マックス・フォン・シリングス:
・交響的プロローグ「エディプス王」 Op.11
・ヴァイオリンとチェロ、小管弦楽のための「対話」 Op.8
・花の踊り
・メロドラマ「魔女の歌」 Op.15
指揮:ヤン・ストゥーレン
ヴァイオリン:エリザベート・グラス
チェロ:アルバン・ゲルハルト
語り:マルタ・メドル
ケルン放送管弦楽団
CPO: 999 233-2
私は普段、カピカピに乾いた新古典主義の音楽とか、燃えないゴミのような現代音楽を好んで聴いているのですが、クラシック音楽の最大派閥といえばやはりロマン主義なのでありましょう。だから全くロマン主義音楽を無視するわけにもいかないのですが、それだったら極端に濃厚なロマン主義的音楽を聴いてやろうじゃないかと考えて行き着いたのがこのマックス・フォン・シリングスのディスク。
シリングスはフルトヴェングラーの師匠であり、親ナチスであった指揮者兼作曲家。ナチスとの関係で戦後しばらくは作品の演奏が禁止されていたそうで。なんせワーグナーの音楽もナチスに利用されていたし、とにかくロマン主義音楽には人を酔わせる力が強いのです。
さてこのディスクを聴いてみると確かに極めて濃厚なロマン主義で、私なんかは聴いただけで血糖値が上がりコレステロールが溜まってきそうです。音楽の特徴としては全体的に歌曲のようであり、対位法的な線は薄い感じです。管弦楽法としては非常に古臭い印象。ただしそれは旋律のパワーを純粋に表出するための意図的なものである可能性も。半音階的な旋律はワーグナーゆずりですが、ライト・モティーフを縦横に編み込んだワーグナーとは違って一つの素材をズドンと分厚く仕上げたあたりにくどいまでの濃厚さがあるような気がします。濃厚さで言えばひょっとしたらシェーンベルク一派(とくにアルバン・ベルク)に近いのかもしれません。
1曲目の「エディプス王」からしていきなり濃厚で、しかもえらくひなびた音色で、一昔前のNHK大河ドラマのBGMみたいです。4拍子で3拍目の裏でブレス(のような間)を入れるあたりなかなかのあざとさで、真面目に聞いていると非常に息が詰まってきます。
2曲目の「対話」は2つの楽器のからみを追求した純粋な器楽曲かと思いきや、ほとんど交響詩のような深刻さ。ただオケ的な音色はこのディスクの中では最も透明度が高いでしょう。
3曲目の「花の踊り」は作品番号も付いていない5分程度の小品。それでいてチャイコフスキーの「花のワルツ」に真っ向から張り合うようなキャッチーなワルツ。ある意味この中で一番濃厚です。半音階的進行もここまで徹底的にやれば逆にスッキリします。演奏会のアンコールで演(や)ってみたいですね。
4曲目はメインの「魔女の歌」ですが、ドイツ語での語りがなんだか強烈で音楽がいまいち頭に入ってこないのです。歌詞のフォローはしていませんが、音楽が暗く湿っぽいので、鬱蒼とした森の奥深くに棲む魔女の悲劇がなんとなく見える気がします。
というわけで、ロマン主義音楽ファンなら脳汁がドバドバ分泌するであろうこのシリングスの音楽、ぜひ聴き込んで消化して私に語ってくださいませ。
こちらの動画はユルゲン・ブルンス指揮によるさらにひなびた音色の「エディプス王」。古代ギリシャの悲劇というよりはヨーロッパ中世の騎士道物語のようです。
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