久々に「映画芸術」を買う。1,500円なり。小川徹編集時代の「映芸」はエロとやくざとアートな映画の解放区であり、本のつくりは全く雑だけれど、左翼、右翼入り乱れた批評の熱気とパワーに魅力があり、毎月欠かさず買っていた。欧米におけるポルノ解禁の流れの中で、猥褻論議や、ヘア・本番論争が喧しかった時代だが、常にその論議の主戦場になっていたのが「映芸」だった。日活ロマンポルノ全盛の時代、巻頭のエロなグラビアも学生の股間を刺激していたものだ。1年間のベスト、ワーストを決める特集は、ベストのプラスポイントからワーストのマイナスポイントを引いてベストテンを決めていた(これは今も伝統として継承されている)のが画期的だった。多様な論客による批評の多様性を保ちつつも選ばれた映画は、他の映画雑誌とは一線を画していた。「ルシアンの青春」のシナリオが翻訳されて掲載されたが、その日本語が広島弁になっていたのは笑った。これまた「仁義なき戦い」がヒットしていた時代のご愛嬌だ。
東映実録路線やロマンポルノが衰退するとともに、そして東西冷戦の終焉とともに「映芸」のパワーも低下し、僕自身の興味も、映画雑誌でいえば「イメージフォーラム」などへ移行していった。その後「映芸」も休刊になり、季刊として復活したわけだが、現在の荒井晴彦編集の「映芸」は業界誌的な色彩が濃く、どうも1,500円を出してまで買う気にならなかった。
今回買う気になったのは、「映芸」のツイッターを読んで、「映芸」頑張っているじゃないかと思ったのと、私の映画歴みたいな企画で「性愛映画」を特集していたからだ。エロなくして「映芸」はない。いわゆる女の裸が、エロとは程遠い、ネットで堂々と展開されるAVの局部画像、本番(昭和風に言えば)画像に収斂され、映画、映画館、テレビからもエロが消えている時代だからこそ、「映芸」にはエロについてもっと論陣をはってほしいのだ。まあ、季刊雑誌でエロばっかりやっているわけにはいかんだろうけど、欲望が管理され、抑圧されたエロへのエネルギーが、無差別殺人などの犯罪へ向かう時代だからこそ、映像、映画におけるエロが追究されるべきだと思うのだ。もっとエロが解放されない限り、時代の閉塞感や鬱屈した負のエネルギーは解放されないだろう。なんて、まあ、僕のエロへの意識の広がりには、多分に「映芸」が寄与した部分があるので、こんなことをつぶやいてみたくなったわけだ。
それで、僕自身の「性愛映画」ベスト10を考えてみた。順位は関係ないけれど。性愛映画とは、性と愛の映画ではなく、エロいと感じた映画、情欲を刺激された映画という意味だ。とりあえず日本映画。かならずしも封切時期と観た時期が一致しているわけではないが、小学生から大学にかけて観たものでエロへの意識を広げてくれたものだ。
1.「一心太助」(沢島忠監督・中村錦之介/1961年)
シリーズのうち「家光と彦佐と一心太助」だったと思う。小学生の時、錦之介の真っ白な股ひきにもやっと気もちになった。
2.「続・おんな番外地」(小西通男・緑魔子/1966年)
中学のときビートルズの「ヤー・ヤー・ヤー!」とどちらを観るか迷って緑魔子を選んだ。題名が分からなかったが、今井健二と田中春夫がいやらしかったのを記憶しておりこれと判明。緑魔子は顔がエロい。
3.「雪夫人絵図」(溝口健二・木暮実千代/1950年)
観たのは大学時代。最近改めて観て、エロの極致と思った。木暮実千代は存在そのものがエロ。サディスティックな溝口の演出。
4.「愛の渇き」(蔵原惟繕・浅丘ルリ子/1967年)
中学のとき新聞広告でルリ子の官能的な表情に刺激された。中身を観たのは大学になって。映画を観ずにエロを感じた映画。
