直腸がんの術後,腎不全で亡くなった83歳の患者.その家族が,「このような合併症は術前に聞いてなかった」と,訴訟.
結局,「病院側の説明不足」ということで,250万円の示談金で決着.このニュースを知り,大きな違和感を覚えました.
超高齢者の全身麻酔による癌の手術の場合,術中,術後,何が起こるか分からない.
合併症としては,麻酔中の血圧変動による脳血管障害,術後肺炎,出血,感染,消化管の手術における縫合不全などは時々みられます.
これらの合併症で全身状態が悪化し,最後に腎不全になるのはよくありますが,腎不全だけ前面に出るのは珍しい(この辺の事情ははっきり分かりませんが).
当然,一般的によくある合併症については説明がされていると思いますが,あり得ることを確率の低いものまですべて説明をするのは実際不可能.
今回,安易に示談したとなると大問題!
このようなことがまかり通るとなると,今後に影響します.
「こんな合併症は聞いていない」と,お金目当ての訴訟が増えるかも知れません.
今回の場合,示談金の出どころは貴重な税金.
宮崎県小林市民は大いに怒るべきではないでしょうか.
事案
( 2009年6月2日16時2分 配信 毎日新聞より )
小林市立病院で直腸がんの手術を受けた市内の男性(当時83歳)が昨年4月,合併症とみられる急性腎不全で死亡した.
市は「術前の説明が不足していた」として,遺族に250万円を支払うことで示談が成立した.
8日開会の市議会に損害賠償議案を提出する.
市立病院によると,男性は昨年4月10日に手術し,同29日に死亡した.遺族から「術後の合併症について説明がなかった」と損害賠償請求があり,病院のカルテにも説明内容の記載がなかった.