〈読書会〉おもしろ☆本棚

毎月都内で読書会を開いています。
お問い合わせは omohon.renraku@gmail.com まで

5月の課題本 『トム・ソーヤーの冒険』

2013-06-02 16:53:28 | ・例会レポ


マーク・トウェイン 『トム・ソーヤーの冒険』

こんなに面白い作品だったとは。訳してみて深さに気づきました。――柴田元幸。新訳・名作コレクション。

ポリー伯母さんに塀塗りを言いつけられたわんぱく小僧のトム・ソーヤー。転んでもタダでは起きぬ彼のこと、いかにも意味ありげに塀を塗ってみせれば皆がぼくにもやらせてとやってきて、林檎も凧もせしめてしまう。ある夜親友のハックと墓場に忍び込んだら……殺人事件を目撃! さて彼らは──。時に社会に皮肉な視線を投げかけつつ、少年時代をいきいきと描く名作を名翻訳家が新訳。 (新潮社のサイトより)

光文社古典新訳文庫 土屋京子/訳 2012年

岩波文庫(上下巻) 石井桃子/訳 2001年

新潮文庫 柴田元幸/訳 2012年

講談社青い鳥文庫新装版 飯島淳秀/訳 (マーク・トウェーン) 2012年

角川文庫トウェイン完訳コレクション 大久保博/訳 2005年

など。(版は問わず)

 

=例会レポート=

5月の例会課題本は『トム・ソーヤーの冒険』。柴田元幸さんや土屋京子さんの新訳版をはじめ、新潮文庫旧版や青い鳥文庫版などのさまざまなテキストを読んできた、かつてトムだったおじさんや、かつてベッキーだったおばさん、総勢18名が出席しました(男性6名・女性12名)。 


少年小説の定番で、子ども向けの名作全集には必ずといってよいほど収められている作品なので、会員の皆さんのほとんどは一度は読んだことのある作品だと思っていましたが、初読という方が結構いたことは驚きでした。また、読んだはずなのにほとんどのエピソードを忘れていた、という会員も少なくありませんでした。寄る年波には勝てない、のでしょうか(かく言う推薦者も、メインのエピソードはともかく、あれっ?と思う忘れていたエピソードもありましたが…)。


会員の皆さんからは、おおむね好意的な感想が寄せられましたが、やはりトムとハックの二人を対比した感想が多かったようです。中には読後ウン十年のタイムラグが感じられる、笑って良いのか、悲しんで良いのか、というものもありました。

・かつてはトムやハックの子どもの視点で読んでいたが、今はポリー伯母さんの立場がよくわかるようになった。『ハックルベリィ・フィンの冒険』の方が面白かった。

・語り手の文章に皮肉っぽい感じを受けた。トムはみんなの中にいる子ども、ハックはアウトサイダーという感じ。

・訳者の異なる三冊を読んだ。家族のつながりがうまく描かれている。

・今回読むまで読んだつもりでいたが、実は読んでいなかったことがわかった。トムやポリー伯母さん、ハックなどそれぞれの立場になれた。

・アニメで見たのが初めて。アメリカ人ならではの女の子への積極的なアプローチは、子どももそうなのかと驚いた。

・楽しく、懐かしく読めた。読めてよかった。

・訳者の文体に興味を持って読んだ。柴田訳は、会話は今風のもので、地の文はあえて難しい言葉を使って大人向きにしている。そのためか、少年小説というよりも、マーク・トウェインの思想や考え方がわかる「大人の小説」という感じを受けた。

・読みたかったものがやっと読めた。シドやエイミー・ローレンスに感情移入した。トムから見ればシドは嫌なヤツかもしれないが、普通の子どもだと思う。各章にくっついている内容紹介がジャマに思えた。土屋訳版の扉絵に描かれたトムはイメージと違って変な感じ。

・この本は、女の子にとっての『赤毛のアン』だ。

・「あっ、こんなだったけ」というシーンが多く、再読なのに新鮮な気持ちで読めた。ハックの自由な生き方が良いと思った。

・初めて読んだ。最初の方はキリスト教的な倫理観が強調されていて、それが鼻についた。リアリティが有るようで無いような感じ。


もちろん、否定的というか「ここはちょっと…」という意見もありました。その主たるのものが、物語の終わり方についてでした。

・トムとハックの二人をお金持ちにした終わり方は如何なものか。

・二人がお金持ちになって終わるこの終わり方にはガッカリした。それまでの、学校や教会といったタテマエや大人の世界に反抗する姿勢を描くことに成功していただけに、残念だ。

・文体の違い、子ども同士の会話と地の部分のギャップがありすぎて読みづらかった。


講師の菊池先生からは、

・アメリカ深南部を舞台に、「夢の王国」=ユートピア作りに熱中する少年の姿を活き活きと描いている。子ども時代のささいな冒険譚を次から次から出してくるうまさ。

・二人が金持ちになる終わり方への作者自身の答えは、次作『ハックルベリィ・フィンの冒険』にある。次作でトムは成金趣味になってしまうが、ハックは自由を求めてミシシッピ川をイカダで下り、奴隷問題と直面する。

との評価をいただきました。続けて、マーク・トウェインの他の作品も俎上に上げ、

・マーク・トウェインは、アメリカという国の宿命を背負った作者。常に変化する時代とともに生きている作者の姿勢や思想が、『トム・ソーヤーの冒険』前後に書かれた作品に如実に反映している。

と、他の作品を紹介してくれました。


推薦者にとて、『トム・ソーヤーの冒険』は、ベルヌの『十五少年漂流記』とならぶ少年冒険小説のエバーグリーン。今回、抄訳ではないものを読む機会を得て、忘れていたエピソードや他とごっちゃになっていたエピソードなどありましたが、何度読んでも心躍るエピソードの連発に、ひととき少年時代のピュアな心を取り戻すことができました。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 雨季合宿課題本 乃南アサ『... | トップ | 7月の課題本 中村文則 『掏... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

・例会レポ」カテゴリの最新記事