”今朝、看護師がベッドを少し起こしたら、本人が苦痛を訴えるので、検査をしましたら肺の周りに血液が漏れていることと、血圧もどんどん下がるので、開胸して血を拭き取り、血液の漏れている場所を探している”とのこと。私の親愛なる全盲のバイオリニストの穴澤雄介さんは、前日、心臓の動脈弁を人口弁にする手術のため、神奈川県大和市にある病院で手術をした。その翌日の出来事の医師の説明に、彼と結婚し2歳半になる男の子のいるきよみさんはへなへなと座り込んでしまった。私は、ぐずり始めた子供の”想くん”を連れて、病院の前のある林に行き、病院に向かって手を合わせた。想くんもまねをした。3時間くらいが過ぎて執刀医の南渕先生が、手術着のまますぐに病室に来て説明をしてくれた。”もう大丈夫です。”とは言ってくれても、不安なままその日は過ぎた。穴澤さんが選んだこの病院、執刀医の南渕明宏先生は、年間200例の心臓バイパス手術のパイオニアだ。”ブラックジャックはどこにいる”の本は、嘘が無くおもしろく医療に希望のもてる一冊だ。病院の玄関に”生命不二、命は光、光はいのち”と書かれた絵画が飾られている、穴澤雄介という光がまた輝く。
坂口せつ子
2004年平成16年7月1日木曜日
高崎市民新聞連載より転載
坂口せつ子
2004年平成16年7月1日木曜日
高崎市民新聞連載より転載
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます