旅するくも

『旅が旅であることを終わらせる為の記録』

SPECTATOR

2012-01-31 01:09:58 | 編集長の本棚



Spectator Vo.24
これからの日本について語ろう

毎号買う雑誌は僕には無いが、今回のSPECTATORは10万字を越え
読み応えもたっぷりで面白かった。
そのなかで特に面白かったのは高城剛(沢尻エリカの元旦那)の
インタビューだ。

『台湾のGDPよりもウォルマートの売り上げの方が大きいでしょ?
アメリカ政府よりもアップルコンピュータの方が現金を持ってる
わけじゃない?ってことは、国家というベースに代わって企業群。
資本主義ではなくて資本家主義というものが出てきたということ。』

『企業が国家を越えていく。政治家より官僚が偉くて、官僚より
東電が偉いみたいな。(中略)そういう状況が、もっと露骨にでてくる。』


これのいい例に、まだ静岡でほとんど知られていない話がある。
ある企業の船が海底数千メートルからレアメタルなどの地下資源を採掘する
ものが計画されている。
「まだ、そんなこと考えてる人がいるのか」と思うかも知れないが、
話はまだ終わらない。
その企業の地下資源を採掘する集会の名簿を先日見せてもらった。
知事、市長、県議会議員、市議会議員の名前がズラリとならんでいる
のをみると高城さんが言っている事に納得せざるをえない。

ラブレターを書くときのように

2012-01-30 12:46:45 | 編集長の本棚
『日本語作文術』~伝わる文章を書くために~
野内良三 著
中公新書

何かに縛られること無く、好き勝手に書くのが好きだということは
このブログを読んでいる人ならわかると思う。
なので、文章の書き方的なものはいままで完全に無視してきた。
というより、文章の書き方を知ることで、いままでのように書けなく
なるのが怖いのだ。
と思いながらも、これからこういったものを読んでみる必要がありそう
だったので僕は手を伸ばしてみたわけだ。

日本語作文術というと噛んでも噛み切れないほど硬い本のような
気がするがこの本は決してそんなことはない。
読み終えてみると読む前にイメージしていたものとは、ずいぶん違って
わかりやすいのはもちろんだが、説明が面白くて笑える。

心配していたルールに縛られることもなく、良い勉強になったのだけれど、
それ以上に著者の野内良三という人物の魅力が、日本語作文術という
本のなか全面に出ていて作文術よりも著者に興味を持ってしまった。

著者が書いたものを少し調べてみると『ユーモア大百科』
『ジョーク力養成講座』など、そんな本が出版されているのかという本を
出版されている。
実になぞで、魅力的な人物である。

ちなみに著者は文章の書き方として、こう述べている。

「文章のひな形はラブレターである。ラブレターを書くときのように
相手(読み手)のことをおもんばって文章は書くべきなのだ。」

なるほど!

~なぜ人間になれたのか~

2012-01-30 11:52:18 | 素晴らしき日々
『HUMAN ~なぜ人間になれたのか~』
NHKスペシャルで4回にわたって放送されている番組で
昨日は2回目だった。

あやしいデータも強引に取り入れられている感じがする番組ではあるが、
これがけっこう面白い。

あいまいな記憶で話をすると、チンパンジー、ゴリラ、サルと群れをなす
霊長類の脳のある部分の大きさが個々に違い、その脳の大きさと群れの大きさ
との間に、法則性が見られるそうだ。

そして、その法則性にそって人間の脳の同じ部分の大きさを照らし合わせると、
人間の脳はだいたい150人の集団で生活するサイズなのだそうで、世界の
狩猟採集民の集団を平均した数の153人と、ほぼ一致している。

こいつは面白い。

台湾原住民影像誌

2012-01-26 13:19:06 | 編集長の本棚
そもそもなぜこんな本が存在するのかという話をしよう。

ツオウ族の最初の兄弟が弓を二つにわけ、困った時に助けにくると兄が弓の上部を
持ち北へ、弟が下部を持ってその地にとどまった。
日本人が接触した時に北へ去った兄が帰って来たと思い、先住民のなかで最初に
日本を全面的に受け入れたところから関係が始まり、1979年に初めて
瀬川という学者が調査し残したものを、湯浅という人物が瀬川が亡くなったあと
本にまとめたものだ。

