芥川龍之介「好色」
岩波文庫『地獄変・邪宗門・好色・薮の中 他七篇』 1980年
などに収録(青空文庫にもあります)
※今回は会場の都合上、見学の受け入れは致しません。
あしからず、ご了承下さい。
=例会レポ=
今月の例会はいつもの会場ではなく、キイトスカフェで行われました。
目の前には湯気の立つコーヒー。誰かのおみやげの白松が最中。
いい感じです。
そして、永いおもしろ本棚の歴史の中で初めて(ほんと?)の芥川。
あまり読んでいなさそうな作品…と思って推薦した『好色』でした。
超短いし、タイトル的に楽しそうだし♪
これは「王朝もの」と言われる作品群の一編です。
元ネタは『宇治拾遺物語』や『今昔物語』にあるということで
菊池講師が両作品のコピーを用意してくださいました
(今昔物語は福永武彦編)
これはGood Job!です(偉そう)。
読み比べると、どこが作者の創作であるのかがすぐわかります。
平中のとめどなく広がる妄想や、悪友2人の会話、
ラストの締めなどが元ネタにはありません。
元ネタの「説話集」というのは、今で言えば『アサヒ芸能』や『週刊ポスト』。
市中のゴシップ、噂話を集めて提供したものだそうです。
ストーリーはそこからいただいて、
美や芸術を追求する天才の破滅までを描きたかったのではないか、
というのが講師の見解でした。
芥川らしい緻密に計算された構成、理知的で明解な文章を味わいつつ、
美しいもの、良いものを求めてながら、手に入らずに死んでいく
平中に作者自身の想いを重ねて読むことができるというお話もありました。
読書会では、例えば青空文庫版には入っていないのに
岩波文庫版には入っているラスト2行は必要なのか論争や、
平中っていい男かい?論争、
筥の中身は結局なんだったのか論争などが繰り広げられ、
超短編ながらいろいろな読み方のできる作品だったと思います。
推薦人は、35歳の若さで亡くなってしまった彼が、
もっともっと長生きしていたら、
どんな作品を書いたんでしょうねと残念に思います。
谷崎潤一郎との文学論争での立場を考えると
物語好きの私には退屈だったかもしれませんが…。
巣鴨の慈眼寺にお墓があるそうなので
今度墓参りに行ってきまーす。
最後に「みんな芥川を意外に読んでないね」と驚いた講師からの
オススメ作品です。
・完成度が高い作品 玄鶴山房
・非常にうまい作品 手巾(ハンカチ)、秋
・キリストの問題に取り組んだ作品 西方の人
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