『イシ』 北米最後の野生インディアン
シンドーラ・クローバー著
行方昭夫 訳
1961年に書かれた
『Ishi in Two Worlds,a Biography of the Last Wild Indian in North America』
という本の全訳だ。(Biograpy:伝記)
1911年のある日。
突然、一人の野生の(文明と接触をしていない)インディアンが現れたところから、
この話はすすんでいく。
そもそもインディアンという人たちはどこにも存在しない。
この本の登場人物はヤヒ族のイシという人であって決してインディアンなどではない。
80年代90年代に書かれた本とそれ以前に書かれた本とでは全く違うと北山耕平さんはよく言うが、1961年に書かれたこの本からその違いが感じ取れるはずだ。
著者であるシンドーラ・クローバーの娘は『ゲド戦記』を書いたル=グヴィンだとあとがきを読んで知った。
ゲド戦記は読んだことはないけど、宮崎駿監督の息子の映画は観たことがあって、
その映画の中に「本当の名前・真実の名・真の名」というセルフが多く出てくるので
『あ~アメリカインディアンの匂いがする映画だ』と思っていたら、そういうことだったらしい。
例えばラナードというディネの友人がいる。
ラナードというのはアメリカ用の名前で、それとは別にインディアンネームを持っている。
ラナードのばあい、トゥ フェザーズ という名前だった。
アメリカ名でもインディアンネームとも別に持っていると言われるのが
「秘密の名・本当の名前」などと言われる名前だ。
僕が非常に興味のあるところだが、これは調べようにも本にはなかなか出てこないものだけど本の中で少しだけ触れている。
そもそもこの本の日本語のタイトルとなっているイシは人の名前などではなく、
ただ彼らの言葉で「ヒト」を意味している。
彼は自分の名を最後まで教えることなく逝ってしまったわけだ。