本に書かれた神話では台湾の最高の山、パトウンクオヌ山(玉山)にニブヌという
女神が降臨し人間を作ったという話と、太古洪水によってパトウンクオヌ山に逃れ
生き残ったのがツオウ族となる兄弟であるという二つある。
洪水を警告する大地などの(女神の)声を聞いて、パトウンクオヌ山に逃れ、
生き残った兄弟と考えた方がここでは自然か。

僕がこの本で一番面白いと感じたのは、この太古洪水についてだ。
というのも、台湾だけではなくアボリジニ(オーストラリア)、ホピ(アメリカ)、
ハワイにも、これとよく似た洪水の物語が残っているからだ。

ホピには自分たちは洪水のあと(だと思われる)自分たちの始まりがグランドキャニオンの
下から始まったという似た話があるし、ハワイには太平洋の最高峰「マウナケア」の
山頂に逃げのびた一組の夫婦だけが助かり、その夫婦が人類の親となったという
同じとも思える話がある。

世界の全くちがう場所で同じ話があることから考えても、文字すら無いずっと
むかしに洪水があったということは間違いなさそうだし、それは同時に世界の
先住民が言う『前の世界』が確かにあり、バランスを失った『前の世界』が
浄化の洪水によって終わったということを意味しているのだと僕には思えてならない。
世界の先住民がなにを守り、なにを伝えようとしているのかについては、言葉にする
必要はないと思うのでここではやめておく。

この話の中で台湾とハワイの神話に共通性を感じるが、実際にいまのところハワイの
先住民の祖先は台湾を源流とする説が強い。
ポリネシアンのみんな身体が大きくて、肉付きがよいのは長期の航海に耐えられる
よう、それに合った体格の人物が選抜されたためという話もあるが、確かにアミ族や
ツオウ族の男性の体格はそれと似ていたが、台湾の神話が同じ場所から後にハワイへと
別れたものなのか、祖先を同じとする人たちが台湾とハワイという違う場所で
同じような体験をしたのかは僕にはわからない。

ツオウ族のツオウとは『ヒト』を意味している。

來吉村 ツオウ族

2012-01-25 19:53:05 | Quiet Adventure
來吉村に着いた日の夜、食事を済ませた一団は村にあるアトリエを訪ねることになった。
アトリエにはツオウ族の白紫(パイツー)という女性のアーティストがいて、やってきた
一団を受け入れていただいた。


白紫さん


アトリエにはツオウ族の神話をもとにした革細工や絵などが置かれており、ツオウ族について
聞かせてもらった。
まるでこれを逃したら次に訪ねてくる人はいないというくらいに、白紫さんはよくしゃべる方で
話が途切れることなく続く。
途中で、「ハッ」と自分だけが話していることに気がついたようで、「何か質問は?」と
聞くが質問の答から話がそれて、また続けるという感じだった。

白紫さんの話の中で興味深かったことは、ツオウ族は紫・青・緑という色をEnghovaと呼んでおり、
三つに境目がなかったということだった。
緑と呼んでいる色は、日本では最近になってできた色彩感覚なのではないかと僕は思っていて、
どこか共通点があるように感じた。

白紫さんが話していると作品やら、とにかく色んなものが出てくるのだけれど、そのなかに
一冊の本があった。
それは彼女にとってバイブルだという。


『台湾原住民影像誌』


たしかにバイブルと呼ぶにふさわしい貴重な本で、ツオウ族の狩り、住居、食、神話などを
写真付きでまとめられ、言語は北京語、英語、そして日本語!
まとめたのが日本人だったおかげで、僕にも読めたわけである。