5.「日本昆虫記」(今村昌平・左幸子/1963年)
これも同じ、映画の看板で、タイトルと写真にエロを感じた1作。実際に見たのは高校のとき新宿の名画座だったと思う。今村の映画では、エロは春川ますみに尽きる。
6.「でんきくらげ」(増村保造・渥美マリ/1970年)
私の性愛映画ベスト1。なんといっても渥美マリだ。顔も体つきもエロ。高校生の股間を刺激してやまなかった。
7.「狂走情死考」(若松孝二・武藤洋子/1969年)
高校のとき初めて観たピンク映画。学生服の襟を中に入れて背広のようにしてチケットを買った。もぎりのばあさんは何も言わなかった。「もぎりの私」。大きなスクリーンで男と女が馬鍬っているその姿にいたく感動した。
8.「実録・阿部定」(田中登・宮下順子/1975年)
大学時代はロマンポルノ全盛期。いろいろあるがあえてこの1作。そもそも阿部定の物語は小学校のとき聞いたそのエピソードとともに、僕のエロへの道を開眼させたと思う。吉蔵役の江角英明がよかった。松林かどこかで立位をやや低いアングルで とらえたカメラが秀逸だった。
9.「温泉こんにゃく芸者」(中島貞夫・女屋美和子/1970年)
この秀逸なタイトルをもってベスト10の一角におくべき1作と思う。こんにゃくの効用については、山上たつひこ「新喜劇思想体系」を読むべし。このころの東映エロ路線は相当アナーキーだった。松井康子がエロ。
10.「眠狂四郎・魔性剣」(安田公義・嵯峨美智子/1965年)
「眠狂四郎」シリーズは、ちょっとエロいシーンが必ずある時代劇だったが、嵯峨美智子が出ているのでこの1作を推す。この人は目、唇、しぐさ、すべてがエロい。
洋画では、ブニュエルとドヌーヴの「昼顔」がベスト1。双璧はベルトリッチ「暗殺の森」のドミニク・サンダ。マルコ・フェレーリ監督の「女王蜂」、「007 ロシアより愛をこめて」のダニエラ・ビアンキ、「バイバイ・バーディ」のアン・マーグレット、「恋するガリア」のミレーユ・ダルクが中学時代。そして、アニエス・ヴァルダ「幸福」は、中学の時、「サウンド・オブ・ミュージック」と併映でかかっていて、マリー・フランソワ・ボワイエの露わな乳首に興奮した。
なんだか、私はいかにして性に目覚めたかみたい映画遍歴になってしまったが、洋画編もそのうちしっかりまとめてみよう。
東映実録路線やロマンポルノが衰退するとともに、そして東西冷戦の終焉とともに「映芸」のパワーも低下し、僕自身の興味も、映画雑誌でいえば「イメージフォーラム」などへ移行していった。その後「映芸」も休刊になり、季刊として復活したわけだが、現在の荒井晴彦編集の「映芸」は業界誌的な色彩が濃く、どうも1,500円を出してまで買う気にならなかった。
今回買う気になったのは、「映芸」のツイッターを読んで、「映芸」頑張っているじゃないかと思ったのと、私の映画歴みたいな企画で「性愛映画」を特集していたからだ。エロなくして「映芸」はない。いわゆる女の裸が、エロとは程遠い、ネットで堂々と展開されるAVの局部画像、本番(昭和風に言えば)画像に収斂され、映画、映画館、テレビからもエロが消えている時代だからこそ、「映芸」にはエロについてもっと論陣をはってほしいのだ。まあ、季刊雑誌でエロばっかりやっているわけにはいかんだろうけど、欲望が管理され、抑圧されたエロへのエネルギーが、無差別殺人などの犯罪へ向かう時代だからこそ、映像、映画におけるエロが追究されるべきだと思うのだ。もっとエロが解放されない限り、時代の閉塞感や鬱屈した負のエネルギーは解放されないだろう。なんて、まあ、僕のエロへの意識の広がりには、多分に「映芸」が寄与した部分があるので、こんなことをつぶやいてみたくなったわけだ。
