旅するくも

『旅が旅であることを終わらせる為の記録』

7世代先(大鹿村レポート)

2011-09-11 17:31:18 | リニア中央新幹線
リニア建設について反対する方達は希少な動物や植生をトンネルを掘る事で
失うとか、自分の村が変わってしまうとか、ストロー現象によって町が栄えるどころか
衰退していくとか、新幹線で充分だという意見だった。

反対する側の意見として、ごもっともな意見だと思う。

それに対して賛成する人は新幹線の線路の老朽化などによる維持費を考えると新たに
線路をひいた方が費用が安くすむなどという、メチャクチャな事まで言われている。

アメリカインディアンから地球に生きる人の世界の見方を僕なりに学んできた視点で
リニアについて意見を言わせてもらうなら、植生や動物、村の変化、などという事よりも
問題はもっと根本的な部分にあると思っている。

そもそも山や河や海や大地は僕らが所有しているものではないというところから始める
べきであって、問題はトンネルを掘る、掘らないのずっと手前のところにある。

ラコタやイロコイの人たちが言う「7世代先の事を考えて今を生きよ」という視点で
考えるのなら、この大地を所有しているのはわれわれではなく、7世代先の子供達である。

日本列島にはかつて「いかに自分が生きてきたという事を大地に残さずに死んでいくのか」
という美の中を生きた人たちが明らかにいた。
そうやって何も残さない生き方で、残されてきた山や大地を自分たちでデザインしようという
発想がうまれること自体、リニアの問題もある意味では手遅れであると思う。

僕は文章や言葉を読めばその人が地に足が着いているか人なのか何てすぐにわかるのだけれど、
大地や山を守ろうと反対している、大切なものを守ろうと人たちの中の意見でさえ、地と足の
距離が遠い。
僕らと大地の間には、そのくらいの距離があるのだという事が今回大鹿を訪ねてよく解った
一番の収穫だった。

リニアについて話を戻すと、既に山梨県側では隠れてリニアのトンネルを掘っている。
このままいけば近い将来、確実にトンネルも掘られ、リニアも開通するだろう。

僕はリニアに反対ではなくて、大地や山に何かを残すことについて反対である。
リニアは奇跡でも起きない限り、工事は止まらないだろうし、はっきり言って僕らは無力かもしれない。

でも、ただでは掘らせないとだけ、ここでは言っておく。

飯田市への影響(大鹿村レポート)

2011-09-05 16:25:17 | リニア中央新幹線
リニアができる事によって飯田市への影響はどのようにあるのだろうか。
現在、リニア中央新幹線が通る各県に一つずつ駅が作られることに決まったようだが、
駅の建設費用をJR東海が支払うのか、受け入れる側が支払うのかで議論されている状態だ。

飯田市では駅ができる事によって町や商店街が発展し栄えるということを夢見ているようだが、
わざわざ都会から飯田市へリニアに乗って来る理由がどこにあるのだろう?
僕も長野にいる時は何度も飯田市へ行ったけれど、正直、そんな魅力は飯田市にはない。
むしろ、飯田でまわっていたお金が駅を通して都会へ流れ、商店街も町も衰退して行く。
実際に駅ができる事によって起きる事は繁栄とは真逆であることは簡単に想像がつく。

そういう事をストロー現象というらしいのだが、駅ができる事によって駅の周辺が
栄えたという前例があるのなら僕は知りたい。

地元にある富士山静岡空港を例でいえば、僕も高校生くらいの頃には空港ができる事によって
自分が住んでいる町がとんでもなく発展するような夢を見ていたけれど、開港された現在、
空港へ向かう道の交通量に変化はなく、空港へ向かうバスの車内はガラガラ。
発展どころか、わざわざ山を潰してできた結果が年間十数億円の赤字、市議会議員が北海道に
遊びに行くのに便利になったくらいだ。

飯田市のお金持ちは山への影響をみこして、今のうちにリニアが通るであろうルートの山を
予測して購入し、山でギャンブルする人までが出てきていると言う。

地域の土木業もトンネル工事で儲けを期待したいところだけれど、実際にシールド工法で掘られる
トンネルに地方の企業ができる事はトンネルを掘ったあとの土砂を運び出すくらいなものだろうと
予想される。

地域への影響(大鹿村レポート)

