ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【コンセント】難波先生より

2013-03-05 12:20:09 | 難波紘二先生
【コンセント】とプラグを「天声人語」が間違えていたという話を、今朝3/4の産経「国語逍遙」が取りあげている。
 私も電源コードの「差し込み」と「差し込み口」の名前をよく混同するので、前に調べたことがある。(もう忘れた。)


 はっきりしているのはプラグ(plug)は英語で、「穴を塞ぐ栓 or 電源コードの差し込み端末」のことだが、「コンセント」は和製英語であるということだ。
 コンセントに相当する英語音にはconcent(名詞)とconsent(名詞, 自動詞)の二つしかない。前者は「音楽の調和、和声」、後者は「同意、同調(する)」を意味する。米語で「差し込み口」に相当する語は「アウトレット(outlet)」である。商業に関しては「店舗、売場」を意味する。どちらも電気または商品の「出口、はけ口」という意味から来ている。


 英国英語では「ロングマン英英辞典」を見ると、「ソケット(socket)」が日本語のコンセントに相当する。アウトレットという英語はあるが、ソケットの同義語としてはなく、「出口、はけ口、店舗」の意味である。このように意味は同じでも、英国と米国でまったく違う言葉がある。例えば、列に並ぶことを米語では「on the line」というが、ラインをこういう意味では英国英語は使わない。「キュー(queue)」というフランス語を使う。元のフランス語の意味は「尻尾、末端」だから、誤用である。


 日本人が英語だと思いこんでいる「マンション」は英国英語では「フラット(flat)」、米語では「アパートメント(apartment)」という。「マンション(mansion)」は一戸建ての豪華な「館」のことである。Apart+mentという綴りから明らかなように、大きな館に寝室、バス・トイレ、キチンを取り付けた複数の部屋を壁で引き離した(apart)ものを「アパートメント」という。英国王室も「ロイヤル・アパートメント」を所有している。


 日本では戦後木造アパートが普及し、低所得層の住宅になったので、「アパート」のイメージが悪くなり、土建会社が1970年代に「コンクリート製高層アパートメント」を区分販売するさいに、「館」を意味するマンションmansionという言葉を使い始めたのである。この語の本来の意味は「土地付の田舎の大きな館」という意味だ。「メゾン(maison)」というのもあるが、これはフランス語で「家、家庭」という意味で、英語のmenor(広い)という意味はふくまれていない。


 三省堂「新明解語源辞典」を見ると、「大正時代にプラグと差し込み口を組にしたものを<コンセントプラグ>と呼び、そのうちのコンセントだけを切り離して<差し込み口>の意味として言ったためと言われる」と書いてある。
 大正時代の新聞か小説に「コンセントプラグ」の使用例があるかどうか、知らない。今後の課題だ。
「Eureka!」という発明発見事典も調べたが、マイナーな発明だから載っていない。ただ英国英語の「ソケット」は「窪み、穴」の意味でeyesocket(眼窩)のように使うから、「電球のソケット」とはいえるが、「プラグのソケット」という使い方は誤用だと思う。


 コンセントの起源に、穴が同心円状(concentric)だったから、という説もある。日本の差し込み口は電圧が100Vなので、アース口がなく二穴だが、欧州は240Vが標準だからプラグは3端末あり、差し込み口もアース用を入れて三穴で、穴は丸く円を描いている。しかし、これはサークルとはいえても「同心円」とはいえないので、この説にも無理がある。産経氏がいうように、今のところ「語源不明」としておくべきだろう。


 ただよく間違えるのは事実で、私は間違えないように「プラグイン」と憶えている。Plug-inはコンピュータ用語で、既存のソフトをアップデートするときにオンラインで必要なファイルにアクセスして、ダウンロードする。このファイルまたは操作をプラグインという。「プラグはイン:インするのはプラグ」と憶えておけば、他方はいわゆるコンセント(アウトレット)になるわけだ。この連想が働けば間違えないですむ。
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