めざめていても夢はみる

ぼくはいつまでもさまよいつづける、
夜が明けても醒めない夢のなかを…

連載『夢からさめる』第7話

2014-12-27 19:23:10 | 連載駄文



翌朝。

フィッシュ・アンド・チップスへの思いは一夜明けても消えることはなく、しかし、この日本の田舎町でそれを手に入れるのは容易なことではない。
コンビニのフィッシュバーガーとフライドポテトを食べてみるが、やはり、フィッシュ・アンド・チップスとは別物、気持ちは満たされない。しかし、いまは我慢するしかないのだ。


変死体に会う方法は未だ思いつかず、とりあえず、それが発見された現場に行ってみればなにか手がかりが見つかるかもしれないと、ルイーヌは考える。

住宅街の真ん中の、あのどこにでもあるようなつまらない公園に、彼はやって来た。
しかし、運の悪いことに、そこでは、32年に一度の〔すずめ祭〕の真っ最中で、公園内はすずめに扮した住人でごった返していた。



この祭は愛らしい鳥としてばかり見られるすずめのなかに潜む、普段は抑えつけられた狂気や凶暴さが暴発しないよう鎮めるために催されると云う。

これでは変死体に関する手がかりを見つけることなどできない。
ルイーヌはさっさとその場を去り、県境の事務所へと向かった。

その後、
祭が終盤に差しかかったころ、テンションが上がり過ぎた一部の若者が暴徒と化し、機動隊と衝突。
やがて彼らは、町内会長の家に逃げ込み、そのまま立てこもってしまう。そして、ピザや高級寿司なんかの出前を町内会長のつけでとり、朝まで宴会に興じる。
しかし、町内会長一家は、町内会費から横領した金で、スリランカへ旅行中だったので、無事だった。


県境のどこにでもあるようなつまらない事務所に、ルイーヌはやって来た。
代表が変死体になんかになってしまったため、事務所は潰れてしまったという。
そこにはいつの間にか野生のメガマウスが棲み着き、近隣住民の不安の種となっていた。
事務所のあった雑居ビルのなかは、すっかりメガマウス好みの古民家風に改装され、ここも手がかりを見つけるのは無理らしい。
ルイーヌはその場を後にする。

その後、
雑居ビルの玄関をぶち破り、メガマウスが外へ飛び出す。



あたりは地元警察により非常警戒網が敷かれ、住民たちは隣町へと避難する。
メガマウスは機動隊と衝突。
多勢に無勢、追い詰められたメガマウスは、樹齢1020年の神社のご神木の上へと逃げる。
木の下を警察が取り囲む。
やがて、木の上のメガマウスは静かに歌い出す。
『帰り来ぬ青春』を。
聞き入る警察官たちのなかから、いつしかすすり泣きが聞こえはじめ、地元警察署長も涙がこぼれる。
「きっと彼はいままでつらい思いをしてきたのだろう……。彼だって、なにも好きこのんで、メガマウスなんかに生まれたわけじゃないんだ……」


つづく






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