所長は 前にいた所長が飲酒運転で捕まって
急遽 本社からやってきた人で
色白で目鼻立ちがはっきりした
キューピーさんみたいな顔の人でした
一緒に来た奥さんはとても朗らかな人で
いつもにこやかに笑っていました
幼稚園に行っている子供は所長そっくりで
歩き方まで似ていて所長をそのまま小さくしたみたいでした
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そして一年半後、
所長が本社へ帰る日がやってきて
後任に来たのが大型トラックの運転手だったと言う
最悪の所長でした
前の所長は怒っても
どこか優しさが感じられる人でしたが
この所長はその欠片もない
機械みたいに冷酷で自分勝手な人でした
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社員は黙って次々に辞めて行き
仕事は増えてきつくなるばかり
無理な集配業務をやらされて、
営業所へ戻ればいつも一時を過ぎていて、昼休みなし
それでも頑張って働いていましたが
その無理がたたって ついに僕は腰を痛めました
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ある日、昼飯を食べて横になっていると
「
こら、お前、いつまで寝ているんだ。」ど所長の怒鳴る声、、
所長は僕よりも更に遅く戻っているから
僕の戻った時間が分からない..
「僕もさっき戻ったばかりなんです。」とは
決して言わないところが僕の美学 ?
ついに僕もぶちきれて
「
うるせー、バカヤロー、」と、重いパレットを持ち上げると
「ちょ、ちょっと待て、」
「お前、大丈夫か...落ち着け、落ち着け、」
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配達に「信州ハリカ」という会社があったのですが
所長は最後まで「信州ハカリ」と言っていました
でも 誰も何も、それを指摘せず
まるで「裸の大様」
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会社の事務所の天井に
くもの巣があって
入社したばかりのSさんが
それをとろうとすると
「とるな。」
蜘蛛は蚊を捕ってくれる
「この人とは仕事はできない」と
Sさんも辞めていきました
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僕が腰痛で一週間ほど
会社を休んでいると
毎日のように家に電話がかかってきて
「何もしなくていいから、とにかく会社へ出て来い。」
仕方なく出ていくと
何もしないどころかいつもの倍も働かされて
腰痛はさらに悪化、
「このままでは治るものも治らない」
ついに退社を決意したのでした
それでも夜になると電話が着て
「何もしなくて、
見ているだけでいいんだから...」