南方単車亭日乗

奄美大島にIターンした中年単車乗りが、てげてげに綴ります。
はじめての方は、最初に《ごあいさつ》をお読みください。

プチ避難民の記録

2011年11月05日 22時13分08秒 | 南方単車日乗
昨日(11月2日)の豪雨で思い出した、
9月の豪雨についてちょろっと記しときます。

9月24日、ちょっと遅めの夏休みを過ごしに、奄美のとなりの小さな島・加計呂麻島の実久集落へ、単車にテントを載せて行ってきました。

到着し、テントを拡げて詰め込んだ荷物を取り出して落ち着くと、勢い込んで釣り場へ。
今晩のおかずを釣るのだ。

ほどなく25cmサイズのブダイ(方言名エラブチ)を釣り上げてテン場(テントを張った場所)へと戻る。
ビールを買って来て、うぐうぐと呑み欲し、さぁ魚を捌きに掛かるか、と思ったら・・・ない!
フライパンがない!忘れたんだ orz
日が暮れる中、途方に暮れていると島唄の名人・徳島勝郎兄が帰ってきた。
オレが島の三味線を習いはじめた頃(2001年)、彼もまだ習い始めで、かなり怪しい手つきでぽつぽつ弾いていたのだ。
それが今じゃあ・・・やめとこ。
馬鹿話をして帰宅する勝郎兄を見送って、さぁ、ラーメンでも作るか、と思ったら・・・ない!
ラーメンも忘れたんだ orz
慌てて雑貨屋でサバ缶を買って来て、大急ぎで飯を炊く。

空腹に耐えきれず、洗米した後に時間を置かなかったのと炊きあがった後に蒸らす時間が少なかったのとで自分野外飯史上もっとも不味いご飯になってしまったが、サバ缶と生卵で掻き込んだ。

さて、飯を済ませても時刻は未だ8時前。
夜釣りにでも行くか、去年は夜釣りでこんなのを3尾

こんなのも釣ったのだ。

桟橋までは単車で3分、ぱらぱらっと撒き餌を巻いて釣りはじめると、遠くからごーーーーーっという音が聞こえる。
雨だっ!
光速に匹敵するスピードで片付けて単車に飛び乗るが、すでに大粒の雨が叩きつけて来る。

たった3分で全身ずぶ濡れ。

いちおう県道のすぐ脇のテン場でパンツ1枚でお着替えだ。
暗くてよかった。

酒呑んでふて寝をしてもまだ10時。

翌朝、もうこれ以上寝られない、と思って起きたのが6時過ぎ。
雨は上がっているがまだ薄暗い。
テントのすぐ脇で見つけたのは

たぶんクワガタムシの雌。

さぁて、雨はあがったし、朝釣りと洒落込むか。
結果については多くを語るまい。


さて、事前に用意してあった菓子パンで朝飯をすませて、すこしはツーリングらしい真似をしてみようと、まずは阿多地集落へ。
有名な縁結びの木

根元の穴の部分を二人で通り抜けると結ばれる、というのと、子供が授かる、というのと、他にも諸説あるらしい。

さらに阿多地集落内を歩くと、小高い所に神社を発見。
細い細いけもの道みたいな参道を上がっていくと、

こんな由来が碑になっています。
花を活けるために用意されているのは、

30年くらい前のプラスチックボトル。

さて、あちこちうろついてテン場に戻ったら昼飯の支度。
フライパンがないので、昨日釣ったエラブチはホイル焼きに。

エラブチって魚じたいが決して旨い魚ではないから味はそれなり。
むしろ玉ねぎが美味くて、人参も入れればよかったと反省するなり。
食後はだらだらと過ごして、いささか釣りを楽しんで、買い物をして、ビールを呑んで。
夕方になって少し雨が降り出したところに勝郎兄が帰って来て、実久の盆踊りの話やら加計呂麻の小中学校の統廃合の話やら聞かせてもらう。
こういう時間がいちばんいい。

勝郎兄が帰って、炊いたご飯をちらしずしにして、おかずはなんだったっけ?
雨は降ったりやんだり。
twitterで「皆の衆は如何?」と見てみたら、奄美大島の北部は雷と雨でたいへんらしい。
mixiでも【帰宅難民】になったヤツらが呑んでるらしい。
NHKで落語の番組でも聞けたらいいな、と思って持ってきたラジオを取り出してスイッチを入れる。
加計呂麻でも77.7MHzで奄美FMが、雑音の間に聴けるのだ。

