金曜日のおじさん

「金曜日のおじさん」が店に来なくなってから一年経った。

もう１５年以上、隔週の金曜日にウチの店に通ってくれていた。
きっちり金曜日に来店するので「金曜日のおじさん」と

年齢は・・・多分定年後からと考えると、もう７０半ばくらいか？？

ず～～っと注文するものは同じ。　　食べるものも飲み物も！

注文するタイミングも、そして店に入る時間も帰る時間も、トイレに
立つ頃合もずっと変わらず同じだった。

店では新聞や週刊誌を見たり、数独を解いていたりゲーム機なども
使って静かに過ごしていた。
静かに・・・というか他のお客さんと全く話すことも関わることもなかった。
というより「話しかけないでくれ」というオーラを放っていた。

一人で静かに飲みたいんだなと思っていたが、ちょっと話しかけてみた。
最初はお会計の時とかに、お天気のこととか一言二言と。
そしたら・・・・すんごくカワユイ笑顔で応えてくれて・・・・それからは
邪魔にならない程度に会話するようになり、更にオトンともめた時などに
「また怒られちゃった」などとグチると「大丈夫、大丈夫」と慰めてくれたり
して、だんだん私とおじさんは仲良しになった。

私の前の席がおじさんの定位置となり十数年通ってくれた。

おじさんが最後に来た日。
それまでたまに他のお客さんに話しかけられても応じなかったおじさんが
初めて隣にいた常連のNさんと楽しそうに話していたんだ。

珍しい！！と驚いたが、ちょっと嬉しかった。
私にはいつも笑ってくれたけど、他のお客さんとも笑顔で話してる姿は
とってもいいな～と思った。
帰り際・・・
「こんなに永くいらしていただいてるのにお名前も(知らなくて)・・・」と
云うと、おじさんは
「いいの、いいの。ここに来られればいいんだから」と云って帰っていった。

二週間後の金曜日。おじさんは来なかった。
次の金曜日も！
そして一年たった。

どうしたんだろう。
何かあったのか？

金曜日がくる度におじさんを待ってる。

ヒョコッと現れたら・・・アタシ、泣いちゃうかもしれません。