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When I Dream

~気侭な戯言日記~

Dream

2007-12-02 23:50:30 | ボクシリーズ(物語風/エッセイ風)
“う~ん・・・”友人はテーブルに両肘を突き、両手の平に顎を乗せ、一点を凝視したまま黙りこんだ。ついさっきまでボクが見ていた明るい笑顔は陰り、時折眉間にしわを寄せ、自問自答するように小首をかしげている。予想もしていなかった久々の友人の反応に、ボクはただ息を潜めてじっと待つしかなかった。こんな反応を見るのは何年振りだろう。
数分の沈黙が流れた後・・・友人は、ボクの様子を伺うようにチラッと目線を上げ、右手でアイス珈琲のグラスを自分に引き寄せた。ストローを登っていく冷たい珈琲で喉を少し潤すと、友人は再びテーブルの中央に目を向けた。そこには、ボクが鉛筆で文字を書いた無地の紙があって、ボクの対面に座っている友人は、ボクが文字を書きはじめた瞬間から、やや眉間にしわを寄せながら、逆さまに書かれつつある文字をじっと眺めていたのだった。

“どう?”・・・いつもなら、友人の第一声をじっとを待っているボクだったが、なぜだか、いつもよりも長い沈黙で、うつむいて考え込んでいる友人の表情が気になって、痺れを切らして言葉を発してしまったのだった。 その時、友人のグラスの中の氷が音を立てて崩れた。
友人はテーブルに肘を突いたまま文字を見つめ・・・“そうねぇ~”と、言葉を必至に探しているような表情をみせると・・・“選択肢がまた多くなってて、一つに絞り込めないような感じなのよねぇ”・・・っと言い、文字とボクを交互に見ながらこう続けた・・・“でもね、昔みたいに霧がかかって未来が見えにくいんじゃなくて、色々な側面の輪郭が、よりはっきりとは形になってきてるんだけど、なぜだか私には今一つピンと来ない未来の断片なの”・・・“この数年は・・・10年前と比べるとはるかに明瞭で解りやすくなってるんだけどねぇ”・・・

“もしかして・・・何かが変わっちゃったかなぁ”
“そんな事はないよ~印象とかイメージは変わってないし・・・けど・・・”

友人がボクの未来を垣間見ようとする時は・・・かつては靄が広がっていて物凄く見えにくかったと言う事は聞いていた。その靄がだんだんと晴れて、鮮明なイメージになってきていていた事も聞いていたし、その内容に、誰よりも理解を示してくれていたのが友人だった。
その友人は・・・なぜか少し不満そうにして、グラスの氷をクルクルと回し続けていた。

“前に仏像って書いてもらったのを覚えてる?”
“あぁ~、もうあまり思い出したしたくないけど・・・”
ボクはその先の言葉を飲み込んで口ををつぐんだ。とは言え、ある意味では色々と経験させてもらって、一応は感謝している事も事実ではあったが・・・。
“そうそう、で、紫の光・・・なのよねぇ・・・そう、それも変わってはいない・・・”

飽きっぽくて一貫性が無いのがいけないのだろうか・・・多分それもあるだろう。
“前にも言ったけど・・・”そう言って、友人は残りのアイス珈琲を飲み込み・・・
“次の選択次第で、この先の全てが決まるんだと思う”と言ったのだった。
友人がイメージしたモノを、友人の言葉と感覚で、ピンポイントで教えてもらって、ボクは戸惑いを隠せなかった。気掛かりになっている事もある、不安も多少は感じている、確かに複数の選択肢がある・・・どれを選択したとしても悔やむ事になるのではないだろうか・・・
ボクはそう思っていた。それが現れてしまったのだろうか?

ボクは微笑む友人を席に残して立ち上がり、立ったままゆっくりと空に浮かんでいった。
1M程の高さから友人を見下ろしながら、友人が空にかき消えていくのを見た。喫茶店の風景も、ユラユラと揺れて魔法のように色を変え、辺り一面が水色と白い色に変わっていった。ボクはなぜだか空の上にいた。足下の雲の隙間からはるか下には・・・立体地図を見ているかのような景色が広がっていた。上を見上げると、水色はより青く、青は紺から黒へ、吸い込まれていくような不思議な世界が見えた。実に荘厳だった。
ボクの身体は・・・空に抱かれて、陽の光に包み込まれたような心地よさで満たされて、そして、昼寝でもするように、空の上で横になって、そのまま漂い続けた。

きっとこれは夢だ・・・そう思いながら・・・

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