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9月の例会レポ『こちらあみ子』

2019-09-25 11:28:42 | ・例会レポ

今村夏子 著 ちくま文庫

あみ子は、少し風変わりな女の子。
優しい父、一緒に登下校をしてくれる兄、書道教室の先生でお腹には赤ちゃんがいる母、
憧れの同級生のり君。純粋なあみ子の行動が、周囲の人々を否応なしに変えていく過程を
少女の無垢な視線で鮮やかに描き、独自の世界を示した、
第26回太宰治賞、第24回三島由紀夫賞受賞の異才のデビュー作。
書き下ろし短編「チズさん」を収録(アマゾンサイトより)。

例会は、9月19日 木曜日 19時より新宿区内のいつもの場所で開催しました。

 

【例会レポート】

『むらさきのスカートの女』で第161回芥川賞を受賞した今村夏子さん(以下敬称略)のデビュー作です。
この作品で三島由紀夫賞を受賞しており、『星の子』での野間文芸新人賞、
芥川賞を含めると純文学3冠王に輝いたことになります。

例会では、この小説が好きだったのでもっと今村作品を読みたい人と、
いたたまれなかったり、ピンと来なかったりしてもう読みたくない人とに、
割とはっきり分かれたのがおもしろかったです。

あみ子のような子どもの気持ちや行動がすごくリアルに書かれていることを評価する声、
さまざまな妄想がここから広がって楽しめたという感想、
理解はできなくても受け入れることはできると思ったという意見があった半面、

あみ子の家族のこと、生母のこと、お兄ちゃんが不良になった理由など、
作品では語られていないことがたくさんあり、わからない、ついていけないという意見もあり、
また、何を描きたかったのかがわからないという声もありました。

著者については、読みやすくて上手い、
真正面から臭いものが書ける人、怖い作家じゃないかなどの意見が出ました。

もう一つ、「〜に似ている」「〜を思い出した」という声が多く聞かれました。
例えば、あみ子は西加奈子の『きりこについて』のきりこを思い出させる、
心象風景の描写が安岡章太郎っぽいなど。
他に多和田葉子や村田沙耶香の名前も出てきました。

講師からは、返事のないトランシーバーに「応答せよ」と呼びかけているあみ子のイメージが秀逸。
村上春樹の『回転木馬のデッドヒート』を思い出した。
今という時代の中で、ある種の普遍的なイメージをあみ子に投影しているわけで、
書きたかったことについては読み手がそれぞれ自分の解釈をすればいいというお話がありました。

なお、先の三冠王に輝いた女性作家は歴代5人目で、
他の4人は笙野頼子、鹿島田真希、本谷有希子、村田沙耶香。
ということも講師が教えてくださいました。

今回、いくつか違う意見が出されたのですが、話し合う時間がなくて心残りでした。

「あみ子って何なのか」について、周囲の人を壊してしまう爆弾? 
相対する人を映す鏡? などいくつかの異なる解釈があり、もっと聞きたいと思いました。

また、のりくんがあみ子の歯を3本も折ったことについて、
のりくんの気持ちはよくわかるという意見がある一方、
のりくんひどいという人もいました。
その後でのりくんが大泣きしたのはなぜだろうということを含め、議論がしたかったです。


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