【時鳥どう鳴く? 】
ホトトギスの鳴き声について、私には「(東京)トッキョ、キョカキョク」と聞こえると前回に書いた。すると香川県の石川先生からメールがあり「(香川県の県鳥である)ホトトギスはテッペンカケタカと鳴く」とご指摘があった。「てっぺん欠けたか」と鳴くことは、馬屋原宏先生の著書「日本人の英語」中の「鳥の鳴き声」の項にも書いてある。
あるいは「てっぺん欠けたか」でなくて、「天辺駈けたか」かもしれないが、私の日本語では「駈けたか」だと第一音にアクセントがある(高低アクセントでも強弱アクセントでも構わない)が、そのアクセントが私には聞こえない。フラット・アクセントだから「欠けたか」と理解している。
私の場合、日本の犬猫は「ワンワン」または「ニャオー」と鳴くが、外国に行くと「バウバウ」あるいは「ミャウー」と鳴く。日本語脳から英語脳に切り替わると、動物の鳴き声が英語的に聞こえるようになる。(切り替わるのに1,2日要する。)
私は「あの声でトカゲ食うかやホトトギス」という句を漱石作と間違って憶えていた。
どうも「蕉門十哲」のひとり宝井(榎本)其角の作で、「あの声で蜥蜴食らうか時鳥」が元句らしい。
http://kotowaza-allguide.com/a/anokoedetokage.html
「人は見かけによらない」という意味の引用句として利用されるそうだ。
この句は「とてもトカゲのようなおぞましいものを食うとは思えない、好い声でなくホトトギスなのに」という意味だろうと思う。声と行動の意外な対照性を詠んだ句だろう。
してみると「特許許可局」がない時代にホトトギスが「トッキョ、キョカキョク」と鳴くはずがないのは当然として、江戸中期のホトトギスは「テッペンカケタカ」よりももっと優雅な鳴き方をしていたのではないか、と思う。ところがそれが分からない。
梶島孝雄「資料・日本動物史」を開くと、旧くはホトトギスとカッコウが混同されていたとあり、「古代の和歌でこの鳥(カッコウ/ホトトギス)の鳴き声を詠んだものは一首もない」そうだ。
そうなると鳥の鳴き声は文化的刷り込みにより、同じ鳥でも異なった鳴き声として聞こえるのではないか?という仮説が成立するように思う。
石川先生がお住まいの香川県ではホトトギスが「テッペンカケタカ」と鳴くことはよく分かった。
だが、他の地域ではどう鳴いているのであろうか?ぜひご意見をお寄せいただければと思う。
多くの人は鳥も人間や他の哺乳類と同じように、喉頭にある声帯で声を出していると思っているようだが、鳥類に声帯はない。気管下部で左右の気管支が分岐する直上に「鳴管(Syrinx)」という気管軟骨の外側への小さな箱形突出部があり、この内部に気管上皮が変形した2枚の膜が張っている。この膜の付着部には横紋筋があり、鳥の意思で膜の緊張度を調節できる。
鳥は呼気でこの膜を振動させることにより「鳴く」。膜の緊張が高ければ高い音が、低ければ低い音が出る。問題は唇がなく舌も細い鳥が、基本的には口腔音である母音が出せるかどうかが、鳥の声の「ききなし(オノマトペ)」の根本的なところだと思うが、これについては勉強不足で何ともまだいえない。
〔6/6追記〕ホトトギスと漱石についての記憶ちがいについて:WIKIを検索したら、漱石の句は西園寺公望の招宴に呼ばれた漱石が、出席を辞退した時の断り状に添えた句だった。
「時鳥(ほととぎす)厠(かわや)半(なか)ばに 出かねたり」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9B%E3%83%88%E3%83%88%E3%82%AE%E3%82%B9
私の脳の中でホトトギス ー 俳句 — という連想がここから先、混線して漱石の句につながらず其角の句につながったものだと判明した。
鳥名の起こりや「聞きなし」の例もあげられていた。
<オスの鳴き声はけたたましいような声で、「キョッキョッ キョキョキョキョ!」と聞こえ、「ホ・ト・…・ト・ギ・ス」とも聞こえる。早朝からよく鳴き、夜に鳴くこともある。この鳴き声の聞きなしとして「本尊掛けたか」や「特許許可局」や「テッペンカケタカ」が知られる。>
5種の「聞きなし」例があげられているが、私にはどうしても濁音や半濁音があるようには聞き取れない。とはいえちゃんと「特許許可局」が併記されているのにほっとした。
「記事転載は事前にご連絡いただきますようお願いいたします」
