角膜は絶えず涙液で洗われているので、医学的には別に支障はない。
 それに定住する前の原始時代人は、眼の暗順応を維持するため、半眼を開けて身を護っていたはずだ。半目を開けて眠るのは、遅刻しないための無意識の自衛策だったのだ。昭和32年頃は目覚まし時計もまだなかった。

 薬の服用はほぼ必ず「食後」となっている。今の医療は「一日三食」を前提として服薬を薬剤師が決めている。だが私のように「糖質制限・ケトン食」を実践している患者には、それは適さない。「医薬分業は失敗した」と「医薬経済」誌(月2回刊)にも書いてあるのは、薬剤師が薬学の総論を学んでいないからだろう。

 私は空腹で腹が鳴り始めたら、その日さいしょの食事をする。もちろん日本酒 (福富町・鷹巣山の深層水をつかった「ぶなの雫(しずく)」三原市の酔心酒造) を一合だけ飲む。
 夜は家内の仕事が終わる9時頃に、梅昆布茶とポッカレモンを加えた果実酒用焼酎のカクテルをつくり、飲みながら夕食する。
 曽野綾子「死生論」産経新聞出版社(ネット「買いたい新書」に書評掲載中)
に発展途上国(ことにアフリカ)の子供たちが、空腹のままで寝るのがいかに苦しいか、という話が書いてあるが、幸いにも「糖質制限・ケトン食」のおかげで空腹感にさいなまれることはない。

 睡眠も3REM睡眠(6時間)で充分だとわかった。先日は書評などのため徹夜をし、夜昼逆転するのを防ぐため、一日半ぶっつづけに仕事をしたが、ちゃんとできた。つまり糖質エネルギーは枯渇しても、ケトン体エネルギーは持続するのである。肉食のライオンが昼間、獲物にありつけなくても、翌日も狩りができるのと同じことだ。

 双極性障害(旧・躁うつ病)の本質はストレスによる「感情障害」である。馬屋原宏先生から
 ルイス・ウォルパート (Lewis Wolpert(1929-)白上純一訳「ヒトはなぜうつ病になるのか:世界的発生学者のうつ病体験」(ミネルヴァ書房,2018/12、定価3000円、ソフトカバー, 356頁) を頂いたが、これは名著である。

 ウォルパートは世界的に有名な発生生物学者で、50歳で王立科学アカデミー会員に選ばれている。その彼が5度にわたるうつ病の発作を繰り返しており、それがこの原題「Malignant Sadness(悪性の悲しみ)」という本を執筆する動機になったようだ。
 この本には、入眠の手段としてヒツジの数を数える方法以外に、著者が考案した面白い方法がいくつか書いてある。これも早速に実験してみたい。睡眠薬の減量になれば御(おん)の字だ。

(無断転載禁止)
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