めざめていても夢はみる

ぼくはいつまでもさまよいつづける、
夜が明けても醒めない夢のなかを…

連載『夢からさめる』第2話

2014-11-28 20:32:26 | 連載駄文


そう…
あのころのぼくは、〝失うこと〟を異常に怖がっていた。
なにかを失うことなんて、たいしたことじゃないと云うのに。だって、人は生まれてくるとき、なにも持っていやしなかったのだから。

失うんじゃない、元に戻るだけなんだ。

それに、そのときぼくがいちばん大切にしていたものは、ぼくが勝手に存在すると思い込んでいただけの、たんなる幻だった。
元からなにも持ってなんかいやしなかったんだ。

なんにもわかっていなかった。



それなのに、あのころのぼくは決心してしまう。

「一切合切のケリをつける!」


ある夜、ある雑居ビルの、どこにでもあるようなつまらない事務所で、男が倒れているのが発見される。


つづく




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