2011-08-30 21:23:53 | リニア中央新幹線
山をトンネルを掘る事で起こる水とそこで暮らす生き物への影響は前回、僕なりに
まとめた。

まず、地域への影響について上関町祝島を例に書きたいと思う。

ちょうど一年前に、上関原発予定地である田ノ浦の向かいにある祝島に行ったとき、
鎌中監督の映画や人から聞いていたものとは違うものがそこにあったという印象だった。
祝島を案内してくれたのは僕と同じ歳で北海道出身のランボーという人物だった。
(最近、彼女ができたらしい。)
祝島に着いてすぐに話しかけてくる人がいたが、「着いていかない方がいい」と言う
ランボー。
どちらかというと原発賛成派の人だったらしい。
それから祝島という小さな島で会う人、お世話になる人達が原発に対してどういう考えで
「あの人は反対派だけど親は賛成派」などと聞かされ続ける。
海辺で海を眺めているだけで100メートル先からもおばあちゃん達が僕が何者か見ている
ことに気がついた。
というよりは、島に着いた時から監視され続けていたと言った方が正しいと思う。
島自体が原発によって反対と賛成と真っ二つに別れ原発建設にはそこに暮らす人たちの
関係をぶち壊すのに充分な力があった。

「平さんの棚田」というとんでもないサイズの棚田で米を作る平さんも「原発よりもみんなの
関係がこわせれた事が一番悲しい」とおっしゃっていた。

大鹿村でもすでに反対、賛成と意見と同時にそこに暮らす人たちが割れ始めているという
印象だった。
ただ、立場上反対と言えない人や、あえて反対とは言わずに「いらない」とだけ言う人が多く、
リニアによって大鹿村の景色を変えられたくないけれど、人口1000人の大鹿村の人と人が
繋がりあった人間関係も壊されたくないというおもいが、ただ「いらない」という言葉に
含まれていると僕は感じた。

山にトンネルを掘る(大鹿村レポート)

2011-08-29 11:26:12 | リニア中央新幹線
311以降、急速に計画が進んでいるというリニア中央新幹線。
そのリニア中央新幹線が実現すると山にトンネルが掘られることになる長野県大鹿村を
衆議院議員の山崎誠(民主)が見学するとのことで、虔十の会の代表坂田さんに声を
かけてもらい同行したときに感じたことを僕なりの視点でまとめてみようと思う。
といっても、長文になったブログはあまり役にはたたないと思っているので、いくつかに
分けて、ここに載せる事にする。
静岡側ではリニアの事について、ほとんど知らされてなく無知である。
僕もその中の無知の中の一人だ。
僕なりにまとめてはいるが、間違ったものも多くある事が考えられるので、間違った事に
ついてはご指摘願いたい。
なお、今回、山崎衆議院議員は民主党のごたごたで欠席となった。

まず、あまり理解されていないトンネルを掘るという事が山と、生態系にとって、
なにを意味しているのかという事を東京八王子にある高尾山を例にしたいと思う。

日本でもっとも多くの人が登る高尾山は、1321種というイギリス一国分に相当する
植生に昆虫は5000種、(日本三大生息地)野鳥130種にもなり、その生き物を
育んでるものは高尾山の中を通る豊富な命の水である。

その高尾山では圏央道を建設する為にトンネル工事が進められている。
山にトンネルを掘るという事は、ただ削るというものではない。
穴をあければ、圧力が変化し、圧力が低くなったトンネルに水が集中するため、当然そこから
大量の水が溢れ出す。
高尾山では、海底トンネルを掘る方法と同じシールド工法で、セメントミルクを注入し、
固めてから掘る方法がとられた結果、高尾山の小仏川の水は真っ白に濁り、魚、蛍が一度全て
駄目になった。
大鹿の水を含みすぎて地滑りをおこす山では、水を抜く為の排水路が作られているくらいに水が
豊富である。
南アルプスに掘られるトンネルも高尾山を掘るのと同じシールド工法だと考えられている。

5年半かけて半分まで掘られた高尾山トンネルは311以降急速に進み、下り線の残り半分が
半年で掘られ7月末に貫通してしまった。
上り線は8月中に貫通予定。
貫通してからも水は止まることなく、トンネル周辺の排水路からは毎日200トンの命の水から
流れ出ており、すでに沢が二つ枯れている。
トンネル工事が終わったからといって、水が止まるわけではなく、今も流れ続けている。

僕が住んでいた古民家の井戸も第二東名のトンネル工事によって枯れている。
大阪の箕面は観光名所の滝があるけれど、トンネル工事によって滝が枯れた。
今ある滝はポンプアップしたものを上流から流しているものだが、そこに訪れた人は
滝に手を合わせ何かを祈っている。

山にトンネルを掘るという事は水に変化を与え、そこにいる生き物の繋がりを断ち切ることに
なり、山とそこで暮らす生き物を殺すことを意味する。
なにより、トンネルが掘られる南アルプスは 僕の地元である島田市を通る大井川の源流である。