ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【渡航心臓移植】難波先生より

2014-05-01 16:25:27 | 難波紘二先生
【渡航心臓移植】
 4/23の産経が「拡張型心筋症を病む10歳の少女が、募金2億円を達成し、米NY市のコロンビア大学病院で心移植手術待ちのため渡米する」という記事を報じた。
 http://sankei.jp.msn.com/west/west_life/news/140422/wlf14042219280022-n1.htm
 途方もない額の費用だ。このお金の大半は大学に寄付されるのだから、一種の「臓器売買」であることは、製薬会社の奨学寄付金が「見返り」であるのと同様だろう。
 こうなるのは日本の移植医療が不備なためだ。
 
 記事を読んで驚いたのは、夫婦にはこれまで4人の子供が出来たが、女2人、男1人が同じ病気で亡くなっており、10歳まで生きたこの少女が唯一の生存児だということだ。これは遺伝病で、男女とも発症しているから「常染色体」に欠陥遺伝子があり、4人とも発症しているから優性遺伝子によるものだ。
 比較的最近の病理学教科書を見ると、遺伝子異常による拡張型心筋症で、常染色体性優性遺伝するものに、脂肪酸のβ酸化異常によるものと、欠陥ミトコンドリアによる酸化的燐酸化の異常によるものとがあり、後者は幼児期に発症すると説明されている。
 この子の場合は、恐らく後者であろう。
 もしそうなら、心臓だけでなく全身の細胞に機能不全があることになり、残念ながら移植をしても健康な身体にはならないだろうと思う。

 昔、「神聖喜劇」を書いた作家大西巨人の長男が血友病で、続いて次男も血友病だったときに、渡辺昇一が「読売」紙上で「生むべきでなかった」と批判し、優生学論争が起こったことがある。基本的には親が決めるべき問題で、社会が容喙すると優生学になるデリケートな問題だ。
 生むべきかどうか一番迷ったのは親であろうと思いたい。ただ、全身性の遺伝子異常だったら、根本的治療法はなく(将来は可能になるかも知れない)、子供が可哀想だ。ダウン症の子をもつ親の最大の悩みは、自分たちの死後に子供がどうなるか、ということだという。

 出生前遺伝子診断や代理出産など、広義の生殖医療をもっと一般に普及することが重要だろう。ただ、初期の優生学がおかした人権侵害などの過ちは、二度と繰り返してはならない。
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2 コメント

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Unknown (Dr.CKD)
2014-05-10 23:48:12
>残念ながら移植をしても健康な身体にはならないだろうと思う。

優性遺伝するCMの原因遺伝子は心筋サルコメア関連蛋白である事が少なくないと思います。

ご家族にとっても、寄付金を集めておられる方がたも藁をもすがる思いのはず。

あなたも業界の人間ならば、最近の知見を原著論文で確認する努力もせず、教科書をちょこっとみただけでの、こういった軽率な発言は今後控えて欲しいと願っています。

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医師の本質 (あきれたDr.CKD )
2014-05-26 07:56:02
このブログをみて、感じたことの1つ。それはこのDr.CKD なるものが、まともな専門家から見れば、いかに未熟で若い人物であるかということである。書き込み様をみてもまるで喧嘩を売っているようで、明らかに嫌がらせと察せられる。この人物は他のブログでも同じような書き込みをしている。このような愚かなことをしている暇があったら、患者さんのそばにいて、医療の本質を学ばれるように、願いたい。そうでないと国民の血税を使わせて頂いて、学ばせて頂いた皆様に申し開きができない。
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