ところが奄美FMは、よほどオレと相性が悪いのか、ノー天気なじぇーぽっぷを流すばかり。
NHKに切り替えても、加計呂麻からでは沖縄局しか入らないから「星空がきれいです」とか言ってる。

ワインを呑み終え、焼酎に切り替える頃になってようやく奄美FMが「大雨に関する情報です」とはじめた。
うーん、やはり北大島の雨は、去年の10月の豪雨に匹敵するほどのものらしい。

傾けたり持ち上げたり、なんとか雑音の少ない所を探して奄美FMを聴き続けたが、ついにオレも悟った。
寝るべし。

テントに入ろうとすると、なんだか湿っている。
テントを雨から守るフライシートの設営がぞんざいだったから、わずかな隙間から雨水が浸入したらしい。
タオルで出来るだけ拭き取り、それでも湿っている箇所に濡れても平気な荷物を移して、なんとか体を伸ばせる隙間を確保して、次の瞬間には熟睡だ。








顔が冷たい。
ちがう、顔に冷たいモノが当たってる。
ちがう、顔に冷たい水が落ちてきている。
どこから? テントの天井から。
やれやれ、雨漏りでございますよ、このテント高かったのに。まぁ12年くらい使ったが。
強い雨がテントを叩いている。
時刻は午前4時。
テントの中は床上浸水状態だ。
水溜りの中で寝てたんか、オレ。
ともかくテントから抜け出なくては。
しかし、やみくもにテントを出て行くわけにはいかない。
昨日からの雨で持ってきた衣類は残り少ないし、寝る前の水漏れで湿っていないタオルはあと1枚だ。
あれこれ考えて、まだ濡れていないわずかな衣類を袋に詰め、まずそれを持ってテントから県道と生垣で隔てられたバス停に避難することにした。
テントの入り口を開けると、雨はすこし弱くなっている。
濡れた衣類をもう一度着るよりも、このまま移動してしまえ。


乾いた衣類を入れたビニール袋を右手に、懐中電灯を左手にパンツ1枚でテントを飛び出す。
八つ墓村みたいだ、と思ったとたんにはげしく後悔した。
寒い!
生垣を迂回して小高くなったバス停の屋根の下まで30m、よたよたと走る速度は時速10kmもないはずだけど、なにか得体の知れない寒さが体を包む。
バス停の屋根の下に入った時には、がちがちと歯を鳴らしながら震えていた。
あわててたった一枚残った虎の子のタオルで身体を拭く。
乾いた衣類に着替えるまでの時間が長く感じられたこと。

それから夜明けまで2時間、ただただ明るくなるのを待つ、この状態をなんと表現すればいいのか。
避難民。
きっと3月の津波に、それでも助かった人たちの感じた心細さは、こんなものではなかっただろうなぁ。
明るくなった後も雨の勢いは弱まらず、勝郎兄から
「午後から崖崩れ警報が出るみたいよ」と言われ、仕方なしに雨中の撤退作戦を敢行しました。
カッパを着込んであれこれするんで、9月の奄美ではありえないほど低い気温がむしろありがたかった。
帰り途は、心配したほどのこともなく、名瀬の自宅に着く頃には風向きが変わったのか暑いくらい。
オレは、ながい長い夢を見ていたのだろうか?

たいした経験ではない、と人は言うだろうが、オレにとってはある意味貴重なプチ避難民体験でありました。

11月2日に、またしても奄美大島を『観測史上X番目』の雨が見舞いました。
去年の10月とこの9月の雨が島の北部を重点的に濡らしたのに対して、11月の豪雨は南部の雨量がたいへんだったらしい。
加計呂麻では一時、県道が7箇所にわたって通行不能になっていたとか(11月5日の時点では大型車両規制)。
とりあえず明日は、瀬戸内町の社会福祉協議会が募集しているボランティア作業に参加してみようと思います。
起きれたら、だけど。
明後日はそうすると、筋肉痛か?
いやそれ以前に、オジサンは生き抜いていられるだろうかっちゅう心配 orz
あら、また雨だ。
古仁屋まで行き着けるのかが問題になりそう。
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