ロバート・アルトマン監督の長編3作目1969年の「雨に濡れた舗道」を角川シネマ有楽町で鑑賞。日本語タイトルは最悪だが(原題はThat Cold day in the park)、タイトルからは想像できないサイコ・スリラーの傑作。というかアルトマン特有の変態的心理劇というべきか。ストーリーは、裕福な独身女性フランシスが家の窓から見える公園のベンチに雨の中ずぶ濡れになっている若者を見つけ、助けたのがきっかけで2人の間に奇妙な関係が生まれ、やがて女性の中に眠っていた狂気が目覚めていくというもの。
ありそうなお話なのだが、徐々に狂気へ至るフランシスの心の変化を、鏡や影、ドキュメンタリー的な手法などを駆使して展開していく。冒頭、ホームパーティに友人を招いていながら、窓の外の雨に濡れる若者が気になって仕方ないフランシスの、それを悟られまいとする無表情から、いずれ何かが起こるとは想像がつくのだが、サプライズ的な演出もことさらサスペンスフルな場面もなく、とにかくじわじわと怖さが染み出してくるような映画なのである。忘れられた傑作の一つだろう。
カメラは「イージー・ライダー」も手掛けたラズロ・コヴァック、主演のフランシスをサンディ・デニスが演じている。日本初上映の初期作品「イメージズ」、傑作「ロンググッドバイ」も上映中。