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ペンデレツキ:広島の犠牲者に捧げる哀歌、他

2011-02-09 18:35:57 | CD


クシシュトフ・ペンデレツキ:
・広島の犠牲者に捧げる哀歌
・ヴィオラ協奏曲

ナンシー・ファン・デ・ベイト:
・チェルノブイリ
・ヴァイオリン協奏曲第1番

ヴィオラ:グリゴーリ・ツィスリン
ヴァイオリン:ヤヌシュ・ミリンスキ
指揮:ツィモン・カワラ
ポーランド放送交響楽団

CONIFER: CDCF 168



 「広島」と「チェルノブイリ」という核エネルギーに関する史上最悪の人災カップリングCD。

 ポーランドの作曲家ペンデレツキの音楽の特徴はトーン・クラスターという技法です。以下の画像がその例で、私が持っている「広島の犠牲者に捧げる哀歌」の楽譜の最後の部分です。



 これは塗りつぶされた範囲の音程を全て鳴らすことを意味します。52人の弦楽器奏者がお互いに少しずつ音程をずらし、「音の塊」を形成するのです。文字にすると「ゴ~~」とか「ザ~~」とか「ヌ"~~」とか書けるような騒音です。

 この曲はタイトルに「広島」とありますが、作曲時には必ずしも広島の悲劇が念頭にあったわけではく、純粋に音響的な試みだったようです。ですが、弦楽器による引き裂くような奏法、背後で不気味に伸縮する「音の塊」、ほとんどランダムな音の一つ一つが加速して一気に悲劇へと向かうような展開などの要素が「広島」以外のイメージを拒絶しています。その果てに、上記の「ヌ"~~」によって全ての構造が分解されて分厚く堆積するという結末。あまりにも恐ろしい音楽です。

 アメリカの女流作曲家ナンシー・ファン・デ・ベイトについて私はよく知らないのですが、色々とダークサイドな音楽を作る人のようです。この「チェルノブイリ」では、前半は不穏な音形が次々と現れては消えるホラーのようで、後半はそこに大きな悲しみと絶望が被さってくるようです。

 このディスクの「広島」と「チェルノブイリ」の持つリアリティによって、音楽とは「体験」なんだと改めて実感です。



 YouTubeに「広島」の楽譜を表示している動画がありました。トーン・クラスターの概念と表現力がわかるかと思います。


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