それで、僕自身の「性愛映画」ベスト10を考えてみた。順位は関係ないけれど。性愛映画とは、性と愛の映画ではなく、エロいと感じた映画、情欲を刺激された映画という意味だ。とりあえず日本映画。かならずしも封切時期と観た時期が一致しているわけではないが、小学生から大学にかけて観たものでエロへの意識を広げてくれたものだ。
1.「一心太助」(沢島忠監督・中村錦之介/1961年)
シリーズのうち「家光と彦佐と一心太助」だったと思う。小学生の時、錦之介の真っ白な股ひきにもやっと気もちになった。
2.「続・おんな番外地」(小西通男・緑魔子/1966年)
中学のときビートルズの「ヤー・ヤー・ヤー!」とどちらを観るか迷って緑魔子を選んだ。題名が分からなかったが、今井健二と田中春夫がいやらしかったのを記憶しておりこれと判明。緑魔子は顔がエロい。
3.「雪夫人絵図」(溝口健二・木暮実千代/1950年)
観たのは大学時代。最近改めて観て、エロの極致と思った。木暮実千代は存在そのものがエロ。サディスティックな溝口の演出。
4.「愛の渇き」(蔵原惟繕・浅丘ルリ子/1967年)
中学のとき新聞広告でルリ子の官能的な表情に刺激された。中身を観たのは大学になって。映画を観ずにエロを感じた映画。
5.「日本昆虫記」(今村昌平・左幸子/1963年)
これも同じ、映画の看板で、タイトルと写真にエロを感じた1作。実際に見たのは高校のとき新宿の名画座だったと思う。今村の映画では、エロは春川ますみに尽きる。
6.「でんきくらげ」(増村保造・渥美マリ/1970年)
私の性愛映画ベスト1。なんといっても渥美マリだ。顔も体つきもエロ。高校生の股間を刺激してやまなかった。
7.「狂走情死考」(若松孝二・武藤洋子/1969年)
高校のとき初めて観たピンク映画。学生服の襟を中に入れて背広のようにしてチケットを買った。もぎりのばあさんは何も言わなかった。「もぎりの私」。大きなスクリーンで男と女が馬鍬っているその姿にいたく感動した。
8.「実録・阿部定」(田中登・宮下順子/1975年)
大学時代はロマンポルノ全盛期。いろいろあるがあえてこの1作。そもそも阿部定の物語は小学校のとき聞いたそのエピソードとともに、僕のエロへの道を開眼させたと思う。吉蔵役の江角英明がよかった。松林かどこかで立位をやや低いアングルで とらえたカメラが秀逸だった。
9.「温泉こんにゃく芸者」(中島貞夫・女屋美和子/1970年)
この秀逸なタイトルをもってベスト10の一角におくべき1作と思う。こんにゃくの効用については、山上たつひこ「新喜劇思想体系」を読むべし。このころの東映エロ路線は相当アナーキーだった。松井康子がエロ。
10.「眠狂四郎・魔性剣」(安田公義・嵯峨美智子/1965年)
「眠狂四郎」シリーズは、ちょっとエロいシーンが必ずある時代劇だったが、嵯峨美智子が出ているのでこの1作を推す。この人は目、唇、しぐさ、すべてがエロい。
洋画では、ブニュエルとドヌーヴの「昼顔」がベスト1。双璧はベルトリッチ「暗殺の森」のドミニク・サンダ。マルコ・フェレーリ監督の「女王蜂」、「007 ロシアより愛をこめて」のダニエラ・ビアンキ、「バイバイ・バーディ」のアン・マーグレット、「恋するガリア」のミレーユ・ダルクが中学時代。そして、アニエス・ヴァルダ「幸福」は、中学の時、「サウンド・オブ・ミュージック」と併映でかかっていて、マリー・フランソワ・ボワイエの露わな乳首に興奮した。
なんだか、私はいかにして性に目覚めたかみたい映画遍歴になってしまったが、洋画編もそのうちしっかりまとめてみよう。