ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【メタフィクション?】難波先生より

2015-04-21 15:15:18 | 修復腎移植
【メタフィクション?】
 日経の連載小説「禁断のスカルペル」4/6(第265回)から、東日本大震災から一挙に3年後に飛び、2014年春となり、最終章も近いと思わせる「三年後」という章が始まった。
 執筆開始前の「あらすじ」では、「病腎移植」を推進していた「伊達湊病院」泌尿器科の陸奥が大津波で死亡し、残された弟子の女医東子(はるこ)が、病腎移植に取り組むというものだった。
 だが実際には、東子の不倫相手で、患者訴訟で被告になっている厚生技官の医師、川渕允彦が大津波で死亡、陸奥は生きて被災者救援を陣頭指揮、被災が軽かった伊達湊病院はその中枢機能を果たしたという設定になった。
 その後、陸奥は「泌尿器科部長をやめ、ひらの医師として医療に取り組みたい」と言いだし、東子が後任の部長として伊達湊病院に戻るという展開になった。

ここまでは、「病腎移植の発案者で、推進者である陸奥医師を殺さないで!」という読者のつよい要望が、作者を動かしたものとして理解できる。連載小説のあらすじは、あらかじめ公表されたものではないから、変更はちっとも構わないと思う。むしろ読者の関心を高めるには、そういう変更の技法も必要だろう。

 「あれ?」と思ったのは4/11の「三年後(6)」(第270回)からで、2014年の6月、病院の職員住宅3階に住む東子は、まだ夜が明けきらない午前3時半に、妙な夢を見て眼が醒める。もう眠れないと思い、起きて地上階におり散歩を始める。これが実は、「夢の中」という自覚が本人にある、一種の「明晰夢」になっている。
 その夢の中の散歩で、死んだ自分の母親と津波で死んだ川渕允彦が、寄り添うように歩いているのに出くわす。二人とテレパシーで会話を交わす東子。母親の純子は「私たちはこちら側で楽しく暮らしているから」といい、允彦は「きみはそちらの世界でまだすることがあるから、頑張らなくちゃ」という。

 まさかそういう展開になるとは…。これは筒井康隆が『繁栄の昭和』(文藝春秋, 2014/9)で展開して見せたメタフィションの手法ではないか。短編小説とちがい、この長編小説を「夢オチ」で終わらせるわけにいかないから、この夢がヒロイン東子の生き方に影響を与え、それが転機になって、物語全体が結末に向けて収斂して行く、という結構になるのであろう。
 明晰夢では本人が夢を操ることができるが、この明晰夢では夢が本人に働きかけるという点に新味がある。今後の展開にがぜん興味が湧いた…。

その後、「依頼」という章に入り、病気腎移植を学会を代表して禁止した大倉教授が、孫の腎移植、それも「病気腎移植」を東子に依頼してくるというトンでもない展開になった。教授の孫とは別れた岩井拓馬との間に東子がもうけた、絵里香という娘のことである。
 すでに腎不全のため二度も腎移植を受けていて、周囲組織との癒着がひどく、三度目の腎移植ができるのは、陸前会グループしかいないと知っての電話がかかってくる。何と大倉(東子の父親)は、「ドナーには私がなる。孫娘に病腎移植をやってほしい」という。
 さあ、これからどうなるのか…。毎朝、日経の裏面から新聞を読む生活が続きそうだ。
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