https://www.hinata.jp/non/3222
防錆実験
EK9シビックRのフロアパネルに錆びで穴が開いてしまい、穴を一時的に塞ぐために亜鉛テープを使った。鉄(フロアパネル)よりイオン化しやすい亜鉛を組み合わせ、先に亜鉛を腐食させることで鉄を守る犠牲防食効果を得られる。
そんな亜鉛による鉄の防錆効果とは、どんなものなのか。実際に試してみることにした。
適当に用意した鉄板を研磨し、防錆のために施されていた亜鉛めっきを剥がす。次に三井住友金属鉱山伸銅株式会社が発売する亜鉛テープ(ZAPテープ)を数センチほど切って貼り付け、試験片の完成。この亜鉛テープは、冒頭で書いたフロアパネルの穴塞ぎのために使用した、亜鉛テープそのものだ。このままベランダの外に吊るし、風雨に晒して腐食させる。
風雨に晒して二ヶ月が経過。中心部分の四角いところは、亜鉛テープを貼り付けた部分で、その周辺では錆びが進んでいる。しっかりと亜鉛めっきを落とせなかったためか、ところどころで錆びていない部分が生じている。
スタートからさらに一年半が経過した。残っていた亜鉛めっきは完全に消失し、スタート時の試験片と比べると同一のものとは思えないほど、ボロボロになってしまった。亜鉛テープの銀色部分だけが妙に目立つようになっている。
その亜鉛テープを剥がすと、ご覧のとおり。亜鉛の犠牲防食効果により、亜鉛テープが貼られていた部分だけは鉄板が健全な状態を保っていた。この結果から「錆びる前の防錆には、亜鉛ベースの防錆剤が有効」ということが分かった。その後の勉強で、錆びた鉄に亜鉛を使う場合は、徹底的なケレンを行わないと防錆効果は薄く、あくまで錆びていない鉄の防錆手段であることも分かった。
鉄に対する亜鉛めっきの効果も高く、腐食しにくくなるようメーカー側もしっかりと考えていることが、展示品目として設定されている。
◆防錆鋼板の展示あり https://www.hinata.jp/non/3898
引き続き、トヨタ産業技術記念館で見つけたもの。
鋼板の防錆に関する展示もある。
合計四枚の鋼板が掲げられ、防錆鋼板のグループと普通鋼板のグループに分けられている。グループの右側は白い塗装を施し、カッター等でX字状に切れ込みを入れ、塩水を吹き付けて錆びるかどうかを調べたようだ。
普通鋼板グループは酷い。手入れされていない旧車の如く、塗装内面側から錆が進行しているようで、切れ込み部分から茶色いシミが出てきている。対する防錆鋼板は、犠牲防食が期待できる亜鉛めっきが施されており、塗装済みバージョンはもちろんのこと、無塗装バージョンも塩水噴霧試験に耐えたことを示している。
防錆鋼板の説明文。大雑把な概要が記載されているだけで、塩水噴霧の試験状況等の記載はないが、亜鉛めっきを施すことで鋼板が錆びにくくなることがイメージしやすい。が、亜鉛めっき済みの鋼板を使ったところで完全なものではなく、あくまで錆びてしまうまでの時間稼ぎで、年数レベルの時間を掛ければ錆びていくことは、自前でサンプル試験を行って確認済みだ。
亜鉛の防錆能力は現車においても、現在進行形で調査中。フロアパネルの錆びを削り、露出した鋼板部分に亜鉛テープを貼ることで、防錆ができるかどうか。それらの対策を行って、今年で5年目。錆対策は施して終わりではなく、継続的な観察と、必要に応じた追加ケアが求められる。地球上に酸素と水がある限り、錆からは逃れられない。
それにしても、メーカー公式で展示されるネタが、当サイトでも掲載していたことから、実験の方向性と内容が妙に一致しており「どこかで見たことある!」なんて喜んでいた。