南方単車亭日乗

奄美大島にIターンした中年単車乗りが、てげてげに綴ります。
はじめての方は、最初に《ごあいさつ》をお読みください。

告別 ディック・フランシス

2010年02月17日 01時45分03秒 | 本日の名セリフ
「続いている間は、すばらしい日々でした」私が軽い口調でいった。「何事も、それでいいのです」
「お互いに、すばらしい喜びを味わったな。たとえようもない楽しさを何度も」

ディック・フランシス 「利腕」



現地時間2月14日、カリブ海の英領ケイマン諸島にある自宅で、作家のディック・フランシス氏が亡くなりました。
89歳でした。
フランシス氏の略歴、作品リストに関しては、Wikipediaの記事をご覧ください。
短編集『出走』に収められた13作と41の長編作品(未出版の作品が1つあるという嬉しい噂がBBCのサイトにあるとか!)の全てが何らかの形で馬と競馬に関連した内容の一人称で書かれ、いずれも質の高いミステリー作品です。

オレが、この作家の作品を最初に読んでから20年ほど経つでしょうか。
すでに20作以上が文庫化されていましたから、次から次へと読み進めていったことを思い出します。
実を言うと生まれてこの方、競馬場へ行ったこともなければ馬券を買ったこともありませんが、それでもこの作家の作品を読むのに不自由を感じたことはありません。
主たる訳者の菊池 光さんの名訳もあるのでしょうが、やはり原作の質の高さに拠るところが大きいのだとも思います。
実際の競馬の描写は「次のレースに出走し、勝った」「はるか彼方に引き離されて2着」などと簡潔にして明瞭。
ごく稀にスタートからゴールまで綿密な描写がありますが、作品の中において必要な位置に必要なだけの分量で描かれていますし、乗馬の経験のないオレにも臨場感を味わわせてくれます。
いっぽう、競馬厩舎の日常などは、淡々としていながら手に取るように判りやすく描写されています。

2000年に、共著者といってもよさそうな妻のメアリさんが亡くなり、一度は断筆宣言も出たこともあります。
なので2006年の『再起』以降は、ある種「貰えなかったはずの贈り物を戴いている」ような気持ちでおりましたので、今回の訃報も「来るべきものが来た」と落ち着いて受け止めているつもりです。

とはいえ、フランシス氏に関しては折に触れ、何度も読み返した作品ばかりですから、簡単に纏めようとするほど「あのことも、このことも」記したくなります。

雨の休日だとか、予定が流れてしまった日だとか、電車で長い距離を移動するとか、半日以上なにもすることがない日に、書店や図書館で見掛けたら読んでみてください。
お酒が好きな人なら『証拠』がいいでしょう。
カメラ(フィルム)が好きな人なら『反射』がいいでしょう。
飛行機(プロペラ)が好きな人なら『混戦』『烈風』がいいでしょう。
電車に乗るときは『横断』がいいでしょう。
映画が好きなら『煙幕』『告解』がいいでしょう。
絵が好きなら『追込』『不屈』がいいでしょう。

オレは文庫でしか読まないので、まだ3作(4作?)が残されています(『祝宴』をまだ買ってない)。
次の土曜日には、家にあるどれかひとつかふたつを選んで楽しむことにします。
フランシスさん、ありがとう。

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