小規模運送会社の倒産急増 4月からの「2024年問題」影響か
2024年6月30日
燃料価格の上昇に、残業時間を年960時間に規制する「2024年問題」が加わり、運送業で倒産が急増している。東京商工リサーチによると、5月は前年同月比2・1倍の46社が倒産した。5月としては過去20年間でみると2008年の45件を上回り、過去最多を更新した。燃料価格や人件費の上昇分の価格転嫁が進まなければ、年々配達量が増える物流自体が崩壊しかねない。
倒産した企業を規模別でみると、従業員数10人未満が31件で、小規模事業者が3分の2を占めた。倒産理由は、燃料価格上昇などの「物価高」が11件で最も多かった。ドライバーらの「人手不足」が4件でそのうち、「求人難」と「従業員の退職」がそれぞれ2件だった。
トラックドライバーの残業時間の上限は、4月から年960時間に規制された。この規制による影響は「2024年問題」と言われ、稼働時間の減少からドライバーの収入が減る可能性が高く、人手不足に拍車をかけている。4月にも前年同月比2・1倍の30社が倒産しており、2カ月連続の急増となった。
配送料金への価格転嫁が進まなければ、下請け運送会社は賃金や業務委託の報酬を引き上げられず、しわ寄せは、立場の弱いドライバーに向かってしまう。
神奈川県内で電子商取引(EC)大手アマゾンの2次下請け運送会社から配達業務を受託する軽貨物ドライバーの男性(66)は「1日12時間のありえない労働を課せられている。どこかで倒れて死んじゃいますよ」と嘆く。配達大手の下請け企業などで軽貨物ドライバーをして約30年になる男性(58)も「もう全然割に合わない」と憤る。
運送業界の構造的な問題が解決されなければ、人手不足に歯止めがかからず、日常生活やビジネスの「血管」とも言える物流が滞りかねない。東京商工リサーチは「政府主導による業界慣習の抜本的な改善などが急がれる」と指摘している。【中島昭浩】