読んで行くなかで、さらにおもしろいことを発見したのでまた次回。

あるいて來吉村へ

2012-01-19 18:20:37 | Quiet Adventure
台湾で観光地として有名な阿里山へ、休みの2日を利用してメンバーみんなで行くことになった。
目的は観光地である阿里山を通り越して、その先にある來吉村のツオウ族を訪ねてみようと
いう事だったが、前日に連絡して行くことは知らせてあるが、どこに泊まるのかは特に
決めずに行ったのであった。いつもの通りである。

阿里山へは電車とバスを乗り継いで着いたが、そこからは交通手段が何もない観光地からは
大きく外れた場所だった。
行く手段は、徒歩のみだ。

ネットで調べると17キロだという村までの距離を、現地の人に來吉村までどのくらいかと
訪ねるが、「車で20キロくらいかな?でも、歩いて行ったことがないからわからない。」
という返事。
歩いて行くのと車で行くのとで距離に違いがあると思っているのか、おかしな返事だった。

ゴールまでの距離がわからないというだけで、凄く長い時間歩いたように感じるのは
不思議である。
5時間という永遠にも感じられるときを歩いて、ようやく來吉村にたどり着いた。

滅多にやって来ない観光客という事もあってか、ありがたいことに村ではツオウ族の
若い頭首が迎えてくれた。
そして、その日の泊まる場所を交渉すると、屋根付きの場所を無料で提供してくれた。
実際には最初、屋根がない場所を提供してくれたが屋根付きの場所を指差して、
「あそこがいい」と言ったのだ。
まったく、ずうずうしい一団である。


來吉村

魔法のことば

2012-01-16 12:05:23 | 編集長の本棚
『魔法のことばー自然と旅を語る』
星野道夫 著
文春文庫

星野さんの講演を本にしたもので、遠いアラスカの大自然の中で生きる小さな人間の存在を
確認することができる。

『彼は本当に大事なことしか言わなかった。
そして本当に大事なことは何度でも言った。』
池澤夏樹さんが言う通りの本である。


PEACE

2012-01-15 17:27:21 | 編集長の本棚
『PEACE』
みうらじゅん 著
角川文庫

『やはり今だけを現実と受け止めて何かをやっていくしかないわけで。
そこには「幸せだった」も「幸せになりたい」もなく、「今、幸せだ」
と、言い切れる自信が必要だよね。』あとがきより

300ページまるまるくだらない話で終わってしまう本だが、ひとつひとつ
というよりは、全体でひとつのメッセージとして読んだ方が良さそうだ。
みうらさんは本当にくだらないことばかり書くが、いまを幸せにしようと
一生懸命な人なのだろう。
そのくだらない話に300ページも付き合ったあげく、台湾のSOGOで
輸入本として買ったので667円の本を1000円近く出して買ったのは
実にマヌケだ。

TOKYO 0円ハウス 0円生活

2012-01-15 16:22:17 | 編集長の本棚
『TOKYO 0円ハウス 0円生活』
坂口恭平 著
大和書房

07年のSpectatorという雑誌で初めて坂口恭平さんの写真を見て
気にはなっていたものの、ずっとそのままになっていたことを、アジカンの後藤さんの
新聞で思い出し、台湾へ行く前に大阪駅周辺で購入。

よくある珍しいものを見つけて特集を組んで一発当てよう的なものではなく、建築、生活空間
という視野で坂口恭平という人物が大まじめにホームレスの生活に潜入していく。
そこで彼はホームレスは決してホームレスなどではなく、素晴らしいホームと暮らしを持っている
ことに気がつくのだ。

建築に興味がある人物の専門家の特別なデザインではなく、人間の本能的な生活デザインに
魅せられていく様子が細かく書かれた本。
ホームレスという普段接することの無い人たちの話が、ごく普通に違和感無く受け入れられる
のは、坂口さんが持つホームレスの方たちへの尊敬があるように僕は思う。

台湾のダン君にこの本を貸したらえらく面白がっていたので、もしかしたら北京語に翻訳された
ものが台湾で売られる日が来るかもしれない。