ヴァン・ホルンボー:
交響曲第3番 「シンフォニア・ルスティカ」 作品25
交響曲第1番 作品4
交響曲第10番 作品105
指揮:オウェイン・アーウェル・ヒューズ
オーフス交響楽団
BIS: BIS-CD-605
デンマーク生まれのホルンボーは交響曲を13曲も作った交響作曲家で、その作風の幅も広いものとなっています。私が13曲を一通り聴いてみたところ、大きく3つの傾向があるように思われます。
まず初期は、簡潔・明快ながら凝った作りの新古典主義。次に、北欧の厳しい自然を感じさせる民族主義的な中期。そして最後に、無調に接近し、何か問題提起をしているかのような音楽です。3つの傾向があると書きましたが、明確に分離できるものではなく、初期のころから無調的な書法は聴かれますし、明快さも晩年になっても失われていないようです。時代によって少しずつ配分を変えているような印象。
第1番は3楽章からなり、同じくデンマークのニールセンと新古典主義時代のストラヴィンスキーを足したような、ドライでピリッとした作品。音の積み上げ方や当てはめ方がストラヴィンスキー的で、打楽器の緊張感がニールセンっぽい感じ。特にソナタ形式の第1楽章提示部の2分間がカッコ良すぎです。どこかエキゾチックでユーモラスな第2楽章は異国の寂れた酒場のような雰囲気ですし、連続して演奏される第3楽章は淡々としながらも旋律を追っかけながら聴くと起伏が面白く、なんかビルの建設現場の作業を見ているようで面白いです。
上の動画はおそらくこのディスクと同じ音源の交響曲第1番。最後に2分間の謎の無音部分あり。
第3番の標題の「Sinfonia Rustica」は日本語にすると「素朴な交響曲」または「田舎風の交響曲」。「素朴な交響曲」とはニールセンの作品にもありますが、あちらは「Sinfonia Semplice」で「シンプルな交響曲」。ホルンボーのはやはり田舎風の、というニュアンスでしょう。新古典主義的な明快さを全面的に引き継ぎつつ、地方の人々の生活が見えてくるような音楽。これも3楽章構成で、賑やかな市場を思わせる第1楽章、冬の海に挑む厳しい第2楽章、古くからのお祭りを楽しむような第3楽章と、民族的な要素が強めに出ています。
その後ホルンボーは3楽章形式にこだわらずに色々と交響曲を作ってきましたが、無調の側面が強くなって再び3楽章形式に回帰、そのうちの一曲が第10番です。第1楽章後半の発想記号が「Allegro Espansivo」とあって、これはまさにニールセンの「ひろがりの交響曲」第1楽章と同じもの。だったら同様におおらかな音楽かと思いきやこれがなかなか晦渋な作品。とは言っても、確かに最初は聴いていても何が何だかわかりませんでしたが、そのうちに主題とその変形が見えてきて、聴くたびに発見があります。主題は3楽章を通して常に現れて、全体が統一されているのがわかります。
そして第10番を聴いた後にまた第1番や第3番を聴いてみると、ホルンボーは初めから音楽を展開させていくことに多くの力を注いでいるように感じられます。他にも、全般的に旋律を主体にして音楽が書かれていたり、トランペットの旋律が全体を先導していたり、ニールセンのように打楽器に重要な役割を与えられていたりという特徴が見えてきます。そしてどれもカッコ良さがあり、日本でもっと演奏されてほしい交響曲群なのです。
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