踊りの季節・壱 笠利町笠利 前編よりつづく。
前編からたった2週間での後編の公開というハリウッド映画も真っ青なペースでの更新ですが、詳しい解説をする、と公表しちまった以上、避けて通るわけにもいきません。
読み終えて「こんなんで詳しい解説か」というご意見も予想されますが、心配ばかりもしていられませんから、とっととはじめましょう。
奄美大島の行事は、基本的に旧暦に基づいて行われます。
中でもこちら大笠利では、踊り行事を厳格に旧暦に則って開催します。
古来から伝わる三八月(みはちがつ)と呼ばれる行事を踏襲し、「曜日がどうたら」という軟弱な意見は一顧だにされない・・・みたいです。
さてこの三八月(みはちがつ)は、アラセツ、シバサシ、ドゥンガという三行事の総称で、それぞれに旧暦上での期間が定められています。
まず、旧暦は月の公転周期29.5日によって左右されますが、旧暦八月というのは「秋分を含む」という決まり事があります。
つまり、どれほど旧暦が新暦(今、普通に使われている暦)とずれても、旧暦八月一日は新暦の8月24日から9月23日までに当たることになります。
アラセツは、その旧暦八月の最初の丙(ひのえ)の日、または丁(ひのと)の日にはじまる三日間を指します。
丙の翌日が丁なので、旧暦七月の最後の日が丙なら、アラセツは旧暦八月一日の丁の日になります。
ちなみに今年(2008年)は、アラセツの一日目は新暦9月3日(旧暦八月四日の丙)でした。
これが来年(2009年)だと、アラセツの一日目は新暦9月19日(旧暦八月一日の丁)になるかと思ったら新暦9月27日(旧暦八月九日の乙(きのと))です。難しいなぁ。
さらに再来年(2010年)は、アラセツの一日目は新暦9月13日(旧暦八月六日の丙)となります。なるのかなぁ?
ついでに悪乗りすると、2011年は新暦8月29日、2017年は新暦9月26日と、1ヶ月ほど新暦上ではちがいが出ます。
アラセツの語源は、「
節(せつ)を
新たにする(または節を改める)」と言われ、旧暦七月のうちにその年の収穫の全てを終え、次の年の準備をはじめましょう、という意味になるのだそうです。
単純に言えば豊年祭・収穫祭という意味でしょうか。
どうですか、詳しすぎて疲れるでしょ?
アラセツの次はシバサシ。
期間については、いろいろ定義があるようですが、簡単に言ってしまえば、2日間のアラセツが終わって4日過ぎたらシバサシ、です。
もっと判りやすく定義すると、アラセツの初日が月曜日ならシバサシは次の日曜日からはじまることになります。
旧暦では、壬(みずのえ)または癸(みずのと)からはじまる2日間になり、どうやら《厄除け》行事としてのお祭りのようです。
シバサシ、という言葉から『柴差し』『柴挿し』という字を当てたくなりますが、どうやら『椎葉(しぃば)挿し』が正しい語源のようです。
大笠利集落の踊り行事は、このアラセツとシバサシの計4日間です。
ドゥンガは、踊り行事としては行われません。
ドゥンガはもっと家族的な行事のようです。
しかし、ドゥンガと記すたびに
この人を思い出すんだよなぁ。
昔はやーまわり(家廻り)といって、集落内の家を片っ端から廻って夜明けまで踊ったといいますが、今では一日三軒で予定が決まっていて、なおかつ踊る家ごとに唄う唄も決まっています。
これは集落内の文化活動を管理する役員が事前に決めて、一部の唄(やはり景気がよくて唄いやすいものが好まれるそうな)に偏るのを避けているためです。
夜7時頃に1軒目の家の前に三々五々と集まった人々は、いつの間にか輪を組んで唄い、踊りはじめます。
もっとも、難解な方言で唄われる『踊り唄』を正確に唄える人は数少なく、唄をリードする《打ち出し》と呼ばれる人が先導して唄い、他の人たちは必死でそれに着いていこうとします。
鼓(ちぢん)も、少し前まではひとにぎりの名手たちが打っていたのですが、近年は当番制でかわりばんこに担当することになりました。
「みんなが憶えないと廃れてしまう」と、強い危機感から出た考えのようです。
鼓の名手にその辺の話を聞いてみたら、「どうも雑でいけない」なんて言ってましたけどね。
たぶん、まだまだ記し足りないこともあると思いますが、大笠利の八月踊りの話、とりあえずここらへんまで。
踊りの季節・壱 おわり
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