松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆福祉を産業に・問われる自治体産業政策

2023-07-12 | 支える人を支えるまち

 この問題は奥が深い。

1.自治体の産業政策・産業振興プランには、福祉はほとんど出て来ない。

 次の述べるように、福祉も産業分類の産業である。福祉に従事している人も多いので、産業振興プランでは、統計の部分で、サービス業のうち、福祉に従事する人の部分では福祉が登場する。

 しかし、基本施策、重点施策のように、自治体が取り組むべき施策の部分では、福祉は出て来ない。たくさん産業プランを見たが、これまで発見できない(もう一つ、勤労者福祉という切り口では出てくる。しかしこれは産業としての福祉へのアプローチではない。

2.産業の概念から

 日本標準産業分類(平成14年3月改定)一般原則というのがあり、その記述を見ると、第1項 産業の定義として次のように書かれている。

 この産業分類にいう産業とは、事業所において社会的な分業として行われる財貨及びサービスの生産又は提供に係るすべての経済活動をいう。これに は、営利的・非営利的活動を問わず、農業、建設業、製造業、卸売業、小売業、金融業、医療、福祉、教育、宗教、公務などが含まれる。
 なお、家庭内においてその構成員が家族を対象として行う生産・サービス活動は、ここでいう産業には含めない。

 福祉は明確に産業とされている。ちなみに公務も産業である(だから、産業的な取扱いが求められるのだろう)。

3.社会的分業として行われる

・社会的分業論といえば、デュルケームであるが、きちんと読んでいないので、遅まきながら、勉強を始めよう。

 社会的分業(the social division of labor)とは、社会的総労働が社会のさまざまな産業部門や種々の職業に区分され、細分化された個々の職業に個々人が専門的に従事することである。 社会的分業はすべての商品生産の一般的基礎をなし、人々の協働によって社会的生産の維持・発展が可能となる。

 つまり、社会が発展し、豊かになると、一人が全部を生産するということは不可能なので、さまざまな職業が生まれ、専門的の従事することで、在野サービスを提供する。この有機的な連携のなかで、私たちの暮らしは成り立っているということである。

・福祉サービスを行う福祉産業は、住民ニーズの増大、課題の高度化・複雑化ののなかで、高い専門性が求められるようになった。産業としての高度化が求められている。

4.福祉+産業論のミスマッチ感

 産業=ビジネス、つまり商売、もうけと考えるところから、このミスマッチ感が生まれてくる。しかし、定義にもあるように、営利・非営利を問わないという。つまり仕事によって利益を得なくても産業である。

 その背景にあるのは、福祉が家庭内扶助のくびきから脱することができず、福祉=契約の自裁でも、それを引きずっているという背景もあるのだろう。

5.財貨及びサービスの生産又は提供に係るすべての経済活動が有機的に連携し、社会を維持する
 このサービス提供が、安定的、継続性、ニーズに合致し、より高品質を目指すものでなければならない。それを後押しするのが、産業政策である。福祉も、同様で、このサービスが、継続するには、後押しの政策が必要である。

 むしろ、これまで家庭内扶助の延長で、ほとんど放置されていたことを考えると、その安定的な継続のためにも、福祉は産業政策の一面でとらえて、積極的に取り組みべきである。

6.福祉は儲けることではないという率直な感情に対しては

 この議論はNPOと同じである。NPOは非営利であるが、収益活動はできる。

 NPOは、その役割を全うするためには、担う職員がいる。事務所も、設備もいる。 「人、金、モノ、情報」 という、いわゆる経営資源が必要になる。そうなれば、当然ながら運営資金が必要で、人件費、家賃、光熱費、通信費、その他一般企業と同じように経費がかかる。これは福祉も同じである。

 社会も変化し、技術も進歩する。それに応じた技術の研鑽やサービス提供をしていかないと、市民ニーズに追いついていけず、とろ残されてしまう。人手不足な今まであるから、どんどんバージョンアップしていかないと、優秀な人材が入ってこないし、人材不足も解消されない。これは福祉では切実である。

 補助金や助成金に依存することなく、自主独立した経営基盤の構築が、今後持続し続ける福祉こそ必要である。

7.問われる自治体産業政策

(1)産業振興プラン・中小企業に載せる

・産業振興プランの作成は、広範囲にわたるため、関連課で構成される検討委員会が構成される、このメンバーに福祉部門も入る。 

・専門家等によって構成される委員会が摂津されるが、そこにも福祉の分野の人が入る。

(2)地域福祉計画に産業の視点で入れ込む

・地域福祉計画には、そもそも産業の視点がないので、心して入れ込む。

・福祉の企画担当の業務内容に、福祉の産業化も明示する。

(3)後押しとしてのAIの時代

 AIによって、これまでの仕事が駆逐されていく。とりわけ情報収集、分析、整理する調査。コンサルのような仕事は、激変するだろう。しかし、一人ひとりと相対する福祉の仕事は残っていく。新たな人員の受け入れ先として、福祉の近代化・現代化が必要になる。それを地域からリードするのが、自治体の役割である。

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