晴れときどき風

ノンキな主婦が時に風に吹かれながら送る平凡な毎日。

「球形の季節」読みました。

2009年10月15日 16時52分40秒 | 趣味
恩田陸著。

東北の眠ったような地方都市では、噂は瞬く間に広がる。

山にある四っつの高校で奇妙な噂が流れた。
「山に宇宙人が来て、エンドウという生徒が連れて行かれる・・・」
「地歴研」のメンバーはその出所を追跡する。
やがて噂が現実のものとなる・・・。
そしてまた新たな噂が広がる。
しかし、噂の裏では、もっと静かに、「切実な願望を叶えてくれる」という噂が進行していた。

閉ざされた地域で閉塞感を感じている高校生達。
この町では何者にもなれない。何も新しいものは生まれない。
退屈な退屈な日々。
そこに怪奇的な民話が重なる。

とても心を傷つけられた3人の少年と1人の少女。
彼らは、違う世界、内包されているかもしれない違う世界に行くことが出来る。
町の原風景ともいえるような世界。
そこに行けば誰でも違う者になれるのだと。


アナザーワールド。
私の好きな世界観ではあります。
小さい頃は、町の角に、部屋の隅にそれが口を広げているかと思うと怖くて仕方なかった。
本書では、自分でそこに行けるようになった子達はみな悲しい。
傷口から血がドクドクと流れているよう。
そしてある力を得て、正義になろうとしている。
それも退屈だったから。

きっとアナザーワールドは、そんな閉塞感から生まれた世界。
誰もが逃げ道を捜し求めている季節。
開放されていない球形の季節。

田舎の地方都市でなくとも、高校生くらいの子はみんな閉塞感に押しつぶされそうになってるよね。
漠とした不安。将来や現状。
私はもう忘れてしまった感情。
少し懐かしいような気持ちで読みました。
誰もが一時は求めたかもしれない違う世界。

私はこの本、好きです。


で、次に読み始めた伊坂幸太郎さんの「グラスホッパー」が行方不明。(涙) 歯医者さんに忘れてきたのだと思ったのに、ないと言われた。
あれ、古本屋さんで買ったんじゃないのに・・・