ホトトギスの鳴き声について、私には「(東京)トッキョ、キョカキョク」と聞こえると前回に書いた。すると香川県の石川先生からメールがあり「(香川県の県鳥である)ホトトギスはテッペンカケタカと鳴く」とご指摘があった。「てっぺん欠けたか」と鳴くことは、馬屋原宏先生の著書「日本人の英語」中の「鳥の鳴き声」の項にも書いてある。
あるいは「てっぺん欠けたか」でなくて、「天辺駈けたか」かもしれないが、私の日本語では「駈けたか」だと第一音にアクセントがある(高低アクセントでも強弱アクセントでも構わない)が、そのアクセントが私には聞こえない。フラット・アクセントだから「欠けたか」と理解している。
私の場合、日本の犬猫は「ワンワン」または「ニャオー」と鳴くが、外国に行くと「バウバウ」あるいは「ミャウー」と鳴く。日本語脳から英語脳に切り替わると、動物の鳴き声が英語的に聞こえるようになる。(切り替わるのに1,2日要する。)
私は「あの声でトカゲ食うかやホトトギス」という句を漱石作と間違って憶えていた。
どうも「蕉門十哲」のひとり宝井(榎本)其角の作で、「あの声で蜥蜴食らうか時鳥」が元句らしい。
http://kotowaza-allguide.com/a/anokoedetokage.html
「人は見かけによらない」という意味の引用句として利用されるそうだ。
この句は「とてもトカゲのようなおぞましいものを食うとは思えない、好い声でなくホトトギスなのに」という意味だろうと思う。声と行動の意外な対照性を詠んだ句だろう。
してみると「特許許可局」がない時代にホトトギスが「トッキョ、キョカキョク」と鳴くはずがないのは当然として、江戸中期のホトトギスは「テッペンカケタカ」よりももっと優雅な鳴き方をしていたのではないか、と思う。ところがそれが分からない。
梶島孝雄「資料・日本動物史」を開くと、旧くはホトトギスとカッコウが混同されていたとあり、「古代の和歌でこの鳥(カッコウ/ホトトギス)の鳴き声を詠んだものは一首もない」そうだ。
そうなると鳥の鳴き声は文化的刷り込みにより、同じ鳥でも異なった鳴き声として聞こえるのではないか?という仮説が成立するように思う。
石川先生がお住まいの香川県ではホトトギスが「テッペンカケタカ」と鳴くことはよく分かった。
だが、他の地域ではどう鳴いているのであろうか?ぜひご意見をお寄せいただければと思う。
多くの人は鳥も人間や他の哺乳類と同じように、喉頭にある声帯で声を出していると思っているようだが、鳥類に声帯はない。気管下部で左右の気管支が分岐する直上に「鳴管(Syrinx)」という気管軟骨の外側への小さな箱形突出部があり、この内部に気管上皮が変形した2枚の膜が張っている。この膜の付着部には横紋筋があり、鳥の意思で膜の緊張度を調節できる。
鳥は呼気でこの膜を振動させることにより「鳴く」。膜の緊張が高ければ高い音が、低ければ低い音が出る。問題は唇がなく舌も細い鳥が、基本的には口腔音である母音が出せるかどうかが、鳥の声の「ききなし(オノマトペ)」の根本的なところだと思うが、これについては勉強不足で何ともまだいえない。
〔6/6追記〕ホトトギスと漱石についての記憶ちがいについて:WIKIを検索したら、漱石の句は西園寺公望の招宴に呼ばれた漱石が、出席を辞退した時の断り状に添えた句だった。
「時鳥(ほととぎす)厠(かわや)半(なか)ばに 出かねたり」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9B%E3%83%88%E3%83%88%E3%82%AE%E3%82%B9
私の脳の中でホトトギス ー 俳句 — という連想がここから先、混線して漱石の句につながらず其角の句につながったものだと判明した。
鳥名の起こりや「聞きなし」の例もあげられていた。
<オスの鳴き声はけたたましいような声で、「キョッキョッ キョキョキョキョ!」と聞こえ、「ホ・ト・…・ト・ギ・ス」とも聞こえる。早朝からよく鳴き、夜に鳴くこともある。この鳴き声の聞きなしとして「本尊掛けたか」や「特許許可局」や「テッペンカケタカ」が知られる。>
5種の「聞きなし」例があげられているが、私にはどうしても濁音や半濁音があるようには聞き取れない。とはいえちゃんと「特許許可局」が併記されているのにほっとした。
「記事転載は事前にご連絡いただきますようお願いいたします」
しかし、「顕註密勘」や「異名分類抄」には「過時不熟」と鳴くとあるので、カッコーと混同されている可能性も多いにあるかと思います。
くきら(苦歸樂)、という呼び方もあって、これはホトトギスの鳴き声からできた呼称かも知れません。