ジャンプについて語るとなると、勢い長くなりそうなので3部構成にして語ろうと思います。
まだまだ勉強不足のことなどあるかと思いますが、明らかに誤りがありましたらマイルドにご指摘いただけると幸いです。
さて、トゥ系ジャンプと呼ばれるものは3つ、ルッツ・フリップ・トゥループになりますね。
トゥループは中堅選手でもみんな飛べるジャンプですし、格別難易度としても語るべき大きなポイントが見当たらないのでここでは割愛します。
問題はルッツとフリップについてです。
フィギュアファンの皆様ならご存知の通り、フリップとルッツについては現状、厳格なエッジエラーの取り締まりがなされています。
一時期軽微なエラーについては「!(アテンション)」でGOE加点の対象になっていたこともありますが、現在は特にルッツで減点される選手が非常に多いです。
反対にフリップでエラーを取られる選手もいないではないですが、ルッツエラー持ちに比べると圧倒的に少ないですね。
つまり現状のルール下においてはルッツが得意な選手が有利であると言えます。(とはいえ、フィギュアスケートはジャンプの良しあしだけで採点が決まるわけではないのでルッツエラー持ちの選手が勝つこともたびたびですが)
そして基礎点においても3Lzが6.0点、3Fが5.3点とルッツの方が高い点数となっています。これはルッツの方が軌道やエッジの倒し方(アウトサイドに倒す)が難しいと認識された上での評価なのだと思いますが、この点差ゆえなのか、ルッツエラー持ち(以下フルッツと呼称)の選手でもほとんどの選手がルッツを入れてきます。エラー修正に取り組んでいる選手、そのままの選手も含め、ルッツとフリップを飛び分けできる選手は特に女子だとかなり少ない現状であるにも関わらずです。
フィギュアスケートにおいて、ジャンプだけが要素ではないとはいえ、男子で8回、女子で7回(FSの例)飛ぶ機会が与えられるジャンプは大きな得点源です。その中でも、アクセルを除けば三回転ジャンプで一番得点が高い3Lzをみんな飛ぼうとするのは当然なのでしょう。
しかし問題はそのエッジエラーについての判定です。フルッツの選手が全体の過半数を超えるといってもいい現状において、ジャッジ(この場合は技術審判ですが)はどの程度、またどの位の制度の映像を見てエラー確認をしているのか、残念ながらはなはだ疑問なことが多いです。
同じエラーマークがついても、A選手はしっかり減点されているのにB選手はほとんど減点なし、場合によってはTVのリプレイによっては同じ程度のエラーに見えるC選手はエラーが見逃されるということがよくあるのです。これは見ている者にとって非常に不可解かつ釈然としないものです。
回転不足については「選手によって」(これもまた問題なのですが……見るなら全選手を見るべきです)リプレイで回転が足りていたかチェックすることがありますが、特にフルッツのエッジについてはその場で見るだけでなく、技術審判の先入観も加味されているのではないかと疑問に思います。
他の競技ではあまり例を見ないことですが、フィギュアスケートにおいては公式練習を技術審判がチェックすることになっています。その際の心象もかなり採点に影響すると審判資格を持つスケート連盟の役員が言っていましたが、これは「スポーツ」としては本来おかしなことではないかと考えます。
例えばルッツ(フルッツ)について考えてみましょう。練習でA選手はややエラー気味だったとします。一方のB選手はややアウト気味もしくはフラットだったとします。すると技術審判の心象には(Aはフルッツ、Bはエラーなし)というように残ります。
そして本番の滑走になります。練習ではアウトで飛べても、試合ではインになる選手は珍しくありません。逆は珍しいかもしれませんが、無いとは言えないでしょう。そこでA選手がアウトエッジでルッツを飛び、B選手がインエッジ(ロングエッジ)で飛んだとします。離氷の瞬間はほんの一瞬です。果たして技術審判が、事前の印象を振り払っても正確にエッジ判定ができるでしょうか?
私はなまじ事前の予備調査(刷り込み)があればあるほど判断に先入観が入るのではないかと思います。
何らかの理由があってこそ、公式練習の視察などという手間までかけるのだろうとは推察できますが、厳格にエッジエラーを取るのであれば、フリップもルッツもきちんと全選手のエッジをその都度確認して、必要であれば選手サイドだけにでも画像資料で指摘してあげてほしいものだと思います。
ジャンプの飛び分け、エッジの踏切にそれだけ厳格さを持ち込み、点数をかなり左右するのであればそれなりの納得がいく根拠を示してほしいというのが一個人としての願いです。そのような明確さを導入してこそ、公正で公平なジャッジと言えるのではないでしょうか?
……まあ、まず無理なお願いだろうとは思いますが……。