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「福祉を産業に」と書くと、福祉というものはそういうものではないという反論がすぐくるだろう。
しかし、「福祉従事者が安心して働くことができる職場環境を」「技術やノウハウを組織として共有し、質の高い福祉サービスを」と言えば、異論はないだろう。
ここでのポイントは、「そういうもの」と中身である。これを切り分け、整理すると、福祉を産業にという意味が見えてくる。
1.福祉産業政策
福祉は、産業として強くしていく政策(福祉産業政策)と福祉機能を発揮するための政策(福祉活動政策)に分類fできる。前者に注目に、成長産業化に向けた政策を推進していくのが福祉産業政策である。
2.福祉産業政策の特色
(1)地消地産性型産業
地産地消は、地域で生産したものを地域で消費してもらおうという立場である。地消地産は、その逆で、地域で消費されているもの、つまり地域のニーズから出発して、地域で生産するというものである。福祉産業は、地域の福祉ニーズをもとに、生産(ここでは福祉サービス)を育てていくというものになる。
・地域に新たな産業・雇用を生み出す可能性を秘めたビジネスチャンスということである。
・地消と地産をつなぐのが、福祉産業政策ということになる。
・地消は、明確でそれに対するニーズはたくさんある。産業として成り立つということである。
(2)近接型産業
・福祉は顔の見える関係。利用者・提供者近接型の産業である。
・すぐに寄り添えることが必要。おのずと職住近接型の産業になる。
(3)地域経済循環型産業
福祉産業は、地域経済循環になる。福祉産業の雇用者は事業所の近隣に住むことが求められる→雇用者の消費もまた地域内で行われる→福祉産業と取引がある関連産業や支援産業も、同一域内の企業が主力になる。域内の需要に域内で消費する。地域内でお金が回る。
(4)地方創生(地域雇用)型産業
・地方創生は、人口減少と高齢化が進み、地域経済が立ち行かない→そこをよりどころに暮らしていた労働人口が、働き口を目指して、経済が成り立っている地域へ出ていく。地方創生は、東京圏から地方への高齢者の移住が推奨。それによって生み出される医療・福祉などの雇用機会の増加が、若者など労働人口の流出を食い止める
・地域の雇用が確保できる。過疎化を抱える産業の尐ない地域にとって、 雇用の確保は最も重要な課題である。しかし、福祉はどのような地域でも必要であり需要 がある。地域内に雇用があれば、若者の都市部への流出も尐なくなる。
(5)地域安心型産業
経済的な価値にとどまらず、高齢化が進む日本社会 において地域に住む安心感を与えることができる。福祉産業は、量的拡大ではない質的な向上地域にもたらす産業である。
3.福祉産業政策の内容
(1)経営基盤の強化
・ 優れた取り組み等の情報発信、事業者間交流、市民への周知
・制度融資の拡充
・経営改善の支援
(2)雇用/就労の支援とワークライフバランスの推進
・女性、高齢者、障がい者、外国人等の活躍の推進
・人材マッチングの推進
・ワークライフバランスの推進
・労働環境の充実
(3) 職住近接の推進
・通勤時間が短縮できる、ワークライフバランスがとりやすい、事業所側にもメリットがある、生産性が上がる。より質の高い活動にエネルギーを注ぐことができる。
・シニア世代よりも若い世代のほうがより強く住職近接を希望している。職住近接による子育て、家庭の団欒などの時間的なゆとりや文化、ショッピング等を重視した生活を求める。
(4)挑戦の推進
・起業・創業を推進する環境の整備
・女性、高齢者、障がい者、外国人など多様な人材の挑戦
・事業者連携による挑戦