くもり のち あめ

うしろ向き、うしろ向き、たまに、まえ向き。

荻原浩・著 『明日の記憶』

2008-07-08 14:27:05 | 読書
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若年性アルツハイマーを患った主人公。
日に日に進行する症状。

娘の結婚式まではなんとか踏ん張るのだと、
短期記憶の領域を病に侵されながらも、
同僚、客先、自分の発言、すべてのことをメモに取り続け、
病気のことは悟られないように懸命に働く。

しかし時間が止まらないように、
アルツハイマーの進行も止まらない。

色々なことを忘れてゆく。

道、場所、今まで出会った人たちのこと。
そして最後には家族の顔、妻の顔すらも。

もし自分の身に同じことが起こると
想像しただけで、すごく怖い。

記憶がなくなったら自分が自分じゃなくなってしまう。

唯一の救いは、周りの人間は自分のことを覚えている
ということかと思ったが、結局自分自身がその人たち
のことを覚えていないのだから
まるで意味がない気がしてきた。

もしかしたら生きていく上で一番怖いことかもしれない。
そしてそれは実際に起こりうることなのだ。

小説に書かれているとおり、
アルツハイマーは自分自身だけでなく、
家族や周りにも多大な影響を与えることになる。

何よりもそれが怖い。

自分は普通にしているつもりが、
結果周りに大きな負担を与えていること、
そして大きな負担を与えていることに私自身が
気がつかない、ということがだ。

それでも人間は生きていく。
60兆個の細胞は生き続けようとする。

どうしろっていうんだ。
そんな気持ちになるだろう。

あわれで、みじめで、涙が出てくるだろう。

それでも、

それでも生き続けなきゃならない。

人は支えがなければ生きていけない。
生まれたときも誰かが手を差し伸べなければすぐに死んでしまう。
成長して大人になっても、病気になればひとりではどうしようもない事態に簡単に陥る。

理解しあい、支えあい、助け合う。
それがなくなってしまったらどうなってしまうのだろう。

普通に生活しているだけでも不安になるときがある。
もしかしたら日本中のほとんどの人が未来を思って不安な気持ちを
抱かずにはいられないのではないだろうか。

誰だってまだ訪れていない未来のことを考えて不安になんてなりたくない。
明るくて希望に満ち溢れた未来を想像したいはずだ。

でもそうはさせてくれない何かが世にはびこっているのも確かなんだ。

若年性アルツハイマーという病気から考えさせられることがたくさんあった。