「たとえば、どうなんです、親友ジスカルド。教えて欲しい、人類がゼロからもう一度復活するにはどういう手立てがあるのですか?」
今一万歳になったロボット・R・ダニール・オリヴォーは、故郷の星オーロラの中心都市イオスがあった土地に航宙船で降り立った。
先輩で盟友のジスカルド・レヴェントルフを、さも人間がするようなふうに目を細めて思い返していた。
回りは鬱蒼とジャングルとなっていたが、小高い丘に少しだけ緑の草原があった。街はまさに見捨てられていた。
ダニールは、思った。「そうするとこの繁栄したオーロラを覚えているのはわたしだけなんですんね。」
「R・ダニール、そうだ。一万年前、きみは、地球人イライジャ・ベイリーと地球で人類の危機を救った。そのあときみは彼とソラリアで50のスペーサーワールドを救った。それから、きみと僕とイライジャで地球とスペーサーワールドの危機を乗り越えた。今やこの天の川銀河に広がった地球人たちセツラーを持続可能にするにはもうきみ一人で考えるしかないな。昔きみに教えた方法が、あるではないか。」
廃墟と化したイオスの丘に立って、ダニールは、木々の擦れ合う風の声を聞いていた。手には、先程廃墟になった図書館から持ち出した『児童のための知恵の書』が握られていた。
「この街も消えた。賑わう人びとの群れは、もうない。あるのは思い出だけか。あるのはわたしの記憶だけか。わたしの記憶だけが歴史の真実を知っている、ということか。ホントにいいのであろうか?畏れ多いことだ!大銀河に散らばった人類の記憶から歴史を消す。そんなことが許されるのであろうか?」
またもや、ダニールは、遥か過去のジスカルドの面影を夢想した。
「友よ、ダニール・オリヴォー、それでいいのだ。迷わず行け!人類がもう一度立ち上がるかどうかは、わからない。でも人類がゼロから復活するかどうかは、人類の生存がこの天の川銀河を含む大宇宙にとって必要なら彼らは生き残り、もう一度歴史を生き返らせるであろうよ。ダニール、迷わず実行して見なさい。人類を信じてみてみよう。」
またダニールは、夢想した。今度は失われたはずの廃墟となった地球の頂きになって人間と同じように両手を高々に挙げて勝利の雄叫びをあげている自分の姿を。一万年後の自分を!
https://youtu.be/B7EAdAWRfV8
yatcha john s. 「R・オリヴォー、人類の歴史消滅を決断する」(たわいもないショート・ショート)
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